キングオブコントの感想書きます。

今年は「わかりやすさ」ブームに観点を起きながら見ていきます。
昨年のコロチキ、トレエン、R-1のザコシショウと様々な面での「わかりやすさ」がブームになっています。
元凶は昨年のキングオブコントなわけですが、そこが今年はどうブラッシュアップされているか。

まず1組目から。
〇しずる
犯人どころか誰もいないビルに乗り込み、するべきことをして達成感に溢れるコント。
ラストも含め、ものすごい良いコントなんだけど、もう一つボケの展開があったらなあ。そういう構成なんだけどさ。
でも、良いコントってだけで高得点をつけてもいいネタ。

だから松本人志の「トップバッターだから基準点を作る」で85点ってのはちょっと違うな~と思う。それはさ、事前に個々で基準点を作ってから臨めばいいものでは?

〇ラブレターズ
ラブレターズってちょっと捻った設定というか人物をやるイメージだけど
これはどストレートだな。
「とにかく楽しんでみてください!」と言っていたように、去年からの「わかりやすさ」対策をしてきた結果だろう。
歌唱力が物凄いし、ネタ自体も楽しい。
が、「スリーバント失敗」などのボケが突き抜けない。ストーリーだけが残って、そこに笑いが追いつかない。
以前、コントとは「笑い」と「劇」の狭間との問題で
「笑い」はアルコール、「劇」は原液。
このネタは甘味炭酸飲料といったところで、すっきりはするが...。

〇かもめんたる
それっぽさはあるものの、もっと狂気性のあるワードが欲しかった。
動きやツッコミでの笑いはあるが、やはり以前出場したときの満ち溢れた狂気と比べると、本ネタは少し弱かったように思える。

〇かまいたち
後で言及するけど、本当「同じことをやる」ってネタの組が多い。
このネタの大事なところはやっぱりツッコミワードじゃないですかね。
こればっかりは関西出で良かったのかもしれない。特に突き抜けたネタではないが、やっとコントっぽいというか笑えるネタが来たという安心感はあったかもしれない。

〇ななまがり
「ナス持ち上げる時だけ左利きダヨー」
僕はこのワード、ハマったので良かったのだけどハマらないとキツイ。
導入はどちらか板付きで「あー疲れたなー」みたいな言葉があっても良かったかも。
あと、上手をチョロチョロ見るのがすごい気になるなー。いや、気になってるという話なんだけど、演技ではないように思える。

〇ジャングルポケット
あー、これいいネタだなぁ。
東京03っぽいけど、3人がちゃんと繋がった会話になっているから
ネタに深みが出るし、洗練もされている。
ウォッシュレットのところで、今大会ようやく声をだして笑えた。
ただ、トイレに入った時のおたけの顔が余計な情報で気にはなったけど。

〇だーりんず
バイきんぐを尊敬してるだけあって
演技の仕方がそっくりだ。
演技論的には褒められたものではないんだけど。
演技中に客席の方を見るのは、舞台上が孤立した空間にならないし
文節を変に間を空けてこねくり回すのは
演技が下手な人が「これ演技うまくみえるかも?」という苦心の結果なのだが
実はこれが悪手で逆に悪い演技になる。
バイきんぐはこれらのマイナスを圧倒的な声量とコントの設定で覆したのだけれど、だーりんずにはそこまでの勢いはなかった。
それと「童貞」という言葉は人によってはあんまりワードとして弱く、それを推していくにしては少し脆いワード。
ただ「探すよ、あの頃夜な夜な探してくれたようにね」のようなパワーワードがあったのも事実。なんだか、もっと迫力があったら違う展開だったのではと思ってしまう。

〇タイムマシーン3号
有吉の壁でやっていたネタ。
ビジュアル的にも面白いし、そもそも舞台が汚れていくシチュエーションが好きなのでかなり面白かった。
タイムマシーン3号の漫才のような、相手をスカすような下りもあったし
有吉の壁でやったものより、かなり長尺用に考えられてるものだとわかる。
ただ、最後の古代通貨は袖から出てきた時点で暗転の方が良かったのでは。

〇ジグザグジギー
今回、かなり「同じことを何回もやる」というネタが多いけれども
ジグザグジギーに関してはこれが一つの持ち味で、寄せたというか今テーマだから上がれたという感じ。
ジグザグジギーの弱さとして、ツッコミがハイテンションではなく区切るような喋り方なので爆発しにくいというのがある。
また、会話が少ないのも特徴で
目の前で起こってること以上の情報が得られないという弱さもあり
ジグザグジギー、好きなんだけど
とても脆い芸人スタイルなのが。
今回も、そこそこウケていたけど
そのへんだったのでは。

〇ライス
手芸部のブス。
「〇〇してくれぇーい」という繰り返しではあるが、かなりコントとしてはベーシックな作劇。
なので正直、例年なら中位クラスのウケ度だと思うが、そこは今大会が低調なところで確かに面白いけど...といった感じ。
ただ、コント内の押し引きがあったのはライス含め上位組と、毛色が違ったラブレターズぐらいで
「肩揉んでくれぇーい」が評価されてたところを見ると、やっぱり最低限のところは見られてるんだなと思う。
個人的には、本当に撃っちゃうところと
ときどき心配しちゃう優しさが出てるところが、なんだか両立してなくて面白かったですね。

ファイナル
〇かもめんたる
あー、これこれ。かもめんたるに求めてるのはこれ。
笑えるとか、ボケの量とかではない
狂気性という個性。今年のキングオブコントで足りないな、と思うのは個性。
そこはやはり、チャンピオンで最後に見せてきた。

〇タイムマシーン3号
漫才のネタのよう。
この、漫才のネタのようなのを「コントに引き延ばしたように見える」ってのは
かなりマイナス点かも。
お金のネタは独創性があったけども、このネタは割と使い古された設定なのがなんとも。

〇かまいたち
かまいたちの有名ネタ。
動きやビジュアルや「給食費が落ちちゃう」っていう小ネタもあるし、評価されるべき点はたくさんある。
ただ「このお菓子、昔からあるけどやっぱり美味いね」っていう感じになって
安定感はあるけども、存在感が出せていたか...というところはある。

〇ライス
「お水かけられたと思ったらおしっこ漏らしただけ」という裏切りから始まるコント。これも極めてベーシック。
1本目もそうだけど、関町の演技力を軸に進めており、この力がベーシックなだけのネタをさらに昇華させている感はある。
また、動きに対立関係が見えるのもベーシックだがベターな動き。
僕が演劇部に入って1年ぐらいのときに言われたのが「役者同士との間には綱があって、綱引きをするように押し引きをするのが演技」だと。そこから改良して僕は
「矢印の向く方意識」としたんだけど
つまり、○→〇左の人が右の人に向かった場合
○→〇→と右の人は体を引くのが普通で
そこで対立関係を表すことが出来る。
ここまでわかりやすく、基礎をネタの中で出したコンビはライスぐらいかもしれない。
ベーシック、ベーシック
決して貶しているわけではない。
ただ...続きは最後に。

〇ジャングルポケット
「あと残り時間3分です」で、メタネタだなあと思ってしまった。
つまり「4分のネタをかかないといけない」→「時間が決められてるネタを書こう」
邪推かもしれないけど、「あと〇分で何が出来るか」「30秒意外と長い!」というのもそう思うところ。点数の低かった設楽ももしかしたら、こんなところを感じ取っていたのでは?
あと、1本目で良かった3人の絡みが2本目では皆無で、斎藤と太田のみの絡み。ここが読めないのはどうかな。
昨年のキングオブコント以前では、前の年のハネたところを対策として取り入れるんだけど、ドンずべりするし
昨年の新生キングオブコントでやっと決勝にあがってこれたわけだけど、いまのままだとただのバラエティ向けの賞レースを作るためのお人形になってしまう。
対策だけでなく「予測」までしないと、優勝はできない。


というわけで、優勝はライス。

正直言って、今年はかなりレベルが低かったです。あっけにとられた。
これは出ていた芸人が、というわけではないんです。
準決勝の審査員はかなり悩んだと思います。
例年なら、昨年の対策してきたところはほとんど落として「新しいコント」「洗練されたコント」など様々。賞レースとは「新たなブーム」を生み出すツールで、審査員ももちろんそこをわかった上で、決勝に送り出す。
しかし、昨年の準決勝で一、二のウケを争ったコンビが決勝ではあの5人にハマらず。
「今年、新たなブームを作ろうと送り出したところであの5人にハマらなければどうしよう。準決勝の審査員の信用度問題になる」となってしまう。
だから本来なら有り得ない、昨年のブームを傾向と対策で研究してきたコンビを多数決勝にあげた。「あの審査員なら、こういうのが好きなはず...番組が成り立つはず...」
はっきり言えば、これはもう賞レースではなくネタ番組だ。
たけしの演芸館で「殿、如何でしたか?」「あんちゃんたち、面白いね」
年始の東西ドリームマッチで志村けんが「いや、面白いね」って評価するのとわけが違う。
今年の何がレベルが低かったか。
番組サイドも含めて「審査員のみなさん、好きそうなネタ作ってきました。見てください!」という右倣え。
これはもう「よいしょ」ではなく「老人介護」だ。
それでも審査員はあーだこーだ言う。
なんとなく、賞レースっぽく見える。
違う。違くないですか?
キングオブコントってもっと違くないですか?
もっと、「僕達こんなに表わしたいことがあるんです!」という熱量があるもんじなないんですか?
今回それがあったのは、しずる・ななまがりぐらい。もちろん、下位。

ただ、今回決勝にあがってきた人たち
準決勝はほとんどウケてあがってきたんですよねー。
これが昨年からのテーマ「わかりやすさ」サブテーマ「天丼と呼ばれる、繰り返しの美学」の厄介な所で
これらのテーマ、昔からある極めてベーシックな手法で、トップどころに来られる人たちは簡単に扱える食材なわけ。
見る側も、簡単に扱える食材のものを
受け付けないということはなく
大ウケもする。

僕は今大会を見終わった後「10年前か15年ぐらい前のお笑い番組を見ているようだ」と思った。
それもそう、審査員(多角的・本質的にネタを見てくれている設楽は除く)のお笑い論がそこで止まっているのだから。
その審査員におべっかを使ったネタ番組だから、昔のような感覚になるのは当然だ。
経歴は素晴らしい審査員なのに...。

なんだか、最新ヒットチャートが入ったカラオケ機種と謳っているのに2000年代までしか入ってないみたいな感じのキングオブコントでした。

どうにかなりませんかね。