M-1復活ですね。準々決勝から準決勝にあがる際、「ええ!?THE MANZAIでは決勝にいたのに準々決勝で落ちちゃうのー?」というのが稀ではなかったというのが
M-1の異質さを改めて感じることが出来ました。
しかし、それぐらいレベルが高かったとも言える。そんな大会でした。
それでは感想を言っていきます。

まず、煽りVの手の込みよう。
かっこよかった。

1メイプル超合金
予選からジワジワと認知され、準決勝ではもう人気者に。
GyaO配信があって1番得したコンビなのでは?
ネタは犬を飼いたい。3回戦のネタだが、さらにしっかりとしたネタになっていた。特にストーリー性や構成というところが評価されるコンビではないが、1発1発のボケが有効打で、打率も高い。
最後。ブパパ~で「賛否両論だと思いますけど~」で一応、綺麗にしまるので噛んでしまったのは惜しいけど、これを知っているのは前情報を得ている側だけなので、審査員の点数が極端にあがるってことはないでしょう。

2馬鹿よ貴方は
昨年のTHE MANZAIでわざと強豪ブロックに行ったり、今回のおにぎり屋のネタがテレビで既出であるし前がメイプル超合金であるから、より目立とうと導入を変えてみたり
馬鹿よ貴方は、はギャンブラーですね。
馬鹿よ貴方は、は設定自体は普通のコント漫才なんだけど、ワードセンスで押し切るような作りをしていて、それがあの導入でカットした部分もあって少し惜しいと思いました。あと、オチも「大丈夫か?」連発から「みんなもっと笑おう」版のほうが好きかな。こんだけ言ってて準決勝から改変してなかったらごめんなさい。
「メイプル超合金と一緒にM-1をぶち壊そうかと思って」いやー、ほんとにぶち壊せたと思うよ。今までのM-1のイメージが晴れていったし、審査員にもアピール出来たと思う。東京のインディーライブシーンの2組並んでM-1のお高く止まってるようなところをぶち壊すなんて激熱やね。(金属バットから引用)

3スーパーマラドーナ
そんな更地になったところに正統派やったらそりゃ評価されるわなぁ。「よく建物建てた!」ってなるもん。建てたこと自体が褒められる。
スーパーマラドーナって武智の怖さが際立ちすぎてハラハラする印象だったんだけど、今回のネタはそれを抑えていてすごく良かったと思います。準々決勝もこのネタだったのだけど、落ち武者の出どころや途中のパンツ被ってるくだりプラスとかこっちの方がはるかに改良されていて面白い。
伏線の回収だとか、今回の審査員で言うとパンブー哲夫、ノンスタ石田らへんは大好きな点だと思うし、前半で大盛り上がりを作れなかったとしても良ネタでした。
前半部分とオチ部分で盛り上げられたら、もっと上だったかも。

4和牛
相変わらずツッコミの演技臭さが気になる。
昨年のTHE MANZAIも理屈漫才だったし、これでスタイル確立したのね。
淡々と述べていくので、セリフのあとに「否定」してもブツ切り感が生まれず嫌な気分にならない。むしろ冷静に論破していってるのが痛快ですらある。
しかし、淡々と述べているのが爆発力を生みにくいというデメリットも併せ持っていたりする。終盤で屁理屈ばっかな発言は一途な思い故だった、というのは普通に良い展開だったと思います。

審査員の「2本目が見たい」って最大限の賞辞なはずなんだけど、いまいち点数は伸びなかったですね。

ファラオ「ようやくM-1らしくなってきましたね」そうだな・・・破壊しきれなかったな

5ジャルジャル
準々決勝をザッピングして声を出して笑った決勝進出者がジャルジャルとメイプル超合金、そして馬鹿よ貴方は。
実は、私ジャルジャルが好きではありません。苦手な分類。
「発想は面白いのに、その方向が好きな方じゃない方に行ってしまう」というところが苦手な理由でした。
しかし、このネタに関してはその方向が合致したのかとてもノンストレスで見れるのです。
お互いの言葉の間違いに対して、瞬時に対応するのではなく、一旦受け入れようとするあるいはスルーするものの、やっぱり突っ込むそのタイミングの絶妙たるや。
「そろそろしつこいな」ってところで突っ込むので心地いい。
事前予想ではジャルジャル優勝予想でした。1本目で準決勝でやったフォーマットの方をやって2本目は準々決勝でやった少し入り組んだネタをやれば行けるんじゃないかと。そう思っていたら1本目は1位。
予想したのは審査員が出る前で、いつものメンツならジャルジャルのこのスタイルを評価するだろうなと思ってのことだったのですが
審査員が歴代王者と聞いて、現代の漫才に触れている現役が果たして評価するのだろうかと思ったのだけれど杞憂でした。
このネタで「今までジャルジャル嫌いだったけど、今回は笑えた」という人も少なくないのでは?

6銀シャリ
ツッコミワードは面白いのにボケがそれに追いついてない、というイメージを抱いていたんですが
少し、その傾向がなくなりつつあったなあというのが感想です。
それと、パンブー哲夫も少し言っていたけどネタのチョイスが若手芸人が使いに使いまくった設定をやろうとしたり、歌ネタをやったり、擬音ネタをやったり
THE MANZAIの感想でも言ったんですけど
「正統派漫才師と呼びたいのに、立てかけようとしてる梯子をそのネタで蹴飛ばされてる感覚がする」と。
というのが銀シャリの印象だったんですけど、ボケに多少の強引さはあるものの
ようやく「見せかけの正統派」から「正統派になろうとしてます」ぐらいの進化が見れたネタだったかなと思います。
「ベルリンの!?」がキラーワードでそこからテンポやすべて諸々掴んだ気がする。


7ハライチ
準々決勝のネタかな?決勝進出者で準決勝からネタを変えたのってハライチだけかも。
中盤のサイコ野郎のターンのところがものすごいグダグダしてしまって、今までの1~6番までが築いてきた緊張と笑いの協和がここで切れてしまった感。
準々決勝かなんかで突っ込んでたけど、これってSAWのパロディなんだよね?
でも誰ひとりとして気づいてないから結局「ん?ん?何の下り?」ってなっちゃう。
お互いにえらい緊張していて、本調子じゃなかったなって感じ。
すごいスベったってわけじゃなく、点数が圧倒的に低かったわけでもなくドベなのは扱いが難しそうだなー。

8タイムマシーン3号
頑張れ半袖!負けるな短パン!
本人が言わないので言っておきます。
結局オンバト見てた層がタイマに求めてたのって「おふざけと下らなさ」「それでいて、おーっと思わせる展開」だったわけで
今回のネタで言えば、それが全てマッチしていてタイムマシーン3号の最大限のネタなんだろうというのがわかる。
ネタの内容度的に言えば大喜利漫才で、本人らが言っていたようにジョイマンとやってることは変わらないわけだけど
今回のM-1が異様な熱気と笑い上戸が集まったのと、1、2組のチームインディーが緊張感をぶち壊したことによって
最後のタイムマシーン3号までそれの恩恵を受け、異様にウケていた印象。
途中からガリのパターンに入るというのも良かったと思うけど、大喜利に入って3回目のフリでもう答えから言ってお題を言わせるという設定破壊をしたのが、このネタがダレなかった点だったのではと思います。

トークがうまくなりたいっ!

9トレンディエンジェル
そもそも、準決勝で1番受けてたと言われていたのはトレンディエンジェルだったわけで、それが落とされたってことは
敗者復活枠なのかなって思っちゃいますよね。ネタの題材は準決勝とほぼ同じ。
導入がハロウィンなのかクリスマスなのかゴチャゴチャっとしてたけど。
今回はかなりパワープレイが目立ちました。しかし、やはりと思うところは
特に「M-1が復活したから賞レース見直してみよう」という層だとは思うが
THE MANZAIの感想でも言ったのだけど
漫才というのは話し手のキャラクターが浮かび上がっているのが漫才であって
後付けのキャラクターでなく「斉藤さん=ハゲ」というのを押すのはキャラ漫才ではなく、正当な漫才としての持つべき部分だと思うんですよ。芸人としての、漫才師としての、カラーを見せるってのが今ある漫才の原点であると。トレンディエンジェルはそれが出来ている。
だから「ただのハゲネタじゃん」と安易に非難するのは早計。トレンディエンジェルは安易に「ハゲネタ」を使っているようなレベルの芸人ではない。
ネタの感想としては、パワープレイにかこつけて粗いところが多いなって思いました。

ジャルジャルにつけて2位!歴代王者でも勢いで判断するんだね。


ファイナル
1銀シャリ
引越し?のネタの改良版?
多少、改善はあったけども
少し前の銀シャリに戻ったようで、一本目ほどの勢いが無かったかなと思いました。
「ベルリンの!?」で行くか、とふと思ったけども。

2トレンディエンジェル
1本目のネタは意外と手数ネタというかスピード漫才的なところがあったんだけど
2本目は途中まで“台形の面積”で遊んでみたり、緩やかな立ち上がりだったような。
それでも後半にかけてはスパートをかけ
畳み掛ける。割と正調なトレンディエンジェル。ただ、1本目の勢いそのまま行って爆笑を掴んだ感はある。

3ジャルジャル
そう、準々決勝のこのネタでいけると思った。しかし、前が前でかなり食われていた。言っておきたいのが、同じ設定・ネタを2本用意することは全く間違っていない。過去の歴代王者だって、全く違うタイプのネタをやったコンビはほぼいない。
だからこのネタで良かったのだけれど
このネタの弱点が「イライライラ」や「コソコソコソ」の下りが長めに取ってあることで、トレンディエンジェルに勢いを奪われたこと、お客さんの中にも「え?また、イントネーションのネタやるの?」と思った人もいるだろうということ、あとは見ていて準々決勝よりもテンポが悪いというか急ぎすぎてる感もあって
爆発とはいかなかった。


優勝はトレンディエンジェル。
敗者復活からの優勝。



復活したM-1の優勝者がそのパターンでいいの?
単純な疑問。

あと、そうですね。
トレンディエンジェルが優勝したことによって、M-1にも「楽しい漫才」という概念が生まれたのが面白いですね。生まれたというか戻ってきた。
これは確実にTHE MANZAIの影響で、M-1後期の「面白いよりも上手い漫才」をフィーチャーするような時代には出てこれなかった芸人を拾っていったTHE MANZAIのおかげで芸人たちが自由になったというか、呪縛から解き放たれたというか。ま、最初のチームインディー以外はまだコンテスト漫才寄りに仕上げてきている感はあったけども。
THE MANZAIはコンテスト漫才の破壊
と感想で書いたことがあるけど、今回の結果はそれを遂行できたってことなんではないでしょうか。
あるいは審査員の歴代王者らもM-1が行き詰まるところまで行ってしまったから休止したのを判断し、原点回帰でトレンディエンジェルを選んだとも考える。

何にせよ久しぶりのM-1はかなりレベルが高かったし面白かった。
現場からは以上でーす。