オープニングがとても長かったため、「M―1」よりかはリラックスして見れた。
感想の前に、何点か思ったことを。
【審査員】
初めて見たとき「なんじゃこりゃ!?」と思った。とても漫才を評価するようなメンツではない。
しかし、そこが「M―1」と違うところで「M―1」は漫才で賞金が貰えるコンテンツだった。コンテンツ自体だった。だから、審査員も漫才畑や現役芸人に合わしたコント畑の人らを集めた。だが今回の「the manzai」はそもそも趣旨が違う。
漫才を通して、番組で使えそうな“商品”を探そう
だと、僕は理解した。どちらかというと「スター☆誕生」的な感じなのだと。コンテンツを生みだすことが目的なので、あのような審査員のメンツになったのだと思った。
【国民ワラテン】
実際に僕も参加してみた。が、うまくグラフのシステムがわからない。どのように点数が出されているのか。
しかし、このシステムというのは今回で言えばスリムクラブ、アルコ&ピースのような“軟投派”にはかなり相性が悪い。つまり、「手数論」問題になってくるのだ。「M―12010」をもって脱却されたと思っていた「手数論」がまた再熱してくるわけである。これは悪しき事態だ。
「M―1」が芸人の間でのブームを作りだす、というのは過去の感想で述べてきたが
芸人の間で今大会が重要視されているのならば、また「いかに160kmの球速を出すか」争いになってきてしまうのである。
【トリンドル玲奈】
おそらく、今回のゲストで多くカメラに抜かれたのが彼女(次点で上原、東か?)。彼女が頭が悪いとかそうじゃないとか
そういうのはまず置いといて、彼女が「首をかしげる」「笑う」「驚く」という動きがフィーチャーされる。
これってやっぱり、茶の間の「お笑い興味ない層」のトレースだと。これに関してはある所からの受け売りだけど。M―1においての上戸彩というわけだ。
というわけで、感想。
Aグループ
1.囲碁将棋
僕は「怖い話」のネタだけ知ってたんだけど、ツッコミの方は舞台映えするというか。ボケの方は東京03に混じってもバレなさそう。余談。チャゲアスっていうのは、なんであんなにネタとか大喜利に使われるかね。
いや、世代っていうのもあるんだろうけど。そんな使い古されたボロ雑巾みたいなところから始まったネタ。ゴスペラーズらへんは観客の想像力・知識に委ねる部分が多いと思うけど、「俺がいるときはボーカルがいなくて、ボーカルがいるときは俺がいないだろ?」みたいなサイコ的なボケは結構好き。タモリはやや蛇足感。
どちらかというと、M―1の方で評価されるタイプかなって思った。
2.チキチキジョニー
すごく昭和っぽい匂いにする女性漫才師。正月のお昼のNHKにいそうな感じがするな。
入りがコテコテすぎて少し「ウッ」ってなったんだけど、元気すぎる入りとは裏腹な毒舌漫才。
西野カナは言い古されてたりするけども、それを差し引いてもスカっとするネタだった。
3ナイツ
歌ネタ。見たことあるネタだったんだけど、ナイツほどの腕がある人が歌でわらかしにいっていいものだろうか。
やっぱり、日本には「言霊」という言葉があって、言葉には魂が宿ります。果たして歌には潜んでいるでしょうか。
あと後半の、布袋が勝るくだりでの土屋の「布袋が最強です!」に僕はすごく違和感を感じました。ツッコミではなくて紹介。バラエティモデルなネタに成り下がってしまった。
4磁石
基本的に磁石は苦手だったんだけど、今回に限ってはこのグループの中で一番笑った。
そもそも何故、磁石は漫才は上手いとされながら賞レースに向かないのか。
優等生なんだよね。ボケもツッコミも。笑いってのは、観客のポテンシャル(知識、経験、予想)を超えたときに生まれるものだと思っている。もちろんベタっていう笑いもあるのだけれども。
だから、ローキックや総書記系男子で笑えた。磁石を知ってなければ、普通のボケの1つとして受け入れて笑ってないかもしれない。意外だったのだ。
粗い磁石というのが。
Bグループ
1HI-HI
Aグループが正統派が多かった影響もあるのか、やや乱雑で無秩序なネタでも大きな笑いが起きていた。
個人的にはボケの上田さんの「そうかー」っていう相づちがすげー好き。「よしっ、聞こう!」っていうのも。乱雑で無秩序の中にも、マイクの前でお互いの思ってることを言い合うっていう、これってつまり漫才の基本じゃないですか。
お互いへの配慮が見えるっていうか。いかに“作品”として見せるかになっていった「Mー1」とは違う点だと思います。こういうコンビが出てこれただけで「the manzai 」をやった価値はあるんじゃないですかね。
「漫才楽しい!」その通り。
2テンダラー
懐かしいなー。一応ぼくオンバト世代なので。
「病んだコンビが続いてすみませんねー」確かに。
ネタはやや二部構成。
一部の方はあまり特筆することはないが、ポイントは二部。
ああいう大喜利がネタになってしまうというところは、おそらくナニワの笑い、あるいは笑いの原点かもしれない。
僕はあれを大喜利と見たい。
あえて近いスタイルで思いつくコンビで挙げるとするなら、ノンスタイル。彼らも近いスタイルと言えるだろう。
ただ彼らと違うのは、1つのボケを大切にする・切り捨てない
つまり、ちゃんと演技込みでやりきっているところ。
実際、面白かったのはオチだけだったけど、彼らもHI-HI同様「the manzai 」をやって得したコンビの1つだろう。
気になった点としては、審査員で入れたのが全員関西だったってところ。身内票もあると思うが、関西の芸人がすぐ上京してしまうことも含め、大阪の排他的で保守的でかつ後進的な一面が見てとれたなと思いました。
3スリムクラブ
「宗教が生まれます」
猫ひろし
上戸彩
石原さとみ
ナイツ
ほぅ…。
冗談はさておき、今大会で唯一順応しきれなかったコンビだと思う。
「M―1」において効力を発揮していたスロー漫才だが、「M―1」のような緊張感のない今大会には合わなかった。一つの破壊行動が笑いに繋がるのだと感じた。審査員が3票も入れてたけど、名前じゃないか?
4:ハマカーン
やっぱり、僕らお笑いファンってのはハマカーンのネタも知ってるし「よっ待ってました!」的なとこがあると思うんだけど、一般層のお客さんはハマカーンを初めて見たこと人もいるわけで。ということを考えると、あのネタっていうのは少し不親切だったかなって思う。
特に神田が真似するところ。
四分では意識付けできてないのでは?僕は面白かったんだけど、初見が入りこめる間作りっていうのが出来てなかったのかな。
Cグループ
1:学天即
うーん・・。決勝に上がってる以上は何かしらポイントがあるわけですよね。
オーソドックスだったり、今回は結構“手数”がフィーチャーされたり、目新しさだったり。予選の順位が出てる以上「受けてたの?」という安易かつ非理論的な意見は出したくないのだけど、ポイントは何なんだろう。オーソドックスなのはオーソドックスなんだけど、なんていうかプロレス興行で例えたら「若手が少しのびてきたから後楽園ホール大会の第二試合に出してみたもののエルボー・ドロップキックしか見せ場なくしょっぱい試合になった」って感じ。全然例えられてないけど。最初から最後までぬるーいというかシャキっとしないネタでした。
2:博多華丸・大吉
テンダラーやHi-Hiのところでも言った通り、「the manzai」があって良かったコンビの内の一人。若手芸人は「賞レース慣れ」している。もちろん、計算にもとづいたネタ構成は大いに結構だし、こういう感想を書いてる身としては考察のしがいがあって面白いのだけど、今大会におけるベテランコンビは皆ハツラツと楽しそうに漫才をしている。
関西の大御所の漫才が何故面白いか。何故、有名なのか。それはシチュエーション設定などなく身の回りのあること、親しみ深い事をネタにしているから。東京と言うのは落語や演劇の文化が根強い。だからコントやネタの構成力には優れている方だ。だが、関西の若手漫才師はこちらを真似た。だから面白い漫才師が出ないし、関西というブランドにすがってしまう。審査後、たけしは「華丸・大吉にもうちょっと入れても良かったんじゃないの」と言った。コンテンツをプロデュースするというテーマとは裏腹に、ごく普通に漫才の面白さを追求するというところでの矛盾。これからの課題になりそうです。
3:アルコ&ピース
マリオの替え歌っていうと「ポポポポンジュース」を思い出すなあ。
このネタは賛否両論あると思うけど、ちょっとでも爪痕を残そうとしようとしたのは僕は好きです。手数論のことを言ったり、歌ネタのことを言ったり。ただ、漫才のネタかっていったらそれは違うわけで。「the manzai」だから許されるんだよなぁ。
4:パンクブーブー
パンクブーブーってたぶん今回の出場者で一番「M―1」を意識してると思うんですよね。
意識しているというか勉強しているというか。どうやったら審査員に気に入られるか、受けるかというところを知っている。もちろん面白いというところは変わりないんだけど。
パンクブーブーは「M―1」チャンピオンになったときは比較的オーソドックスなコント漫才だった(少し言い間違い部分も含んでいたが)。昨年、その言い間違い部分を強くして言葉の面白さ的な漫才スタイルに変化した。そのスタイルで今大会は臨んだ。
やはり面白い。笑いとは観客のポテンシャルを超えたときに生まれると磁石のところで述べましたが、日本語とは面白いもので文の最後まで聞かないと意味を汲み取りにくいという性質を持っています。パンクブーブーのネタは言葉遊び的な面白さがある。
決勝でまた詳しいこと言います。
Dグループ
1:エルシャラカーニ
うーん、よくわからんな。手数的なネタなのかとも思ったが、弾にもならないボケを吐いているだけのように感じる。今大会の出場コンビって歌ネタ多いよね。※DVDでは
最後のオチに向かう時に間を取り、緩急をつけてるんだけど
その“急”の部分に攻撃性が無いから、全く意味を成していない。
あの「違う違う」が現実に戻してくるのよね。一気にさめてしまう(二つの意味で)
2:千鳥
あ、出た・・。僕が苦手なタイプの千鳥のネタ・・。
コント漫才においてキャラクターが独立する、つまりキャラクターがストーリーを作っているんです。ストーリーがキャラクターを作ってるんじゃないんです。それって漫才のネタが面白いんじゃなくてキャラクターが面白いんですよね?勿論、面白いキャラクターを作るっていうのも才能だし尊敬もしますが、僕はキャラクターがストーリーを作るっていう関西に多い手法だけは生理的に無理です。これだけは生理的という言葉を使わしてください。そのキャラクターだけいれば設定もシチュエーションもどうでもいいというのがその手法の多きです。キングオブコントやR―1でもこれだけは引っかかるところです。
そして多くが関西出身。なんでしょう、新喜劇の影響なのかな?「このキャラクター面白いでしょ?だからこのネタも面白いよ」っていうところが気に入らない。それはノットイコールだろうと。あと個人的になんですけど、ノブが喋っているのを聞かずに白平が喋り続けるところが性格的に駄目です。リアリティはあるんだけども、そこで話を聞かないのが全く笑えない。イラっとくるだけ。私的でした。言いたいのはキャラクターの面白さ≠ネタの面白さってことです。
3:ウーマンラッシュアワー
あ、出たww本当に代表作っていうかこれしか自信作がないよなー。
ハマカーンのところでも言ったけど、これお茶の間には伝わったのかな。
一応、審査員が二票入れてるから多少は伝わったと見ていいんだろうけど
僕は初めて観たときからこのネタが好きなんだけど、明らかに若者向きなネタだから
どーなんでしょうね。あの『素敵やん』の人がテレビをザッピングしてて、ウーマン見て「こいつら売れるわ」って思ったらしいけど。早口だけがクローズアップされてるけど、僕はワード力というかボケの質は結構高い方だと思ってる。他のネタも見たいね。
4:銀シャリ
他の決勝コンビは予選順位が出てるのに、ワイルドカードはなんで選ばれたかわからないってのはちと不親切すぎないかい。
ネタは歌ネタ。本当にツッコミワードだけが浮き彫りになってしまうコンビだなあ。
歌ネタとか顔芸とか頼らんでいいのに、そういうところに手を出してしまうのはなんでなんだろう。相当、評価下がるポイントだと思うけど。
というところで、ナイツ・hi-hi・パンクブーブー・千鳥が決勝出場。
面白かったのは秋元・テリーが全く同じ人に票を入れてたこと。
磁石とウーマンに入れてたのが面白かったな。なんか通ずるものがあるか、プロデューサーとしてピンとくるものがあったんだろう。
そのあと、爆笑問題がたけしの代わりとして登場。2人と共に決勝進出者のネタを振り返る。面白かったのが、爆笑問題がどこで笑うか分かるところ。お笑いファンとしてすげー気になるところ。特に太田はね。審査員ではないけど、審査員みたいなもんだし。
M―1でもそうだった。松本やしんすけがどこで笑うか気になったもんだし。
決勝
1:hi-hi
一回戦ほど記憶に残るネタではなかったんだけど、やっぱり見てて楽しいってのが一番にあります。一本目の方がストーリー軸に忠実だったけど、二本目はやや飛びすぎかな。
ただアドリブの「お前の18年間ぶつけてこい!」は単純に良かったな―。
2:ナイツ
危ないネタを言ったら評価みたいなのは少し安易だと思うけど、M―1では絶対出来ないことをやったっていうのは大会の線引きの意味でも良かったと思います。
3:パンクブーブー
決勝では今までのコント漫才に言い間違いを上手くミックスさせたって感じ。
この辺が勉強熱心だなーというか執念深いっていうか。M―12010でリーダーこと渡辺に「一本目と毛色を変えてほしかった」と言われてるじゃないですか。
そこで、このスタイル。一本目と少し毛色を変えてやる辺り、そういう意味じゃパンクブーブーが取って然りだったのかなって思います。
4:千鳥
ネタに関しては言ったのでもう言いませんが、一本目と繋がりを見せる手法を使いました。
これに関しては松本人志がむかしラジオで苦言を呈していたわけですが、僕はアリだと思うし観客の反応を見て「これは千鳥が行ったかな」と思いました。テレビを制作する上で「見ていないと面白さがわからない」というのはいけないっていうのはわかりますが、今回に限って言えば観客が望んでいたものだったので手法としては使っていいのではないでしょうか。むしろ僕はM―1で生まれたものだと思っています。少しさかのぼってもブラマヨの皮膚科から始まる入りだったり、チュートの妄想ネタスタイルの構成の仕方となんら変わりはないと思います。
優勝はナイツの健闘むなしくパンクブーブーの優勝。これは人によって見方が違うと思いますが、個人的には「コンテンツとして売り出したいのはhi-hi」「面白かったのはパンクブーブー」という見方で分かれます。M―1はそれ自体がコンテンツでブランド化していたので単純だったんですが(ノンスタイル辺りから形骸化したと思ってるけど)、今回の賞品が「冠番組」だから複雑なところで「番組でだれ使いたいかな?」ってところも審査基準として見なきゃいけないところだったと思います。しかし、僕らのイメージ同様に「漫才の大会だから漫才が面白い人を選ばなきゃ」っていう概念が審査員の中にもあって(お笑いの大会だからそれでいいんだけど)、パンクブーブーが優勝したけどこれで良かったの?感が拭えない人が多いんだと思います。実際、hi-hiは放送後100本もののオファーがあったそう。
スター誕生なのかM―1の後枠なのか―――――。
これをはっきりさせないと、次回やっても重みも何もなくなりそう。