10階西病棟のデイルームの番人であるHさんが

(富士子の前回入院の時のお隣さん)

二日前に入院してきてからデイルームの

雰囲気が一気に明るくなったように思う。

 

ここのところ誰もやってなかった朝のラジオ体操も

Hさんが始めたら参加する人がでてきて

今朝も4人でやってきたところだ。

 

その後も各自治療の合間を縫って、

歓談したりご飯を一緒に食べたりしている。

抗がん剤治療で毎月一度は入院しているHさんは顔見知りの患者仲間も多いし、

初対面の人にも「良かったら一緒にどうですか?」と声をかけるので

Hさんの周りにはいつも人が集まっている。

ここにいる人は部位や程度の差はあれど

みんな隠しようもなく「がん患者」。

だから一度言葉を交わし始めると打ち解けるのもとても速い。

 

がんの治療のため入院していても、受けている治療は人それぞれ。

手術ができなくて抗がん剤治療の人は手術室に行ったことないので

富士子の2回の手術体験談を興味深く聞いてくれるし、

抗がん剤治療ってそういう苦労もあるのだとか、

子宮系の手術の時はそうなんだと、いろいろ勉強になる。

 

それ以外にも下の売店の何が美味しいという病院グルメ(?)ネタから

運動のために歩くならなら中央階段が空いてておすすめ

なんて情報もゲットできる。

 

また、住んでる場所、立場、仕事、趣味もいろんな人がきていて、

「人にはみな歴史あり」だから

面白く、深ーい話もいっぱい聞ける。

 

とにかく話題の尽きないデイルーム女子会だ。

 

昨晩盛り上がったのは、周囲反応の「あるある話」。

退院後に近所に散歩に出かけたら、

そこかしこで近所の人につかまって

自分のがんになってから今までの経過の説明を繰り返すはめになり

運動にもならないしストレスがたまるので

予定を切り上げて早く職場復帰したという人がいた。

 

心配してくれるのはありがたいが、

だったらみんなで家に見舞いなり遊びに来てくれれば

いっぺんに話せて済むのだけど

変に気を遣って一人ひとりがコソコソ聞いてくるし

「そんな歩いたりして大丈夫なの」とか

余計な心配されて面倒だったという。

 

がん患者というものは調子が悪くて臥せっていて

散歩なんてしないイメージがあるのろうか。

富士子もこの前見舞いきた親戚の人に

「さっき庭歩いてきた」と言ったら

いささか拍子抜けした顔をされたのを思い出す。

私も近所散歩したら同じ目に合うのだろうか…。

 

ステージの進行度や病状、その人のもともとの体力によっては

毎日苦痛と戦い臥せっていている人がいるのも事実だ。

でもそういう人は少数派で

あとの人は手術直後とか抗がん剤をやってしばらくは調子悪いときもあるけど

それ以外の時は元気で他の皆さんと変わらないのだ。

 

と偉そうなこと書いたけど、

それは富士子が身内にがんの人がいたり

またここでいろんな方と出会えたり

何より自身がその立場になったからこそ体得したことである。

そうでなかったら

先ほどの方のご近所さんと同じことをしていた可能性はある。

 

ラジオ体操や食事の様子を写真に撮り

「私ブログやっているのだけど写真使ってもいいかな」と言ったら

みな「いいよ、ぜひ書いて」「アップしたら見せてね」と快く承諾をくれた。

それには「がんセンターに入院していても臥せっている人ばかりでない」

ということを世の中にもっと伝えたいという気持ちあるのかな~と思った。

 

ふと、ジブリ映画「魔女の宅急便」のキャッチコピーを思い出す。

 

「おちこんだりもしたけれど、私はげんきです。」

 

これを富士子流にアレンジすると

「がんになったりもしたけど、私はげんきです。」

 

調子が悪かったり、気分が落ちたりする時もあるけど

それは毎日でもない。

(これってがんじゃない人も同じだよね)

 

さあ、これからデイルームに朝食をお盆ごと持って食べに出かけよう。

今日もデイルームでどんな話が聞けるのか楽しみだ。