戦前製の凸型電機が走る路線…「炭鉱電車」こと三井化学専用線 | 風かおる 鉄の路

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主に私が乗車した乗り物関連(鉄道中心)、その他気になったことを綴っていきます。稀にお絵かき。

2020年5月7日。一つの路線がその使命を終え、最終運行を迎えました。

 

その名は三井化学専用線。

三井化学専用線は福岡県大牟田市の旭町駅(仮屋川操車場:JR線と接続)~宮浦駅間1.8kmを結ぶ路線で、三井化学大牟田工場へ工業原料を輸送するために使われていました。

 

この三井化学専用線は元々石炭を運んでいた三池鉄道の残存区間であり、三池鉄道時代からの機関車が使用されていることから、「炭鉱電車」の名前で親しまれてきました。

 

三井化学大牟田工場が原料の購入元を変更することに伴い、トラック輸送へ移管することから廃止となったこの専用線。

戦前製のノスタルジックな凸型電気機関車が運行することでも知られていました。

 

今回は以前撮影した三井化学専用線運行の様子をご紹介したいと思います。

 

三井化学専用線は毎年5~6月頃の休止期間を除いてほぼ毎日運転で、

 

①宮浦駅→仮屋川操車場に空の貨車を輸送(返却)

②牽引した機関車を単機で宮浦駅に回送

③宮浦駅→仮屋川操車場の単機回送

④仮屋川操車場でJRから貨車を受け取り宮浦駅まで運行

 

の1日計4回が朝8~9時頃に運行されていました。

 

まずは①の貨車返却を撮影するために専用線と国道208号線とが交差する、旭町1号踏切へと向かいました。

 

こちらがその旭町1号踏切。

6車線をまたぐこの踏切、普通の踏切とは結構異なります。

 

まずは、遮断器ではなくワイヤーが降下する「ワイヤー式踏切」であること。

 

そして、踏切保安係が手動で操作する「第一種乙踏切」であること。

 

踏切のそばに小屋があり、そこで操作できるようになっています。

外からも装置を見ることができました。

 

踏切を観察した後は列車通過の時間まで待機。

交通量の多い国道208号線。

 

時折西鉄バスが通過していきます。

 

福岡空港行きの高速バス。

 

8時10分過ぎ、背後から三井化学の方が2人現れました。

道の両側に立ち、踏切の安全確認を行うようです。

 

続いて踏切保安係の方が小屋へ。

無線(もしくは電話?)で連絡を取りつつ、列車の接近を監視します。

 

8時20分過ぎ…

 

踏切警報音が鳴り、遮断ワイヤーが降りてきました。

まもなく列車が通過します。

 

警笛が聞こえてきました…

 

 

 

1937年製の18号機関車に牽かれた返空貨物列車が堂々の通過です!

 

運良く西鉄バスとのコラボも見ることができました。

 

吊り掛け駆動特有のモーター音を響かせながら通過していきます。

 

後ろに繋がれているのは通称「銀タンコ」と呼ばれる濃硝酸専用タンクコンテナを積んだコキ200。

迫力がありますね…

 

列車通過後は、仮屋川からの単機回送を撮るべく歩道橋の上へ。

 

仮屋川でコキ200を切り離した18号機関車が戻っていきます。

 

 

 

6車線の道路をまたぐ機関車は上から見るとかわいらしくもありますね♪

 

さて、撮った後は次の列車の時間までに宮浦駅に向かいます。

 

その途中にあったこれは、三池鉄道三池本線の廃線跡の橋。

ちょうどこの先で現存する三井化学専用線(旭町線)と合流していました。

 

 

パイプラインと線路に沿って進むことしばらく。

 

こんなものが見えてきましたが、ここは工場の中ではなく公道。

もちろん一般の人も入ることができます。

 

その先現れたのは踏切。東泉町2号踏切です(写真は渡ってから来た方向を撮影)。

ここは珍しい電鈴式の警報機が設置されています。

 

踏切を渡り、更に線路に沿って進んで行くと、線路が多数分岐し操車場のようになっているところに出ました。

ここが宮浦駅。

三池本線と旭町線が合流していたことから構内は広くなっています。

 

何やら機関車が止まっていました。

 

こちらは12号機関車。入れ換え用です。

 

ちなみに前に繋がっているのはデ-1電源車。

12号機関車は貨車を工場へ運ぶ役割もあるのですが、ここは化学工場。

機関車と架線との間で起こるスパークが可燃性の気体に引火し、爆発する可能性もあります。

そのため、工場への引き込み線は非電化となっていることから、入れ換え用機関車は電源車からの電気で動くようになっています。

 

現在はパンタグラフを上げて充電中。

(※敷地外からの撮影です)

 

その機関車の隣の建物が宮浦駅の駅舎。

木造のようですね。

 

駅の反対側には先程戻ってきたばかりの18号機関車がつかの間の休息。

 

柵の外から運転台まで見えました。

 

近くには黄色のタンクコンテナが。

これは黄タンコと呼ばれる液化塩素専用のもの。

ときどき銀タンコとともに搭載されることがあるようですが、この日は搭載なしでした。

 

門司 前 小倉 後 …?

 

そろそろ次の列車の時間になったので先程の踏切へ。

 

通常の踏切とは違う独特の音色の警報音。

 

 

 

 

18号機が仮屋川へ単機回送されていきました。

 

 

 

しばらくすると、今度はタンクコンテナを満載したコキ200 4両を牽引して戻ってきました。

 

 

 

吊り掛け駆動の音を楽しみつつ…

 

宮浦駅に到着した貨物列車は直ちに機関車切り離し。

 

機回しと同時に12号機関車が動き出しました。

 

 

 

機回しして貨車の仮屋川方に連結。

そして、貨車を1両だけ牽いて工場へと向かいます。

 

 


 

東泉町2号踏切を通過。

写真からもわかりますが、パンタグラフを下ろして走っています。

これもまた珍しいですね。

 

工場への引き込み線へ入り、しばらくして今度は単機で戻ってきました。

 

 

 

 

かわいい…♪

 

貨車は全部で4両あるので、この作業を4回行うことになります。

 

貨車を1両ずつ運んでいくその姿を可愛らしいと感じてしまいました(笑)

 

4両全てを工場へ運び入れ、機関車が戻ってきたところで作業は終了。

工場への引き込み線は柵が閉じられました。

 

 

今回、貴重な戦前製の機関車が牽引する三井化学専用線をたっぷり味わうことができました。

ワイヤー式や電鈴式の珍しい踏切、吊り掛け駆動の機関車、かわいらしいバッテリー走行の小さな機関車…

どれも素晴らしいものでした。

 

5月7日の運行終了後、まだ車両の処遇は決まっていません。

 

できれば残してほしいものですが…

どうなるのでしょうね。

 

それでは、今回はここまでです。

 

 

【おまけ】

大牟田駅の駅舎です。

 

 

※今回参考にさせて頂いたサイト→「三井炭鉱専用鉄道研究所」様