12月のある日、秋ちゃんと久しぶりに会った。
秋ちゃんとは、彼女が受験生時代医大合格発表二分前までラインしていた仲
そんな言い方したら、家庭教師やん、普通やんになってしまう。
Kの一つ年上のせいか、直接知り合いでないし、お互い顔も知らないけど、Kとコミュニティが被っている。
世間は狭い。
お互いいろいろあって、秋ちゃんはたくさんたくさん相談してくれたし、私もつらいことほとんど全部秋ちゃんにだけ話をしてきた。
何時間も電話したことも何回もあった。
秋ちゃんのお陰でKと長年のつきあいでなんとか気持ちを保つことができた。
ほかの誰にも相談できなかった。
こんなひどいこと、こんなつらい日々。
秋ちゃんは、めちゃくちゃ美人で、面白くて、賢いのに優しくて、覇気のある、それなのに育ちのいい、本当の意味で優しさのある100点満点なこ。
何時間でも聞いてくれて、同じ話なのに何度でも聞いてくれて、アドバイスしてくれる。
とても優しい夫がいて幸せになってる。
本当にいい人に出会えてよかった。
突然思い付いてラインすると、妊婦検診の帰りに会えることになった。
昭和レトロな暗いカフェで待ち合わせした。
3ヶ月ぶりの秋ちゃんはだいぶんお腹が大きく優しくお腹をさすってた。
秋ちゃんのこだからかわいいだろうな、賢くてかわいくて。
いろいろ話をして、といっても秋ちゃんは幸せなので、もっぱら私の不幸な話をきいてもらって、ばいばいした。
帰り歩きながらふと思った。
いなくなった子供のこと、言わないなんて、かわいそうすぎる。
誰にも言ってない。
秋ちゃんにすら。辛すぎていってない。
名前さえ呼ばれない私を天国でみてなんと思うのだろう。
そして、存在をいわないままってあまりにかわいそう。
そのほうがよくない。
もうテストも終わった。
がんばって言おう。
そう思った。
夜またおそく帰ってきて、隣でいつもどおり動画みて無言なまま深夜1時半になった。
私「そろそろ寝たほうがいいよ、明日も学校だよね」
K「わかった」
電気が消え、私は言った
「あのさ、私ずっと隠したことある」
K「何?病気とか」
私「違う」
K「妊娠してたとか」
私「そう」
K「…」
無言だった。
なんにも言わなかった。
なんにも。全く。心が動いた様子もなかった。
そしてその日はそのまま寝てしまった。
勇気を出して、次の日学校に行く前聞いた。
「なんで妊娠したってきいたのになんも聞かないの、流産してたんだよ」
K「お前おばさんやん。ほんまにあほやな。あのな、ただえさえ流産多いねん、お前年齢隠してるんかもしれないねどな、俺ハワイ行ったときからだいたいわかってるねん。おまえの年なら流産するんじゃぼけ」
私「ひどい。ひどすぎる」
K「いまさらいうな。そのとき言え、ぼけが」
私「すぐいえなかったやん。あのときも私の携帯の目覚まし音きにいらんいうて携帯突然なげたりしてたやん。」
K「お前がうざいからな」
私「あのときは仲良くしてたやんか、もう一度きちんと付き合おってなってたやんか、イライラしてるみたいやったから、もう少し落ち着いてからいおう、病院ももう少し落ち着いてからいこう思ってたのに。なんでそんなんいうんよ。」
K「望んでないねん。望んでないんじゃ。きもいねん。ぼけ、きもいねん、証拠だせよ。」
私「ひどい、ほんまにひどい、あのアメフト技でぶっ飛んで、上から踏んづけて、痛くて苦しくて泣いたら、だまれ、うるさい、だまれって、引きずっていって、死ねって首しめたやんか、それで死んじゃったやんか、病院行く前に死んじゃったやんかやんか、言えないまま死んじゃったやんか」
K「だまれ、時間ないねん、きーも。学校おくれるねん。ほんまきもい。」
そういって学校にいった。
もっとひどいことたくさん言われた気がするけど、記憶に残ってない。
Kが過去にしたことが、医者になるための勉強に支障をきたしてはいけないと、ずっとずっと言わないできたのに、あまりにひどい言葉だった。
ひどすぎて、言われた言葉、思い出すと涙でてくるけど、それが本当にKがいったのかを認めようとしない心がいつも私の中にいる。
私が悪かったからなのか?という心もある。
私の理解が足りなくて、遠いところ通って遊びたいのに、うるさく言ったからこうなった?
あまりにつらい言葉だった。
医学部なのに、医者になるのに、命。消えた命にまで、望んでなかった、いらんかったって言った。
あまりにひどい言葉だった。