3月、私の当時一番の目標だったサイパンにKと、いくことにした。
サイパンはただ海外だから行きたいわけじゃなかった。
辛く悲しい、そして大事な気持ちをそこに置いてくるために行こうと10ヵ月ほど前からずっと考えていた。
そんなことはKには一切言わなかったけど。
言えなかったというほうが正しかった。
サイパンにKといくのは二回目だった。
一回目はとても幸せなころだった。
いい思い出がたくさんあった。
ダイビングをして海の中の洞窟とそこに差し込む光が美しかった。
いままで行ったダイビングの地形の中で一番幻想的な景色をみた。
もちろんひどい喧嘩もそのときもあった。
それでもとてもいい思い出だった。
なつかしのサイパンに降り立ち、懐かしのホテル
の懐かしの部屋に行った。
コロナ禍を経て町は少し寂れていた。
観光客もすくなかった。
だからこそ、海は四年前以上に、綺麗な色をしていた。
DFSにいったり、シルバーアクセサリーの店をみたりして1日目をすごした。
ずっと欲しかったカルティエのリングも見るだけだったけど、目の保養ができた。
二日目にはダイビングに行った。
以前と変わらず美しい洞窟からの光をみた。
夜は、テイクアウトのおいしいピザを買った。
部屋のそとにあるテーブルで音楽をかけ一緒にピザを食べた。
静かな真っ暗な海に音楽だけが響いてた。
幸せだなーと思った。
そのときKが言った。
K「CBDの店あるー。明日見に行こお店。服もあるし」
私「そうなんや、服あるのすごいね。おもしろそう」
つぎの日の朝、早速その店にいった。
お店に入ると中で葉っぱが栽培されていた。
不思議な光景だった。
Kはお店のひとになれた様子で話しかけ、一番安いCBDを買っていた。
そのときは大して気にならなかった。
写真でもとりたいんかな?と思った。
きれいな景色のところに行ったりして夜ホテルに戻ると
K「さっき買ったの試してみる」と言った。
私「え、やめてよ、そんなんよくないよ」.
K「軽いやつやから大丈夫」
Kは口にだしたことは必ずしないと気が済まなかった。
私の忠告なんて聞かなかった。
Kは海のほうにいき、そこから一時間ほど部屋の外にいた。
私は呆然としていた。
こんなことをしに来たんじゃない。
大事なものを失って、それをここに置いてくるつもりでここに来たのに。
そう思うとまた涙がでてきた。
なんのためにきたのだろう。
あいつは単に楽しむだけのために来てるのだろう。
何も私が言ってないから。言わないできたし、これからも言わないつもりだから。
それにしてもひどい。なんでこんなことするんだろう。
もう別れよう。永久に彼に分かってはもらえない。
もともと、このことはずっと黙っておくつもりだったから、これでいいんだ。
もういいんだよ。
そう思った。
ことこと、そのときは胸にしまっておこうと思ってたことだった。
絶対に言わないつもりだった。
長く外にいたKはようやく部屋に朦朧としながら戻ってきた。
そんなKに言った。
「もう、別れよう。悲しいよ、疲れたよ。いつもどこ行ってもふらふら一人でどこかいくし、家にもほとんどいないし」
K「なんで?おれ好きやねんで。めちゃ大事やねん。そうや、今日みてたカルティエのリング買ってあげる。ね、そんなこといわんといて」
なんどもなんども好きやからと言われて、私はようやく頷いた。
私「うん」
普通にその日一緒に寝、次の日カルティエのリングを買ってくれた。
お店の前で写真をとった。
二人ともとてもいい笑顔をしていた。
いまでは想像すらできない関係。
偶然帰り歩いていて、かっこいいインディアンリングをみつけて、Kにプレゼントした。
その日Kは残ったCBDを吸ってサイパンの最後の思い出にした。
私はそれをみたが、もう諦めていた。
いつものKの常套手段だったけど、それでも私のことが好きなのは確かだったから、もうそのときはそれでよかった。
帰国のころになるとまたKは不機嫌になり始めてた。
なにが気に入らなかったのかわからないけど。
でも、私の指には、カルティエのリングが、Kの小指にはシルバーのリングが光っていた。
それを見ると、大丈夫、がんばろうと思えた。
すぐ近くに不幸が待ってることも知らずに。
幸せなんてあり得ないことに気がつかなかった。