Oside
あれから3日後くらいに、
潤が応募要項を持ってきて、内容を確認した。
〝まぁ、とりあえず、1ヶ月後までに
テーブル一個作れってことだな。″
〝なんだ?このテーマって。″
真ん中にデカデカと書かれた
文字を見て、潤に聞いた。
〝このテーマに合わせて家具を作るんだよ″
〝「貴方が、使いたいテーブル」?。″
〝カズはコレをテーマに、一ヶ月で考えて
作んなきゃいけない。″
〝うん。頑張る。″
こうしてニノは、
この変わったテーマを軸に
テーブルの構成を始めていた。
今も、その作業の途中。
俺は、朝から、ここにきて、
今日は、工房じゃなくて、
ずっと家にニノと2人でいた。
ニノは、ソファーにコロンと、座って
書いた設計図をひっくり返したり、
逆さまにしたりして不思議そうに見ていた。
俺は、そのソファーのそばの床に座り、
ニノの部屋をスケッチしていた。
「ねぇ、大野くん…」
不意にニノが、俺を呼ぶ。
「んー?」
振り向きはせず、
声だけでニノの声に答えた。
「実はもう、外、真っ暗だって知ってた?」
「え?」
ニノに言われて、
ふと、まだカーテンの閉まっていない
窓に目をやると、確かに外は真っ暗だった。
「うわ、やべ。」
「ふふふ。」
俺、いつも、ニノといると
時間忘れて……
「ごめん。」
そう言って、荷物をまとめようとした時、
ニノが、せわしなく動く俺の手を止めた。
「……泊まってけば?」
ソファーに寝っ転がったまま、
下から俺を見つめるように、ワンコが言う。
「い、、、いやでも……」
するとニノが、ふふっと笑って言った。
「ふふ。また帰れなくなっちゃうよ?」
「そー……だけど……」
「泊まっていきなよ。服も貸すから。」
ニノの目は、不思議だ。
ずっと見てると、吸い込まれる。
その、キラキラした茶色の瞳に
まるで蜜を求めた蝶のように見入ってしまう。
「………じゃあ………泊ま…る。」
「ふふ。うん。」
こうして、俺はニノの家へ
また泊まることになった。
その後は、
ニノのオムライスを食べて、
少し、ゲームもして、
なんだか、修学旅行みたいだった。
「なぁ……ニノ…」
「ふふふ。なぁーに?」
今は、
お風呂も入って、同じ匂いに包まれて、
ニノの部屋でベッドに2人、うつ伏せになって
寝っ転がってる。
ニノは、テーブルの構図を描いてて、
俺はさっきの部屋の絵を修正していた。
肩が密着して、
ホント、振り向けば、キスできるんじゃないかってぐらい近い距離。
ヤバい。
心臓が、ドクドクだ。
「明日は、俺がなんか作るよ。」
「えー?大野くんが?」
ニノは構図を鉛筆で
さっさと、書きながら答えた。
「何食べたい?」
「うーん。蕎麦?」
「茹でるだけじゃん。」
「ふふふ。天ぷらもいーなぁ。」
「あ、天ぷら、いいね。」
「ふふ。作ってくれるの?」
「んふふ。頑張る。」
すると、ニノは、
ホントかよーって笑いながら、
鉛筆を置いて、ベッドに伏せた。
「ニノ…?どした?疲れた?」
ニノは、伏せたまま、ううん。と
首を横に振った。
「なんか、ちょっと、目がね。
少し手も痺れちゃって。」
そう言って、ニノは手をんーと、
前に突き出した。
「もう…今日は休んだほうがいいよ。」
「……んー。そーだね。」
ニノはそう答えると、
クリッと、顔をこちらに向けて、
うふふ。と笑った。
「ふふ、どした?」
「んー?なんか、大野くんの手、綺麗だなぁって」
「そーかぁ?」
「うん。ほら……」
ニノは、自分の右手と俺の左手を重ねると
「ほら、こんなに違う。」
と呟いた。
「この手から、大野くんの絵ができるんだねぇ」
ニノは、手のひらを合わせたまま、
俺の手をふにふにすると、不思議そうに見つめた。
「んふふ。この手から、ニノの家具が出来上がるんだなぁ」
「ふふ。そーだよー?」
そういって、
ふふっと、笑う。
その笑顔が、可愛くて…
俺はニノの指の間に
すっと、指を絡めると、そのままぐっと
腕相撲みたいな体勢にして、ニノの顔を近づけた。
「おっ、のくん?」
「んふふ。ニノの手をかわいい。」
鼻の先が、もう少しでくっつきそう。
握ったニノの手は、あったかくて、
ふにふにしてて、気持ちよかった。
「また………かわいいって…」
「だって、可愛いもん」
「大野くんの手は……綺麗。」
「確かに。男っぽくないな。」
「ふふ。ちょっと認めてるじゃん」
「ふふ。」
笑いかけるニノの顔がすぐそこに。
ホントは奪いたい。
目の前にある、かわいい唇。
だから、今は、ここで…
ごめんね、って心で呟いて、
ニノと手を繋いだまま、
その手を俺の首の方にやると、
ぐっと引き寄せて、おでこにそっとキスした。
「大野……くん。」
「ふふ。かわいい。」
「おでこ……唇…当たってるよ…」
「ふふ。ごめんね。」
「ううん。……あった…かい。」
ニノは、ふふって笑うと、
眠くなってきちゃったね。って
またうつ伏せた。
「寝よっか。」
「…んー?…うん。」
俺は、ニノの構図絵と、
俺の絵をベッドサイドに置くと、
下に敷いてあった敷布団に移動した、
「電気……消すよ?」
「………」
「ニノ?」
あれ?ってニノを見上げると、
ニノは、布団の上で、スースー寝息を立てていた。
「ニノ…布団かぶんなきゃ」
俺はニノを少し、移動させて、
布団をかぶせると、おやすみって、
呟いて、電気を消した。
続く…