Sside







〝翔ちゃん。″

〝どうしたの?こんなとこまで来て…″





話があると、
サイクリングロードみたいなところを
2人で歩く。

 




そしたら、
突然、智くんが真剣な面持ちで話し始める。









〝前に好きなヤツがいるって、オイラ言ったよね?″ 

〝え、うん。″







だからかな、この時身構えたのは。







〝その好きな子ってさ、カズのことなんだ。″












正直、智くんが何を言ってるのか、
意味がわからなかった。








は?
カズくん?
カズくんって、智くんの弟でしょ?
しかも、男の子だよね?








俺の脳内は、超絶パニック。







だって、
ツッコむところ、満載すぎるでしょ?










だから、俺は何も答えられずに
ただ、ただ、固まっていた。








そして、智くんは続ける。







〝翔ちゃんが引っかかるのは分かる。でも、好き、なんだ。大好きなんだよ。好きが止まんないんだ。オイラ、相談した時も言ったでしょ?″



〝う、うん。″




〝認めるとか、そういうのを言いたいんじゃないんだ。ただ、翔ちゃんに知っておいてほしいだけ。オイラがカズのことをどう思ってるかって。″









正直、なんて、答えていいのか、
わからない。







俺が知っておくことのメリットってあるのか?



 



わかんない。
わかんない。









けど、
なんだか、引っかかるのはそこじゃないんだよ。










〝智くんは、カズくんのことを…″



〝うん。もし、翔ちゃんの中にモヤモヤがあるなら、今日は、オイラたちは帰るよ。急に打ち明けられてるもん。嫌なら…″


  

〝いや、あの、それはない。″

〝ほんと?″


〝うん。″


    






咄嗟に出た言葉。
〝いや、それはない。″
この言葉に嘘はない。













違うんだ、違うんだよ、智くん。










〝ちょっと、マジ目な話ししてもいい?″


〝え?うん。″







俺、なんか、最近変なんだ。
ってか、今日から。









別に男同士が変とかは
正直、思わない。
それは、人それぞれ。自由だから。
相手と自分が良ければ、俺はいいと思ってる。











だから、智くんとカズくんが
好き合ってるのも別に、変な気持ちは抱かない。







まぁ、その、兄弟ってのは、
どーすんだ?って思うけど、
まぁ、俺には関係ないって、今は置いておいてる。









違う、違うんだよ。
この2人のことは、いいんだ。







そうじゃなくて、
そこじゃなくて。








俺が言いたいのは、
それは客観的に、第三者の目で見た時の
感覚でしょ?ってこと。










俺、最近変なんだ。
最近ってか、今日から。










あの、雅紀くんって子に会ってから。










あの子が、今
めーいっぱい笑ったら、
もっと、可愛いんだろうな。
もっと、綺麗なんだろうな。って。









こっち向いてくんないかな?
笑ってくんないかな?










そしたら、
その子が、不意に振り返って、
俺に、ニコって笑ったんだ。









そしたら、どうなったと思う?










すげー、ドキドキした。









やっぱり、
すごい、可愛いし、
すごく、綺麗。







まるで、
真夏の太陽に照らされた、向日葵みたいに。







綺麗。
可愛い。
もっと、近づいてみたい。
もっと、話してみたい。
もっと、知りたい。












こんな風に思った。










俺の胸は、どーしようもないくらい、
ドキドキして、
顔があっつくなった、








それは、
炭のせいでもなくて、太陽のせいでもない。
君にドキドキする、
身体の底から湧き上がってきた熱波のせいだ。










どうしてだ。
どうしてだ。

俺の中で
何かが疼く。








すると、一歩先を歩いていた智くんが、
振り返る。







〝翔ちゃん、、、それはきっと…















雅紀に、恋したんだね。″










そう、ニコッと智くんは微笑んだ。









〝やっぱ、そうだよね。″









気づいていた。
気づいてしまった。
だから、混乱した。






だって、
まだ、俺、何にもあの子のこと知らないよ?









俺の何個下なんだ?って。









でも、
なんでか、わかんないけど、
行けっ!って言われてる気がするんだよ。







行けっ!行けっ!行けっ!って。






でも、一方で、
そんな気持ち消せっ。
ダメだった。ってブレーキをかけてる自分もいる。







つまり、
GO合図を送るソイツが、
カズくんと智くんを容認してて、
そんな気持ち消せっってソイツが、
今、悩める俺をここに立たせてる。









俺は、
俺は、どうしたらいいんだ?










どうすればいい。





〝そっか。オイラ達のことをどうこう思うことはないけど、いざ、自分がその立場に立ったら、訳わかんなくなっちゃったってことか。″  


〝そう。″
 






この人の察する能力は
ハンパないと思う。







俺が1番言いたい、
聞きたい、
答えの出したい難問を、
いとも簡単に理解してしまう。








すると、智くんが、
ポンと、俺の肩に手を置いて、
ふにゃっと、笑った。









〝カズがね、オイラと付き合う前、友達に相談したんだって。そしたら、その友達はね、気持ちが大事だから、応援するって言ってくれたんだって。″



〝気持ちが大事?″



〝そう。2人が愛し合ってるなら、強い気持ちを持ってるなら、一緒に居ていいって。両想いになれるのは、奇跡なんだ!って。″




〝奇跡?″



〝あ、あとね。違う人は、告白しないことには始まらないでしょって。色々やり方はあるよって。ふふ″


〝それ、俺が言った……やつ。″


〝ふふ、うん。あ、ちなみに、その気持ちが大事って言ったのは雅紀ね、″



〝雅紀くんが?″

〝ふふ、そう。以外といいこと言うでしょ?アイツ″




















だからさ、
と、智くんは、
今日イチ真剣な眼差しで言った。










〝気持ちが本当かどうかも、始めて見なきゃ分かんない。オイラは再確認だったけど…確かめるまでわかんないんだよ。やっぱり。今は色々思うこともあるかもしれない。けど、














自分の想いに任せて、そのまま
走っていくのも、悪くないんじゃない?″







〝マジか…″

〝んふふ、マジ。″











気づいてしまったのなら、
その気持ちが、恋愛感情ってやつなら…








そっか。
俺はスタートラインにも立ってなかったのか。











付き合う、からが、スタートじゃないんだな。










〝ありがと。智くん。″

〝うん。ふふ、じゃー、オイラ達、帰んなくていい?″

〝当たり前でしょ?″

〝帰ったら雅紀も帰っちゃうもんね。″

〝ちょっと!″










とりあえず、もどろっか。って、
もと来た道を歩きなおす。



 




言ってしまえば、一目惚れ。








君をもっと知ったら、
きっと、もっと、君は可愛くて、
もっと、綺麗で、
もっと、愛らしく笑うんだろう。








もっと近くで、
もっとそばで見てみたい。
君を知りたいんだ。








その気持ちに気づいたのなら、
好きになってしまったのなら、
気持ちが大事ってあの子が言ったように、
告白しなきゃ始まらないって俺が言ったように、
まずは、知ることのスタートラインに
立ってみよう。









雅紀くん、
僕は、
君が、好きだ。







続く…