※原作とは設定が異なっています。ご注意ください。
※登場人物が多くて混乱するかもしれません。
※小説と題してますが、長編の脚本と思って読んだ方が良いかもしれません。
※下手な文章ですが、生暖かい目で見守ってくださると、幸いです。



story.20:『その名は』






ーーーーーーーーーーーー明け方の4時半。

一二三:「ただいま~…」

と、静かに自宅の中に入ると…。

独歩:「おかえり…」

一二三:「!?」

伊弉冉一二三は返事が帰って来たことに驚き、慌ててリビングへ駆けて行く。

リビングの扉を開け放つと、ソファーでいつも以上に眠そうに隈を作っていた観音坂独歩が笑顔で出迎えていた。

一二三はすぐに独歩の傍に駆け寄ると、独歩の両腕を掴み言った。

一二三:「どうしたんだい、独歩くん?まさか寝てないのかい!?」

独歩:「あ、ああ…。考え事をしてたら薬を飲むのも忘れてたよ。
はは……今日これから仕事があるのに、バカだよな、俺は……」

そう言って自嘲する独歩の話を聞いて、一二三は口にする。

一二三:「"考え事"…?一体何を考えていたんだい?」

独歩:「あ、いや……対したことじゃないんだ……」

一二三と会ってからなんだかようやく眠気が襲ってきた独歩だったが、ふわふわした気分が勢い付いたのか容易に話をした。

独歩:「ヤマトのことを、考えてたんだ……」

一二三:「ヤマトさん?」

独歩は「ははは…」と笑いながら、こう話した。

独歩:「俺、スマホも鍵も失くしてヤマトの家に寝泊まりしたことがあったろう?
ヤマト……自分の家なのに風呂、入れなかったんだ……」

独歩はうとうとしながら話す。

独歩:「唐揚げをご馳走になった時も俺が早く帰らないから、きっと風呂に入るの遅かったんじゃないかって……。はは、バカだろう?
ヤマトの入浴の心配してさ、変態だよな、俺……」

独歩はそう言いながら、最終的に至った考えを口にした。

独歩:「ヤマトのこと、考えてたら……ヤマトに会いたくなっちゃって……。電話してみようかとも思ったが、さすがにまだ寝てるよなぁ……」

一二三:「なるほど……」

一二三は独歩の話を聞いて、フムフムと納得していた。

初めて倭愛結夢とこの家で会い、お家パーティーをしていた時から、なんとなく勘づいていた……その考えが、独歩の話を聞いて確信に変わったのだ。

一二三は独歩の隣に座る。
そして改まった態度で、独歩の名前を呼んだ。

一二三:「独歩くん」

独歩:「…うん?」

独歩が返事をすると、一二三は真剣な表情をしながらこう話を切り出した。

一二三:「実は、初めてヤマトさんとここで会った時になんとなく察してたんだけど、あの場では言えなかったことを……今、ここで話すね。」

独歩:「何だよ、改まって…?」

独歩は眠い目を擦りながら一二三の話に耳を傾けると、一二三は単刀直入でこう言ってきた。

一二三:「独歩くん……君は、ヤマトさんのことが"好き"なんだよ」

独歩:「………好き?」

一二三:「そう、"LOVE"の方のね!」

独歩:「"LOVE"……?」

イマイチ、ピンと来ていない独歩の腕を再び掴んで、一二三はハッキリと言った。

一二三:「つまり!独歩くんは、ヤマトさんに"恋をしている"んだよ!」

独歩:「……………。」

一二三の話を聞いて、フリーズ。

『好き』『LOVE』『恋』という単語。
そして頭の中を駆け巡るように愛結夢の顔が溢れてくる。

独歩:「……ーーーーーーーーーーーー」

そう言われてみれば、過去にも似たような経験がある。
無意識に相手の顔が浮かぶ、考える、会いたくなるーーーーーーーーーーーーその名は、『恋』。

独歩:「~~~~~~ッ!!!?」

言葉にならない大声を上げ、一気に目が覚めた独歩を、一二三がなんとか落ち着かせようとする。

独歩は『恋』を自覚してからしばらくパニックに陥る。

一方、一二三は独歩に恋心を自覚させたことで、こんなに慌てる独歩を見て、申し訳なさを半分抱きつつ、密かに喜んでいたのだった。






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