※原作とは設定が異なっています。ご注意ください。
※登場人物が多くて混乱するかもしれません。
※小説と題してますが、長編の脚本と思って読んだ方が良いかもしれません。
※下手な文章ですが、生暖かい目で見守ってくださると、幸いです。



story.16:『ある可能性』






観音坂独歩と伊弉冉一二三の家でお家パーティーに参加していた倭愛結夢のスマホに一件のメールが届いた。

メールの文章を目にした愛結夢が不安げな表情をすると、独歩はある可能性を思い出して、愛結夢に声を掛ける。

独歩:「ヤマト…!」

愛結夢:「!?」

愛結夢はビクッと体を震わせてから慌ててスマホ画面を閉じた。

そして独歩はある可能性を口にした。

独歩:「ひょっとして……"父親"から連絡が来たのか?」

一二三:「お父様…?」

独歩の口から出た言葉に、一二三と神宮寺寂雷が反応すると、愛結夢は一瞬きょとんとしてから全力で否定した。

愛結夢:「えっ!?ちちち違う違う!あの人が私にわざわざ連絡なんてしないよ!」

独歩:「でも今、一瞬青ざめてたぞ?直接じゃなくても何かあったんじゃ……」

愛結夢:「……心配してくれて、ありがとう。え、えーと……」

心配する独歩や、事態を飲み込めていない一二三と寂雷を見て、愛結夢は考えながらこう言った。

愛結夢:「……うちの母からで、なんか父が私宛にお見合い写真を送ったから必ず見ろって言ってるって内容の……」

一二三:「お見合い写真…?」

寂雷:「今の話を察するに、ヤマトさんはお父様とは関係が上手くいっていないようだけど…。
お父様は怖い人なのかな?」

愛結夢:「え、えっと……」

独歩:「な、何て言うか……その……」

愛結夢と一緒に困っている独歩を見て、寂雷は察する。
独歩は愛結夢が青ざめるほど父親に苦手意識を持つ理由を知っている、と。

愛結夢は少し悩んでから、独歩の方を見て言った。

愛結夢:「独歩、私は大丈夫。
だから一二三さんや先生にも話すよ。独歩にもこれ以上、気を遣わせたくないし……」

独歩:「……本当に、大丈夫か?」

愛結夢:「…うん!心配してくれて、ありがとう。」

愛結夢は弱い笑みを浮かべてから、一二三と寂雷を見て言った。

愛結夢:「独歩には話したんですが、良ければ聞いてください。
私の過去と、夢の話を……」

一二三:「ヤマトさんの夢…?」

愛結夢は浅く頷いてから語り始めた。

自分の父親が男尊女卑で、女だった自分や母が随分と苦労したこと。

『父親』や『夫』という存在に恐怖心を持っていること。

中王区が母子家庭支援制度を作ろうとしていること。
それを利用して、将来はシングルマザーになるという夢を持っていることを。

愛結夢:「ーーーーーーーーーーーー…だから、早く制度が成立してくれることを願ってるんです。」

寂雷:「話してくれて、ありがとう。辛い思いをしてきたんだね」

一二三:「気持ちは分かるよ。
恐怖心って、理屈じゃないもんね……」

愛結夢:「そう、ですね……。
私の夢は、父には一生理解してもらえないかもしれない。
でも、母には……私を今でも心配してくれる母には、孫の顔を見せてあげたいなって思う。思う、けど……」

独歩:「ヤマトには、お見合いはキツイな……」

愛結夢:「確認しなかったらまた母が責められる……。でも相手方に失礼なことをしようとしてるのに話を受けるのも……」

独歩:「ヤマト……」

一二三:「ふむ……」

愛結夢と独歩を見ていた一二三は密かに"ある可能性"に気付く。
その可能性を考慮して、一二三はこう言った。

一二三:「独歩くん!ここは独歩くんが一肌脱ぐ時が来たんじゃないかな!」

独歩:「お、俺は……申し訳ないけど、ヤマトの父親と会ったことないからヤマトの希望を一緒に訴えても『他人が口出しすんな!』って一蹴されるだけだし……」

独歩がそう言うと、一二三は「ふふふ…」と意味深に笑ってからこう言った。

一二三:「それが、独歩くんが協力してヤマトさんのお父様を黙らせる良い方法があるんだよ!」

独歩:「え?」

愛結夢:「どのような…?」

寂雷:「一二三くん、私にも教えてほしいな。どんな方法なんだい?」

寂雷にそう聞かれ、愛結夢と独歩も注目すると、一二三はその方法を口にした。

一二三:「独歩くんがヤマトさんの、"彼氏"としてお父様に会うんだよ!」

独歩:「……ぇええええぇぇぇーーー!!!?」

一二三:「もちろん"フリ"だよ!
友達のピンチは助けないとだよ、独歩くん♪」

愛結夢:「た、確かに彼氏がいればワンチャン……父を黙らせることは出来るだろう、けど……」

顔を真っ赤にしてゆでだこ状態になってる独歩を見ながら、愛結夢はこう聞いた。

愛結夢:「もし、私が彼氏のフリを頼んだら……独歩、協力してくれる?」

独歩:「っ!!」

愛結夢にそう聞かれ、独歩はハッとしながら少し悶々とするが、すぐにこう言った。

独歩:「する!!ヤマトのためなら協力するよ…!!」

愛結夢:「!……ありがとう、独歩!
そう言ってもらえただけで私は嬉しいよ。でも協力してもらうかは、もう少し考えてからにする。
その結果、どうしてもって時は……協力してください!」

独歩:「も、もちろん!」

独歩はそう言ってからグラスをくいっと口付けてジュースを飲み干した。

それを見た愛結夢はこう言った。

愛結夢:「あ、グラス空いたね。
寂雷先生も。冷蔵庫、開けさせてもらってもいいですか?」

一二三:「構わないよ。
好きなものを取っておいで!」

愛結夢:「ありがとうございます!」

そう言って愛結夢が椅子から立ち上がり、冷蔵庫へ向かうと、寂雷はまだ顔を真っ赤にする独歩に話し掛けた。

寂雷:「まぁ、決行することになったら相当な大役だからね。
もし、独歩くんだけじゃ不安なら私も出来る限り、応援するよ」

独歩:「ありがとう、ございます…。でも!先生に迷惑が掛からないように!いざとなったら頑張ります…!」

一二三:「その意気だよ、独歩くん!」

愛結夢:「お待たせしました~」

冷蔵庫から缶を2つ取ってきた愛結夢が戻ってきた。

愛結夢は1つを自分の席の前に置いてから、1つを開けて寂雷のグラスに注いだ。

愛結夢:「寂雷先生、どうぞ~」

寂雷:「ありがとう、ヤマトさん」

寂雷はお礼を言ってからグラスを手に持つ。
その時、一二三は愛結夢が持って来た2つの缶を見てからギョッとして声を上げた。

一二三:「せ、先生!ストップ!」

独歩:「えっ?」

だが、一足遅く寂雷はグラスに注がれた飲み物を口にする。
その時、独歩も愛結夢が持つ缶を見て、青ざめて言った。

独歩:「酒……なのか……?」

一二三:「アルコール3%のサワーだけど……恐らく先生は……」

愛結夢:「?」

そう言って椅子から立ち上がる独歩と一二三を見て、愛結夢が不思議に思っていると、寂雷が「ヒクッ」としゃっくりをする。

そして顔を赤くさせ、独歩と一二三が恐れていた事態が起きた。

寂雷:「てやんでぇ~い!!足りねぇ酒が足りねぇ~!」

愛結夢:「…へ?」

独歩:「や、ヤマト!先生から離れて…!」

一二三:「せ、先生!お水、お水持って来ますからぁ!」

寂雷:「水じゃなくて酒持って来いって言ってんだろうが~~!」

わずかアルコール3%のサワーで酒乱モードに突入した寂雷から無理やり愛結夢を遠ざける独歩。

愛結夢はつい今まで冷静沈着で落ち着いていた寂雷が豹変をし、酔っぱらう姿を見てから思い出したように独歩に話し掛ける。

愛結夢:「……寂雷先生にお酒はダメって、前に話してくれたよね?
この事だったんだ……?」

独歩:「はぃ……」

寂雷:「ヤマトぉっ!」

愛結夢:「は、はいぃ!」

寂雷:「今日は朝まで飲み明かすぞぉぉぉ!こっちへ来い~!!」

一二三:「いてっ……いたたたた!」

寂雷に捕まった一二三を見て、愛結夢と独歩は2人から距離を置いて遠巻きに見ているしかなかったが、この後寂雷がこの家にある酒という酒を呑み尽くし、テーブルに俯せになって眠りに付くまで独歩と一二三、そして愛結夢は付き合うことになる。

疲れてダウンしてから数時間後に正気を取り戻した寂雷と共に、買ってきたミルクレープを独歩たちと食べてからこの日はお開きとなったのだった。






------------To be Continued...