※登場人物が多くて混乱するかもしれません。
※小説と題してますが、長編の脚本と思って読んだ方が良いかもしれません。
※下手な文章ですが、生暖かい目で見守ってくださると、幸いです。
story.14:『将来の話』
兄・柊羽と、朝子の結婚式から1ヶ月後のある休日。
佐伯夏来は"ある場所"へ向かっていた。
職場とは反対方向へ進む電車に乗り込み、ものの10分で目的地の最寄り駅へ到着した。
夏来:(えーと、確か駅近だって言ってたよね?)
夏来はそう思いながら、目的地へ向かって歩き出した。
事前に貰った手書きの地図を見ながら3分後、ようやくある一軒家に到着した。
本当は、駅に着いたら迎えに来てくれると言ってもらったが、大事な日だから、なるだけ邪魔をしないように自力で来たのだ。
夏来:(チャイム、チャイムっと…)
玄関のインターホンを鳴らす。
ピーンポーン……
すると、数秒で玄関のドアが開いた。
出てきたのは、朝倉七音。
七音:「いらっしゃい!待ってたよ」
去年、ダイエットをしてから、スマートになった七音。
既に見慣れた光景だったが、夏来はホッとしたようにこう返事した。
夏来:「お待たせ。……いやぁ、本当に。今日は良い日だねぇ……」
七音:「ほ、本日は、よろしくお願いします!」
玄関口に入ると、夏来と七音は畏まりながらペコペコと頭を下げ合う。
そして部屋の中へ案内されると、リビングでは七音の両親と、別の親子が揃っていた。
七音の両親と向かい合って座っていた女性の親子は、実は七音の縁結びの婚約者の家族。
七音がダイエットを始めてから、前向きに変わろうとしている七音を見直して、七音の婚約者も一緒に七音のダイエットに協力していたのだ。
だから夏来は七音を通じて、女性・日向とは既に顔見知りである。
七音が前向きにダイエットを頑張っている最中、七音と日向の中も仲が深まり、なんと結婚することになったのだ。
……で、なぜ家族ではない夏来がこの場に呼ばれたかと言うと?
日向:「佐伯くん、今日は婚姻届の証明書を書きに来てくれて、ありがとうね。」
七音:「本当に、感謝だよ!」
夏来:「いえいえ。2人の結婚式、楽しみにしてるね!」
「うん!」と声を揃えて返事をする七音と日向を見て、改めて安堵してから、夏来はちょっと緊張しながら両家族が見守るなか、婚姻届の承認欄に自分の名前を記入した。
なんとか間違えずに書けてホッとしてから、七音の母親が湯飲みに入れたお茶を運んで来て、夏来の前のテーブルに置いてくれた。
朝倉母:「夏来くん、ありがとう。
さぁ、お茶飲んで。日向さんたちがケーキを買ってきてくれたから、それも一緒に食べましょう」
夏来:「すみません、これ書きに来ただけなのに。邪魔にならないよう、ケーキを食べたら退散しますね!」
朝倉父:「気を使わせて悪いね」
日向母:「佐伯くんは、うちの娘と七音くんの恋のキューピッドだから、本当はもっと持て成したいところだけど……」
夏来:「それは、2人の結婚式の時まで取っておきます!」
日向父:「ありがとうね」
そんな会話をしてから、七音の母親がケーキを運んで来て、夏来たちは一緒に食べることにした。
ケーキを頂いていると、日向の父親が夏来に聞いてきた。
日向父:「佐伯くんは、フリーなんだっけ?これから先のこと、考えてたりする?」
日向母:「ちょっとお父さん、あんまり踏み込まないの」
夏来:「大丈夫です。
まだボーッとしか考えてませんが、趣味がありますし、家族もいるし、先日兄が結婚したので近いうちに甥か姪が出来るかなって思ったら寂しいとかは今は無いですね。」
七音:「夏来くんは仕事も僕より出来るし、人に恵まれてるからフリーでもそのうち良い人に出会ったりして?」
夏来:「それは……どうかなぁ?」
七音の発言に、困ったように笑う夏来を見て、日向が言った。
日向:「佐伯くん、しっかりしてるし、真面目で思いやりあるから、"選択的シングル"になってもいいかもね!」
夏来:「"選択的シングル"……」
"選択的シングル"ーーーーーーーーーーーーフリー判定を受けた人が、縁結び課に申請してなれる、子持ちシングルのこと。
誰でもなれるわけではないけど、申請すれば、面接の結果次第ではチャンスはあるかもしれない。
夏来:「……まぁ、子供は好きなので、それもアリではあるけど、親に迷惑掛からないか心配で。」
朝倉母:「なんだ、そんなこと。」
七音の母親はそう言うと、こう続けた。
朝倉母:「夏来くんの決めたことなら、きっと全力で応援してくれるわよ。……それにご両親、夏来くんがフリーだから、夏来くんの子供を抱くの諦めてるかもしれないけど、子供が欲しいって言ったら喜んでくれると思うわ」
日向母:「そうね。ご両親、きっと待ってると思うわ」
夏来:「………考えてみます。」
日向:「もし、子供が欲しいってなって選択的シングルになったら、将来は私たちの子供と遊ばせてあげようね!」
七音:「!ううううん!そそそそそだね!」
夏来:「あはっ、テンパってる」
七音の反応に笑って、和やかなムードでおしゃべりをしてから、ケーキを頂いて夏来は朝倉家を後にした。
そして電車に乗り込んでから、夏来はふと考える。
夏来:「子供、か……」
今の仕事にも慣れて、趣味も充実して、柊羽が結婚して、これから舞桜も結婚するだろう。
甥や姪が出来たら、その子たちをうんっと可愛がって……。
そんな人生でも悪くないと思っていた………思っていたが。
『夏来くんが決めたことなら、きっと全力で応援してくれるわよ。』
七音の母親の言葉が脳内でリピートされてゆく。
そんなことを考えていたら、最寄り駅を逃してしまい、夏来は久しぶりに1人でアニメートへ行くことにした。
夏来が自身の将来を定めるのは、もう少し先のことになる。
------------To be Continued...