※登場人物が多くて混乱するかもしれません。
※小説と題してますが、長編の脚本と思って読んだ方が良いかもしれません。
※下手な文章ですが、生暖かい目で見守ってくださると、幸いです。
story.26:『講堂にて』
佐伯柊羽の誕生日の翌日。
柊羽は婚約者の波野朝子と一緒に通っているT大学へ向かった。
お互い、最初の講義は別々だったので、一旦別れて授業を受けに行ってから、昼食時間に食堂で待ち合わせた。
今朝、柊羽の母・結衣が作ってくれた弁当を2人で食べてから、いよいよ今日の目的。楽しみだった歴史文学研究所の教授であるバーナビー・ロビンソンの講義の時間になった。
滅多にない講義ということもあり、講堂に来たら既に大勢の学生が集まっていた。
席の取り合いになるとまずいと思い、柊羽と朝子は慌てて後ろの、空いていた席を確保した。
本当は前の方で聞きたかったが、他の学生と言い争いになるのを避けた。
そしていよいよ、バーナビー・ロビンソンによる講義が始まった。
外国人であるバーナビーの視点から語られる日本史は、今まで習ってきた日本史の授業とは比べ物にならないくらい、奥が深くて面白かった。
ーーーーーーーーーーーーそして1時間はあっという間。バーナビーの講義は気が付いたら終わってしまった。
柊羽:「はぁ…」
朝子:「楽しかったね~!」
柊羽:「ねぇ?もっと聞いてたかったよ~」
柊羽と朝子がそう言っていると、前の方にいた学生が挙手しながらこう言った。
学生:「バーナビー教授!
質問です!私、縁結び制度でフリー判定を受けているんですけど!
将来、選択的シングルになりたいと思ってます!その上で、子供を持つことで心掛けていることは何ですか?」
学生にそう質問されたバーナビーが少し考えながら、マイク越しにこう口にした。
バニー:「……うーん、そうだね。
私は、皆さんが思っているほど、完璧な親ではないからねぇ……うーん?」
バーナビーは考えながら、手に持っていた資料を置いて語り始めた。
バニー:「皆さんも知ってるかと思いますが、私の子供は全員男の子です。
選択的シングルになることを決めた当時は、まさか6つ子の父親になるとは思わなかった……。
しかも産まれたら全員男の子……女の子よりも子育てが大変って噂を聞いていたからひーひーしてましたよ。」
バーナビーはそう語ると、思い出しながら言ってきた。
バニー:「でも、うちの子たちは優しい子に育ってくれた。
1人が泣き出しても他の5人が慰めてくれるような……。
小さかった頃は、好き嫌いしたり、食事に飽きちゃって食べ物で遊び出したり。外出すると、全員が別々の方向へ走って行ったり……それはそれは大変だったけど、その都度、怒鳴らずに言い聞かせて、理解を深めていきましたねぇ……」
バーナビーは懐かしそうにそう語ると、柊羽たち学生に向かってこう言った。
バニー:「きっと、皆さんの親と子育ての大変さは同じ……私の場合はその6倍だったけど……。
私は辛抱強く、どんなに忙しくても食事をする時は一緒って心掛けて、子供たちと話し合って来ました。
でも、子育ての仕方はそれぞれ違うので、自分に合った方法で、子供を傷付けないように、子育てが出来たらきっと、子供も自分自身も幸せになれると思いますよ。」
バーナビーがそう言ってマイクを置こうとすると、柊羽の隣にいた朝子が質問を投げ掛けた。
朝子:「質問です!バーナビー教授のお子さんは今、それぞれの別々の職業で活躍してますよね。
スケートとか、子供の頃から続けていないと今の活躍はなかったと思います。お金も掛かると思うし、芸能界とかも厳しい環境だと思うのに、子供たち全員を自由に好きなことをやらせることが出来たのはどうしてですか?」
バニー:「うーん…?」
バーナビーは少し考えてから、淡々とこう言った。
バニー:「正直に言います。
今まで子供たちに掛かってきたお金は私の親とか兄弟に借金をしたりしてました。」
ざわっと学生たちが驚きの声を上げた時、ふっと笑いながらバーナビーは言った。
バニー:「ふふっ。そうですよ、私はお金持ちではないので。
親や兄弟にお願いして、お金を借りて、子供たちの習い事や生活費の足しにしてました。
安定してきたのは最近。子供たちがそれぞれの場所で活躍出来るようになってからです。」
バーナビーはそう言ってから、誇らしげにこう続けた。
バニー:「自分が苦労をしてでも、母親がいない分、子供たちに我慢をさせたくなかったんです。
子供たちには好きな仕事を見付けて、楽しく生きてほしい……だから、子供たちがやりたい事、挑戦したい事、好きな事は惜しみませんでした。」
バーナビーはそう言ってから、笑いながらこう言った。
バニー:「でも最近は、子供たちも成長したからか、お金のことを気に掛けてくれます。
特に次男は、スケート選手は大会ではお金が貰えないので、積極的にアイスショーに出るようになりました。
他の5人も、私がした借金を自分たちが返すと言ってくれて、毎月アメリカに住む私の親と兄弟にお金を送ってます。……本当に、良い子たちに育ちました。」
バーナビーは穏やかな表情を浮かべながら、柊羽たち学生らを見ながらこう言った。
バニー:「最初はいっぺんに6人も育てるの不安でしたが、今は頑張ってきて良かったと思ってます。
子供たちに好きなことをやらせて……運が味方をしてくれたから上手くいってますが、ひょっとしたら全員が今の活躍はなかったかもしれません。」
バーナビーはこう言った。
バニー:「それでも、子供たちが前を向いて進んでくれると信じて、後悔はしなかったと思います。
私にとって、あの子たち全員が宝物ですから。
これからもあの子たちの幸せを見守っていきたいと思います。」
バーナビーがそう言うと、少しずつ拍手が起きた。
拍手が大きくなってゆくと、バーナビーは照れながら「ご清聴、ありがとうございました」と言って、マイクを教壇に置き、資料を持って講堂を後にした。
そんなバーナビーを見送ってから、学生たちが席を立ち始めた。
拍手を止めた柊羽が、朝子にこう言った。
柊羽:「……俺たちも、将来結婚して子供が出来たら、好きなことは全力で応援してあげたいね!」
柊羽がそう言うと、朝子は柊羽を見ながら大きく頷いた。
それから、人の流れが少なくなったタイミングで、この後、講義を入れていない柊羽と朝子は帰宅することにした。
自宅に帰る朝子を見送ってから、柊羽も自宅に帰ると、柊羽は結衣たちに授業内容を話した。
楽しそうに話す柊羽を見て、結衣と哲は嬉しそうに話を聞いていた。
ーーーーーーーーーーーーバーナビーの講義から1ヶ月後、長女・舞桜は幼なじみの三田凛、斉宮美留姫たちと共に4組で遊園地デートへ出掛けた。
遊園地デートでは、舞桜と志音が久しぶりに2人で話すことになるのだが、それはまた、次の物語でーーーーーーーーーーーー。
------------To be Continued...