起源
弓をもつ愛欲の神カーマ(マーラ) カーマ とは修行中のシヴァ神に誘惑の矢を放って焼き殺された愛の神である。カーマ神は別名をマーラ (魔羅)ともいい、ブッダを誘惑している。マーラには、ラーガーという娘もいる。
由来・経典
金剛頂経 類に属する漢訳密教経典の金剛峯楼閣一切瑜伽瑜祇経 愛染王品第五に由来し、息災・増益・敬愛・降伏のご利益をもって説かれ、「能滅無量罪 能生無量福」とも説かれている。また、同経典で「三世三界中 一切無能越 此名金剛王 頂中最勝名 金剛薩埵定 一切諸佛母」とも讃えられ、これに基づいて金剛界で最高の明王と解釈される場合がある。
像容と信仰
衆生 が仏法を信じない原因の一つに「煩悩 ・愛欲により浮世のかりそめの楽に心惹かれている」ことがあるが、愛染明王は「煩悩と愛欲は人間の本能でありこれを断ずることは出来ない、むしろこの本能そのものを向上心に変換して仏道を歩ませる」とする功徳を持っている。
愛染明王は一面六臂で他の明王と同じく忿怒相であり、頭にはどのような苦難にも挫折しない強さを象徴する獅子の冠をかぶり、叡知を収めた宝瓶の上に咲いた蓮 の華の上に結跏趺坐で座るという、大変特徴ある姿をしている。
もともと愛を表現した仏であるためその身色は真紅であり、後背に日輪を背負って表現されることが多い。 また天に向かって弓を引く容姿で描かれた姿(高野山 に伝えられる「天弓愛染明王像」等)や、双頭など異形の容姿で描かれた絵図も現存する。
愛染明王信仰はその名が示すとおり「恋愛・縁結び・家庭円満」などをつかさどる仏として古くから行われており、また「愛染=藍染」と解釈し、染物・織物職人の守護神としても信仰されている。さらに愛欲を否定しないことから、古くは遊女 、現在では水商売 の女性の信仰対象にもなっている。
日蓮 系各派の本尊 (曼荼羅 )にも不動明王と相対して愛染明王が書かれているが、空海によって伝えられた密教 の尊格であることから日蓮以来代々梵字 で書かれている。なお日蓮の曼荼羅における不動明王は生死即涅槃 を表し、これに対し愛染明王は煩悩即菩提 を表しているとされる。
