side仁王
俺は今日が来なければいいと願っとった。
何も進まんければ、何も変わらんと考えとったきに。
しかし、今日は何知らぬ顔で来よった。俺は重い足で柳生の家に行った。
柳生の家に行ったのは、柳生に会うためではない。
柳生は俺が後をつけていることに気づかず、目的地に真っ直ぐ向かう。
柳生が誰かに会うことは知っとったが、誰かと特定は出来ん。
公園を見れば、四天宝寺の金色がいた。
(あいつに相談しよったんか…)
全国大会後、柳生はメールをする回数が増えておった。
そして、あいつを見つめる回数も。
全部見とったきに、全部知っとった。本当は聞きたかった。
誰とメールしてるんじゃ?
内容はなんぜよ
誰が好きなん?
友人なら聞けとったんじゃろか。生憎、俺は友人止まりは望んでいない。友人の線を超えたから聞けんもんもある。残酷すぎる。
柳生が電柱にぶつかったら、柳生の恋は冷めるかもと思ってしまった。
そんなことはなかったが。
「考え事をしていた私が悪いんですし」
「考え事って?」
「え、そ、それは…勉強や進路のことですよ」
俺は答えをどこかで知っていた。本当のことは言ってくれんと。
真田について考えとったんじゃろ?
おまんの、視線の向こうには真田しかおらん。俺は友人の線を越えとらん。
今日も君に何も聞けなかった。
明日も聞けない。
だって、残酷な答えしか用意されてないから。
