※信仰のさんぽ道2より抜粋

・常不軽菩薩(じょうふきょうぼさつ)

法華経二十八品の内、第二十番目に説かれる「常不軽菩薩品」には、釈尊の本生譚(ほんじょうたん)が説かれています。

 

そこには、常不軽菩薩がいつも行っていた「礼拝(らいはい)の行」が説かれています。

 

遠い昔、「釈尊」が「不軽菩薩」という名で呼ばれていた頃、

いまだ悟りを得ていない多くの僧俗(そうぞく)が「自分は悟った」と自慢の心を起こしていました。

 

一方、「不軽菩薩」は、そのような僧俗に出会うと常に相手を敬(うやま)いながら、

「あなたは未来において必ず成仏します」、

と相手の仏性(ぶっしょう)に礼拝しました。

 

それに対して増上慢(ぞうじょうまん)の人たちは、

「俺たちが未来に成仏するなどと偉そうなことを言うが、お前はいったい何様のつもりだ。

お前の偽(いつわ)りの証明などいらん」

 

と怒りの心を起して「不軽菩薩」に悪口を言ったり、杖で殴ったり、石を投げたりしました。

 

そのようなことをされても「不軽菩薩」は、殴り返したり、恨み言などは一切言わず、

そこから離れては、また遠くから、

「私は、あなた方を軽んじません。

なぜならあなた方は、皆、仏に成れる種(たね)をもっていて、かならず成仏するのですから」

 

といつも相手に対して礼拝していました。

 

このように、どんなに雨・風が降ろうが、常に退(たい)することなく修行を続けていました。

 

やがて、「不軽菩薩」の寿命も尽きようとしていた時、

虚空(こくう)から「法華経」の教えが聞こえてきて、

 

その教えの内容を理解した瞬間、

「不軽菩薩」の「六根(ろっこん)(眼)(耳)(鼻)(舌)(身)(意)」が清らかになりました。

 

そして、また、「不軽菩薩」の寿命までもが、さらに増えました。

そのために「不軽菩薩」は、多くの人に向かって「法華経」の教えを説くことが出来ました。

 

その結果、それまで「不軽菩薩」に対して悪口を言ったり、暴力を振るった人たちも皆、

「不軽菩薩」の言葉を信じるようになり、心身ともに従(したが)ったのでした。

 

「不軽菩薩」をののしり、そしった者たちは、長い間、地獄に堕ちたけれども、その罪をつぐなったあと、

再び人間としてこの世に生まれて、「不軽菩薩」の教えに従って仏になることが出来たのでした。