成年後見人のしごとに試行錯誤している日々。
平田オリザさんと藻谷浩介さんの『経済成長なき幸福国家論 下り坂ニッポンの生き方』という本を読んで、介護と演劇のことも書いてあり、このテーマが気になっていました。
そのような中、「老いと介護 演劇の力~介護と演劇は相性がいい?!~」の市民講座&ワークショップを見つけて行ってきました。講師は、OiBokkeshiの菅原直樹さん。
平田オリザさんが主宰する青年団で俳優をされていたそうです。OiBokkeshiや講師のプロフィールの詳細はホームページをご覧ください。
学びのシェアをします。
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・老い、呆け、死はマイナスイメージだが、向き合うことでより良く生きようという気持ちになる
・劇動の人生が詰まっている老人ホーム。お年寄りほどいい俳優はいない。腰曲がったおばあさんがゆっくりと歩く。これだけで個性的俳優。
・人は年をとると個性が煮詰まる。真面目な人はより真面目に。スケベな人はよりスケベに。
・介護者は俳優になったほうがよい。
・介護職は想像力を試される。やりがいがある。
・岡田忠雄(93)さんとの出会い
徘徊演劇をした。外の音がBGMとなる。「よみちにひはくれない」
・認知症の心理・行動症状BPSDが問題行動の原因となる
・その人の個性を知ることで、見え方が変わる
・子どもから高齢者まで、役割があると人は輝きだす。みんな役割を求めている。老いることで役割が奪われていく。介護職本人に役割をみつけてあげることが大切。介護職は、演出家のようでクリエイティブな仕事だ。俳優は、いい演出家に出会うと輝きだす。生きていくのが嫌と思っていた老人、障がい者がまた頑張ろうと思えるように、介護職員も頑張ろう。
・岡田さんは、実生活ではできないことが増えていくのに、舞台の上ではできることが増えていく。演じたい気持ちが強いから。
・認知症の人の言動を正すよりも、言動を受け入れる。
・認知症の中核症状(記憶障害、見当識など)の根本治療は難しい。しかし、それを囲んでいる認知症の心理・行動症状BPSD(徘徊、妄想、攻撃的言動など)は、アプローチ次第で直すことができる。
・言動の奥を汲みとる。
例えば、老人ホームで、
*傘をもって掃除している人に・・・「いつもありがとうございます。キレイになりました。新しいほうきを持ってきたのでつかってください」
*足がおぼつかない人が他の入居者のトイレ介助をしようとしている・・・「お疲れ様です。ぼく、休憩が終わったので代わります。休憩どうぞ~」
・自分の都合と相手の都合がかみ合わないときは、カチンコを鳴らして気持ちを切り替えよう
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ワークショップの前半は、上記内容を講義形式で聞きました。介護も子育ても演劇やクリエイティブさをもつとかなり楽になると私は知っています。
しかし、高齢者を目の前にすると、特に、攻撃性の強い高齢者を目の当たりにすると、自分のクリエイティブさが瞬時に欠落し、BPSDに真っ向勝負して撃沈してしまいます。
講義を聞いて、「お年寄りほどいい俳優はいない」という言葉が心に沁みました。一人一人の立ち振る舞いにはこれまでの人生が如実に滲み出ており、この俳優を輝かすためには・・・という視点を持とうと決意を新たにしました。福祉の専門家ではなく演出家として関わってみます。
ワークショップ後半は、体を使って、プチ演技もしながら、高齢者役になりました。変な質問をしたときに否定/肯定されてときの気持ちも体感しました。
また、実際に、自分の人生で一番思い出深いエピソードや人物を題材にしたミニ脚本をつくり、グループメンバーで寸劇をしました。演じることは少し恥ずかしかったけど、とても楽しかったです。自分ではない人になるって、違う世界にひょいっと行けて、ストレス発散にもなるなぁと。
そして、「認知症の人は、自分が一番輝いていた時代に戻ることが多い」と女優 原田美枝子さんが言っていましたが、このワークショップを改めて振り返ると大納得でした。
実際に自分の人生の一番思い出深いシーンを思い返したり、他のグループの方の話や寸劇を通して、感情がとても揺さぶられました。と同時に、我が人生の思い出を受け入れてもらえ、大切にされて、対応してもらったら、心が落ち着くことも痛感しました。
どんな年齢の人でも、その人の価値観や存在を受け入れることをは大切だけれども、年輪をたくさん刻んできた高齢者は尚更で、今まで以上に名俳優たちを敬って接していこうと思いました。
OiBokkeshiの演劇も、
女優 原田美枝子さんが認知症の母のために制作したドキュメンタリー映画「女優 原田ヒサ子」も見てみたいです。