桜の樹が空広々と

花びらで覆いつくし
鳥たちの囀りを
暖かく包み始める。

人は皆、手足を
存分に伸ばしながら
樹と空を交互に見上げ
澄んだ空気を吸い込む。

花びらが美しく
唄や言霊を醸し出し
新しく生まれ変わった
大いなる喜びを感じさせる。

このままずっと
平和な日々が続けば
傷つけ合い一つも
無くて済むと思う。

桜の花々が緩々と
母のような優しさで
私たちを持て成し
さり気に愛を捧げた。

(緩々→かんかん)
チクタクの音を
耳にするとつい
歩幅が縮んで
焦り始めてしまう。
ギクシャクして
前後左右が
分からなくなり
見失うばかりに。
チクタクは
悪戯にのろまを
置いてけぼりにし
弾むように嘲笑う。
ギクシャクは
いつか怒りを奮わせ
あちこちに
当たり始める。
いっそ
チクタクも
ギクシャクも
書き消して
何もない空間へ
飛んでいきたい。
何にも縛られず
自由気ままで
のんびりしていて
それだけなのに
とても愛くるしく
恋しさも思わせる。
罪にばかり
気を取られていた
そんな中でも
丸い瞳で見つめ
静かに慰めてくれる。
もしも同じ猫なら
何も言わずに
寄り添い始めて
小さな体で暖めたい。
そして、本当の自由を
やさしく語りたい。