(横浜市イギリス館。目の前にバラ園、その先に港の見える丘公園。オサレに元町ショッピングした先で登山すると最初に出会う洋館です。)
今日は久々に次の項目へ歩を進めてみましょう。
今日のテーマは「不動産所得に係る損益通算の特例」です。
普段あまりお目にかかることのない特例ですが、
投資初年度、また、経営が赤字に傾き、ヤバくなるとお目にかかるものです。
初期は仕方ありませんが、中途でこれと出会うことは避けたいですね。
では、どういうものなのか、以下に詳述してみます。
なお、この稿では「不動産経営」と「不動産所得」を分けずに
「不動産所得」に一本化して書いていますが、
これは難解さをできるだけ避けるためだと考えて下さい。
「不動産経営」は現実のお話し、「不動産所得」は税金を計算する上での区分、
本来なら別々のものだと考えて下さい。
1.不動産所得でも赤字になることはあるんです。
不動産所得は常に黒字でできるかというと、
必ずしもそうは行きません。
皆さんは、どのような場合に
賃貸経営が赤字になると思いますか?
①入居率の減少に伴う赤字
最もポピュラーなのは、入居率の減少に伴うもの。
家賃収入が減少したとしても、通常経費面の減少が連動することはありません。
経営の生命線である家賃が減る、そして経費は殆ど減らない…
非常に厳しい局面を迎えると、必然的に赤字転落します。
②投資初期に発生する赤字
次は皆さんも投資を始めた際のお話し。
当初の1年目、場合によっては2年目まで赤字になると思われます。
その理由は何でしょうか。
当初の1年目は賃貸期間が短い(=購入後の家賃収入しかない)ことと併せ、
取得に伴う諸経費の支払いが嵩むため、赤字が発生しやすくなります。
2年目は、不動産取得税の支払が待ち構えていますので、
この支払のために赤字となる可能性が高まります。
なお、不動産取得税は概ね取得後半年以内に支払いますので、
イベント発生としては経営1年目となることもあります。
③居住系以外の物件で発生する赤字
最後は、例えば都心部以外での駐車場経営などで発生するもの。
駐車場は単価が低く、土地を立体的に使えず、
かつ固定資産税等の軽減措置もなし。
経営が、低収入率かつ高経費率で行われますので、
黒字トントンということがわりかし多いと推測します。
1.赤字の不動産所得は通算できるのが原則
ここから税金のお話し。
不動産所得に赤字が生じた場合に、これ一本しか所得がない場合には、
その年における救済措置はありません。
後年度の救済措置である「純損失の繰越控除」というものが存在していますが、
これは後日詳述します。
逆に、あなたがサラリーマンで給与所得がある場合や、個人事業主で事業所得がある場合、
また既にアフィリエイトなどの副収入による雑所得がある場合で、これらの所得が黒字であるときは、不動産所得の赤字をこれらの黒字で潰すことができます。
これを税務上「損益通算」と云います。
ただ、残念なことに、株の投資(譲渡益)やFXの利益、
他の物件を譲渡したことによる譲渡所得とは「損益通算」できないこととされていますので
注意が必要です。
では、どこまでその対象となるのか、
数字を入れて確認してみましょう。
1.損益通算の例示
以下に【例示】を並べ、損益通算の概念を確認します。
【例示1】不動産所得の赤字が200万円、給与所得が500万円だった場合
→この場合には、損益通算によって△200万円+500万円=300万円となり、
給与所得を300万円まで圧縮し、所得税等の計算を行います。
なお、「総所得金額」とは、税金計算の過程で給与所得と不動産所得を合算しますが、
その合算した数値を指すものだと考えて下さい。
【例示2】不動産所得の赤字が600万円、給与所得が400万円だった場合
→この場合には、損益通算によって△600万円+400万円<0となり、
給与所得の金額がゼロで税金はなし、残りの△200万円は一定条件を満たすと翌年へ
繰り越すことができる(純損失の繰越控除が適用される)ようになっています。
ただ、またまた残念なことがあるのですが、
この損益通算、ある一定条件を含んだ状態だと、
その条件を満たす範囲の赤字は切り捨てられ、
他の黒字の所得との「損益通算」ができなくなったり、
その範囲が圧縮されてしまうこともあるのです。
その規定を「不動産所得に係る損益通算の特例」と云います。
長くなりますので今日はここまでとし、続きは明日確認しましょう。
最後はいつも同じメッセージ。
「精神的自由」やら「経済的自由」なんて心地よい言葉に浮かれると、
デンジャラスな人生を送ることになるかも知れません。
焦りは禁物ね。
大丈夫。不動産は逃げませんから。
道は開ける 文庫版 756円 Amazon |
いわずと知れたカーネギーの著。
様々シリーズ化されており、読みやすいので是非どうぞ。
100年までは経っていないけど、なぜアメリカという国が栄え、発展したのか、
その一因がこれら先駆者の著書から読み取れると思います(感情的な好悪は別だよ)。
また、基本的なラインは今も昔も大して変わらないことも確認できるでしょう。
不動産投資も、思考と経験が結びついたら強力この上ありません。
自身を後押ししてくれる一冊としてどうぞ。