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前回の話

 

 



35歳、
ホームヘルパー2級を取得するため
(現在は介護職員初任者研修です)

障害者施設を辞め、
教育訓練給付制度というものを使って
学ぶことにした私の超短い学生生活。

ある日、
長女の卒業式だったから
休みの届を出し、

「明日は休むね〜みんな頑張れ〜」
なんて冗談まじりに言い、
仲間達と前日に別れたが・・・・・


長女の中学校の卒業式の日。
いつもと変わらない朝だった。

ちょっと違うのは、
長女の卒業式に休みを取った朝から相方がいて、
のんびり朝ごはんを食べていたことくらい。

私はいつも通り、ちょっぴり慌てて
でも、気持ちはバスに遅れることもないから
ほんの少しはゆっくりしてたのかな?

だけど、
いつもの時間に次女を保育園へ送り届け
クリーニングから返ってきたばかりの
スーツに身を包み

いつもよりも念入りにお化粧した。

学校までは歩いて5分。

3月とはいえ、コートなしではまだ寒い東北。
案の定、卒業式の会場の体育館は
底冷えのする寒さで、

始まるまでコートを脱がない保護者だらけ。

その中で煌々とオレンジ色を発する
体育館用の大きなストーブ。

昔よりは暖かいのだろうなぁと
思いながら、受付で渡された長女からの手紙に
目を落とす。

そこには小さな字でびっしりと
感謝の言葉が綴られていた。

もったいなくて、
いや、きちんと読んだら

周囲のお母さんたちのように
式の始まる前にメイクが涙で崩れてしまうから

流し読みだけして封筒に戻した。

式は定型分のように
滞りなく進み、

自分の子供のものだから、
とてもとても良い式だった。


まだ、進学先も決まっていない子供たちが
大半で、うちの長女もそれにならい、
まだ1ヶ月後にはどこにいるのかすら
見当がつかないままだった。


それでも、
これから先の未来へ向けて
15歳の子供たちは希望の顔に満ちていたように思う。


寒さに震えながら、
同級生との別れを惜しむ長女を置いて
相方と口々に「寒いね」と言いつつ
早足で帰路に着く。

ばっちり晴れてるわけでもなく
雨や雪が降ってるわけでもなく

3月なのに冬の空。

先に家に着いた私と相方は
とりあえず着替えて長女を待つ。

時計はお昼を回っていた。


数分待って、長女が玄関の扉を勢いよく開けて
「ただいま」と帰ってきた。

お祝いだから、
お昼は外に何かを食べに行こうと
相方が言い、長女と顔を見合わせて
カレーと、答えが一致。


車で約20分。

卒業式での話、先生、同級生の話
長女の話が尽きることはない車中。

そして何度も通った外国人の作るカレー。
本場のカレー。

店内には数名のお客さんがいた。

どうしても冒険ができず、
いつも似たようなカレーを頼む
私たち3人。

いつもの味、いつもの外国人の店員さん。
美味しいカレーとナンと。。。

その時、すでに2時を回っていたから
店内にいたお客さんはどんどん食べ終えて
帰っていった。


私たちもペチャクチャと話しながら
ゆっくりと食べ終えるか、

と、思ったその時だった。

なんか、ゆれてる???
急に食べてめまいかな?
私調子悪いんだろうか?


そんなふうに思っていたら
長女が「揺れてるゆれてるよ」

そう言った途端、

今まで体験したこともない

ドキッとする揺れに変わり

カレー屋のシャンデリアが
ブンブン右に左にせわしなく揺れ動いた。


咄嗟に
食べていたテーブルの下に潜る私たち。

長女はテーブルの足を握り泣いている。
思わずしがみつき、

激しい音と
体がいうこときかないくらいの揺れに
「止まってーー!!!」と叫んだ。

長かった。

いつ終わるのか、
このままずっと揺れたままなのか

死ぬのかな?って一瞬頭をよぎった。

喉が痛くなるほど、叫びまくったあと

徐々に揺れはおさまってきた。

今だ!と相方はレジに行き
レジ係の外国人へお金を払う。

外国人のシェフは出てこない。

このお店の人も怖かっただろうなって
後から思った。


急いで車に乗り込む。
車は無事。
お店の中は散乱してたけど
崩壊してるわけでもない。

カレー屋さんの向かいのマンションの下に
ガラスが散乱してたくらいで

道路もいつも通りだった。

ただ、信号だけが消えていた。

だけど、みんな慎重に運転していて
即、動いたってこともあって
渋滞もしていなかった。


車の中でラジオを聴いた。

「津波が来ます」何度も何度も
繰り返し繰り返し
同じ言葉だけが聞こえて来た。

幸いにも、海に面していない町に住んでいたから
どこか人ごとだと思っていて

本当に?大袈裟じゃない?
なんてその時は思っていたんだ。

時計は15時を指していた。


続く