先日の総務財政委員会で、堺市職員の「育児時間」について取り上げました。
「育児時間」とは、労働基準法第67条に、
「生後満1年に達しない生児を育てる女性は、第34条の休憩時間(※)のほか、1日2回各々少なくとも30分、その生児を育てるための時間を請求することができる」
と規定されているものです。
「第34条の休憩時間」とは、いわゆる昼休みなどの、すべての職員に与えられる休憩時間のことで、これとは別に、「①1歳未満の生児を育てる」「②女性は」「③1日2回各30分」休憩を取ることできるのが「育児時間」です。
おそらくこの規定は、「祖父母に子どもの面倒を見てもらって仕事をしている母親が、母乳をあげるために一時的に帰宅する」というようなシチュエーションを想定し、できたものだと推測されます。ただ、現代社会においては、保育所で熱が出た時のお迎えなど、子育てに関わる多様な使われ方がなされているはずです。
この労働基準法が定める「育児時間」に対し、堺市の規定では、
職員が1歳に満たない子を育児する場合、1日2回、合計90分以内で特別休暇を取得できる。
とされています。
労働基準法と比較しますと、
①「1歳未満の育児」は同じ。
②「女性が」ではなく、「職員が」。よって、男性も含む。
③「1日2回各30分」つまり「合計60分」のところ、堺は「2回合計90分」。
ということで、②③については、堺市は、労働基準法よりも手厚い規定にしています。これは、「子育てのまち堺」として評価していいでしょう。
しかし!!!!
堺市の規定には、続いて
「なお、当該職員の配偶者が育児休業をしている場合や在宅で育児することができるような場合には対象外」
とあるのです。
堺市では、例えば配偶者である男性(市職員とは限らない)が育休を取っていたり、休みを取って在宅で育児したりしている際には、女性職員は育児時間を取れないのです。
何やら至極当然のようにも聞こえるのですが、そうではありません。
労働基準法には、「1歳未満の生児を育てる女性は1日2回各30分休憩を取ることできる」とあるだけで、そこには、何も制限や条件を課していません。
労働基準法が認めていることに、勝手に制限を課している堺市のこの規定は、労働基準法違反なのです。
「いやいや、それくらいの制約は当然でしょう。一方が育休しているなら、そのような休憩は不要でしょ」と思う方もいると思います。
複数の子どもを育児していたり、障がいがあったり、親の介護もしていたり、本人が病気を患っていたり・・・と、子育ての状況は様々ですから、私はこのような制約が妥当だとは思いませんし、、、
何よりこの件は、この制約が妥当かどうかの問題ではないのです。
労働基準法は、最低限の労働条件を定めたものであり、それを下回る規定を作ってはいけません。(当たり前です!)
今回の「育児時間」の件は、詳細は割愛しますが、経緯を遡れば、悪意のあるものではなさそうです。ただ、法令を作り、社会にそれを守るよう働きかける立場にある行政が、その法令に反していたというのは、悪意がなくとも、由々しき事態です。
労働基準法は厳しすぎると感じている経営者の方は、少なからずいらっしゃると思いますが、行政がこんなことをしていては、経営者の皆さんに対して「ちゃんと守って」と言えなくなってしまいます。
総務財政委員会にて、私は速やかに改正を求め、市当局はそれに応じ、作業を進めているところです。
それにしても気になったのは、職員の法令違反に対する「感度」です。
この件は、とある方が気づき、(本庁の人事課ではない)ある部署に連絡をしたのが始まりでした。それが5月のことです。
その後、何度かやり取りがあったものの、結局その部署から人事課に連絡があったのは、9月になってからだったようです。
「労働基準法違反」という指摘をされながら、この対応では、呆れるほかありません。
これまで様々な市の不祥事の際に、度々、報告・連絡のスピードが遅いことが指摘されてきました。
今回の件を不祥事だとは言いませんが、少なくとも、行政に係る者として、「法令違反」との指摘に対して、もっともっと敏感になり、関係部局や上司にすぐに報告・連絡する。これを全職員に徹底してもらわなければなりません。
そうした職員の教育、意識向上も、合わせて人事課に要求したところです。
ふちがみ猛志
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