指定都市市長会シンポジウムin堺で、片山善博元総務大臣の基調講演を聴きました。
その中で、終盤、TPPの話が出てきて、非常に興味深かったので、ここに紹介します。
TPPと言えば、国政、それも外交の話。
それがなぜ、地方自治体の催しで話題に???
一瞬そう思った聴講者は多かったことだと思います。
なぜ、そんな話に及んだのか?
それは、「TPPが自治権を制約する恐れがあるから」です。
TPPは基本的に自由競争を是とする貿易協定で、それを阻害する加盟国独自の規制によって、企業が不利益を被った場合に、その国や自治体に賠償を求めて訴えを起こすことができるとされる、ISD条項が盛り込まれています。
では、それに該当する規制とはどのようなものなのか。
それがいまひとつわかっていません。
ですから、まだ想像でしかありませんが、『これらに該当する「かもしれない」という規制が、自治体にもたくさんあり、その点については、TPPを締結する前に確認していく必要があるであろう』というのが、片山さんのメッセージでした。
どんな規制かと言えば、、、、
例えば、日本のどこの自治体でもやっている地産地消政策。
公共事業で、当たり前のように地元企業が優遇されています。税の涵養、地元企業の育成という観点から、極めて重要なものです(優遇の程度は、自治体による)。しかしこれは、地元以外、ましてや海外の企業から見れば、「不公正」ととられかねません。
あるいは、保健衛生に関わるもの。これも自治体の判断で、いろんな届け出を求めたり、自治体の裁量がかなり認められていますが、海外企業には、どう映るでしょうか?
金融もそうです。
自治体は地元金融機関を「指定金融機関」にしているはずです。海外の金融機関がそこに名乗りを上げた時、果たしてどうなるでしょうか。
こうした規制を理由に、海外企業が自治体に賠償請求をする、なんてこともある「かもしれない」のです。
これらの不安を抱えたまま、国会でTPPに関する議論がどうなっているかと言えば、「強行採決をするか否か」、「大臣の発言が不適切ではないか」、そんな話しか聞こえてきません。
もう少し、中身についての議論を徹底してもらいたいものですし、それは「農業か、工業か」、「自由貿易か、保護貿易か」などと言う大きな話だけでなく、私たちの生活に実に身近な、自治体の運営にまで関わってきかねない話も含まれるべきなのです。
関わるか、関わらないかは、まだわかりません。だから、議論が必要です。
念のために書いておきますと、片山さんは「TPPに反対」と言っているわけではありません。「危惧があり、そこをまず明らかにすべき」との主張です。
わからないからこそ、批准してしまう前に、徹底的にそこを明らかにしてもらいたいのです。
その点は、私も強く共感しています。
TPPの問題は、国会の、議会としてのありようをも問うているようです。
ふちがみ猛志
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