1月15日の「耕助のブログ」で興味深い記事があったのでご紹介したい。「米国と中国の対照的な戦略」(Contrasting Strategies of the US and China)というものだ。著者はRoger Harrisという人で、CounterPunchという雑誌に掲載された記事になる。

 Roger HarrisもCounterPunchも私は全く知らない。また、私が少しネットを検索するくらいでは満足な情報を得られない。なんでも、CounterPunchはワシントンで発行されている左翼系雑誌であり、Roger Harrisは32年の歴史を持つ反帝国主義人権団体「タスクフォース・オン・ジ・アメリカズ」(Task Force on the Americas)の役員を務めているのだそうだ。

 現在の日本には左翼がいなくなってしまったようで、自民党はもはや極右過激派政党といっていい。何しろ、増税してまで軍備を増強するというのだから。法など意に介せず、平気で犯罪によって裏金作りをするのだから。
破防法に基づく調査対象団体に指定してもいいくらいだ。そして、日本では共産党を含めて全政党が今や右寄りではないかと思う。あの破防法の調査対象団体である共産党ですら連立を組みたいと言い出すくらいなのだから。

 ひきこもりの老人である私はしばしば反政府的なことを書いているけれども、まるで自分が反政府主義者か共産主義者にでもなってしまったような気がする。まだ特高警察につけ狙われないだけ、大東亜戦争中よりもマシかもしれないけれど。

 私は自分が政治思想も何もない一介の庶民のつもりでいたけれども、ブログを書くようになって2年ほどしてから、新型コロナ用ワクチンで日本政府が自国民を大量に殺し始めたのを見て、「いくら何でもそれはないでしょう」と黙っていられなくなった。しかも、これに対してほとんどの国会議員、マスメディア、医者などはだんまりを決め込んでいるのだから、恐ろしい世の中になったものだ。共産党でさえ何も言わない。どうなっているのだろうか。

 そんなわけで、本来の私は「左翼系雑誌」とか、「人権団体」などと聞くと腰が引ける方なのだけれど、今の狂った右翼だらけの世の中ではそれもいいかと思って取り上げることにした。まあ、昔の社会党が何か言っているくらいのつもりでいいのかな。

 さて、「米国と中国の対照的な戦略」(Contrasting Strategies of the US and China)は昨年12月27日の記事になる。以下要約して説明しよう。

 

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表題の下には、
習近平:「一方が他方を無理に改造するというのは非現実的だ。地球という惑星は、2つの国が成功するのに十分な大きさがある」
ジョー・バイデン:「我々は、我々の未来を、我々のビジョンを共有しない人々の気まぐれに委ねるつもりはない」
と書かれている。

(これが紹介する記事全体を端的に表したものになる。中国は従前どおり「棲み分けようじゃないか」と多極化を主張し、バイデンは「仲間以外は認めない」とアメリカの一極覇権を主張している。)

 駐中国アメリカ大使を務めているニコラス・バーンズによると、米国のスタンスは「今後数十年間における戦略的競争・・・地域の力だけでなく、世界の力を争う」というものであり、米国空軍の高官であるマイク・ミニハン将軍は「早ければ2025年にも戦争が起こる」と予測している。

 これに対して北京の見解は、「中国と米国がどのように仲良くやっていくかが、人類の未来を決める」というものになる。相互尊重、友好、平和共存、ウィン・ウィンの両国関係を中国は主張している。

 一方、バイデンの主張は、ゼロサム思考であり、中国が儲かるとその分アメリカは損をするというもので、「ウィン・ウィン」の関係を基本とする中国のビジョンとは相容れない。

 昨年11月15日にサンフランシスコでAPEC首脳会議が行われたが、その後の記者会見でバイデンは、「いいか、彼は独裁者だ。私たちとはまったく異なる政治形態に基づく共産主義の国を運営しているという意味で。」と述べて、ネオコンのアントニー・ブリンケン米国務長官の顔をしかめさせた。これに対して習近平はその日のうちに「一方が他方を変えることは非現実的だ」と冷静に述べた。

 フォーチュン誌も、習近平がバイデンの「Winner-take-all(勝者総取り)」の考え方とは異なるビジョンを提示したことを認めている。

 中国は、約400の米軍基地で取り囲まれている。インド、オーストラリア、日本、イギリス、ニュージーランド、カナダ、韓国が軍事同盟や、安全保障協定などを結んでいる。半官半民のシンクタンクであるランド・コーポレーションが米陸軍から委託された研究のタイトルは「中国との戦争:考えられないことを考える」だった。

 そのランドによれば、中国との戦争は米国が優位に立つということだが、それは他の国が戦争に参加せず、核戦争に発展しなければという条件付きになる。また、軍事戦略家たちは、紛争が長引くにつれて封じ込めの可能性は薄くなり、予期せぬ結果が生じることや、先制攻撃が有利な結果をもたらすことを指摘している。

 バイデンは公式の国家安全保障戦略の中で、「私の政権はこの決定的な10年を利用して、地政学的な競争相手、とくに中国を出し抜くだろう」と述べた。そして「米国のリーダーシップ」、つまり米国の支配を「世界中に」押し付けると約束した。米国は現在、兵器の販売、軍事費、外国の軍事基地の数で世界をリードしている。

 現実に起きていることを無視してバイデンは、「我々の経済はダイナミックだ」と締めくくった。しかし、スタティスタ(ドイツの統計調査会社)は2030年までに中国が米国を抜いて世界最大の経済大国になると予測している。中国の「一帯一路構想(BRI)」は150カ国以上に投資している世界的なインフラ開発プログラムであり、バイデンは「中国は利益ために世界の土俵を傾けている」として恐れている。

 植民地との関係に基づいて富を得ている欧米とは異なり、中国は帝国戦争に頼ることなく8億人を貧困から救い上げた。しかし習近平の提唱する「中国の特色ある社会主義」に導かれている中国は本当に社会主義なのだろうか?

 ある者にとっては社会主義は中国には存在していないし、それどころか過去にもなかった。彼らにとって、社会主義はまだ実現していない理想である。一方で中国はすでに社会主義を達成しているとみなす者がいる。その中間には、中国が社会主義と資本主義の間の移行期にあると見るさまざまな意見がある。移行が進んでいるという人もいれば、後退しているという人もいる。中国の指導者の見解は、社会主義の完全な実現に必要な物質的条件は、まだ発展途上であるというものである。

 中国の「世界と協調しようとする計画」が、アメリカの「相手が儲かれば自分は損をする」というゼロサム思想と対立していることは明らかである。中国は少なくとも社会主義の未来を排除しないパラダイムを提示している。重要なのは、この地政学的な争いの中で、中国、ひいてはグローバル・サウスが、米国の帝国的覇権主義に対抗する空間を提示していることだ。

 中国人は、ヤンキーの「平和を築かず戦争を起こす」という姿勢に気付いているようだが、4000年の歴史を持つ中国文明は、「ウィン・ウィン」の平和的発展の合理性が勝つと確信しているようだ。

 

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 以上である。う〜ん、面白いね。

 著者のRoger Harrisはアメリカを帝国的覇権主義、中国を社会主義を目指す国として把握し、論を進めている。アメリカが帝国的覇権主義であることは、私の中では異論がない。これまでアメリカが行ってきた数々の侵略戦争、残虐なジェノサイド、そこから暴利をむさぼる植民地主義は歴史を少しかじったことのある人ならうなずけるはずだ。

 現在も、ロシアはその標的にされ、私たちの国である日本も新型コロナ用ワクチン等で蹂躙されている。日本がいつまでたっても経済的に浮かび上がれないことも、実質植民地としてアメリカに搾取されているからだ。

 では中国はどうなのだろうか。Roger Harrisの言うように、社会主義を目指している国なのだろうか。私としては、そうではないと思う。現在中国を支配しているのは習近平と中国共産党だが、社会主義が目標ではないだろう。それはアメリカの目標が自由と民主主義ではないのと同じことだ。

 では何かというと、もっと伝統的な中国の支配体制を確立することであるように思う。私は中国史に関しても全く知識がなく、はっきりしたことはいえないのだが、中国はそれこそ4000年も昔から王朝が栄えては滅び、栄えては滅びしてきた国になる。

 そのような目で中国を見るならば、現在は中国共産党王朝の栄えている国であり、皇帝は習近平ということになる。これは政治的な主義主張やイデオロギーといったものとは直接関係がないだろう。中国は中国として4000年来続いてきた王朝制度を現在も続けているということに過ぎない。

 すごいものだと思う。魚に例えれば「シーラカンス」だ。昨日や今日ぽっと出の欧米とは訳が違う。世界遺産として、中国という国を丸ごと登録したいくらいだ。

 そうやって考えると、中国対アメリカの対立は、社会主義と帝国的覇権主義なのではなく、東洋対西洋の対立と考えた方がいいのかもしれない。少なくとも、今回取り上げた「米国と中国の対照的な戦略」というレポートを読む限りは、そのように受け止めても支障がないように思う。

 では、東洋対西洋の対立とは具体的にどのようなことを指すのだろうか。Roger Harrisのレポートから推測されるのは、東洋は分け与える文化であり、西洋は独り占めの文化であることだ。西洋は勝者が敗者を皆殺しにして、あるいは奴隷にして富を独り占めし、東洋は富を分配して共存を目指す。

 これは、東洋哲学と西洋哲学、黄色人種と欧米アングロサクソンの違いでもあって、国の体制やイデオロギーなどよりも、もっと人間の深層から派生しているものと考えた方がいいように思う。

 日本人は、このレポートを読む限り中国人に近い存在であり、東洋的でもある。現在の日本はアメリカのプロパガンダに騙されている日本人がほとんどだから、中国を毛嫌いしている人が多いけれど、侵略、皆殺し、富の独り占めをするアメリカよりも、中国の方がはるかに穏やかだ。それは日本の被害を考えても分かる。

 わずか250年ほど前に独立した遠く離れたアメリカ合衆国に、日本人は何人殺されただろうか。4000年も昔から存在し、すぐ隣にある大国中国に日本は何人殺されただろうか。その数の違いが、アメリカの残虐さと、中国との違いになると考えると分かりやすい。中国の方がずっと穏やかであり、東洋的な国なのだ。

 Roger Harrisは中国が相互尊重、友好、平和共存、ウィン・ウィンの関係を主張しているというが、これほど日本人になじみやすい考え方はない。一方、アメリカの拠って立つ「ゼロサム思考」はアングロサクソンの好む食うか食われるか、やるかやられるか、勝者総取りの考え方になる。平和よりも戦争優先であり、それこそがアメリカの歴史でもある。

 私は中国のファンでもなければ応援団でもない。しかし、中国とアメリカのどちらが日本にとってより脅威であるかといえば、危険なのはアメリカと考えざるを得ない。中国は日本に原爆を落として何十万人も殺すということをしていない。中国は日本人にワクチンを打って何十万人も殺すということをしていない。

 もちろん、中国と仲良くしていれば安全かといえばそうではない。中国は中国で気をつけなければならない国だ。うかうか甘い言葉に乗せられてしまうと、身ぐるみはがされてしまう。そのあたりは、長年中国と付き合ってきた日本人は肌感覚で理解しているのではないだろうか。しかし、これまでの経過から考えると、現在の日本は中国と付き合った方が、アメリカと付き合うよりもはるかに安全だ。どう考えても、何十万人も一度に殺されることはなさそうだ。

 戦後、日本政府・自民党はアメリカべったりの政策を採用したが、それは誤りだったとしかいいようがない。外交はどの国とも付かず離れず、その時々で協調できる部分だけ取り出して付き合うなど、冷静さや慎重さが必要になる。現在の日本は、なんでもかんでもアメリカ一辺倒になった。要するにアメリカ信者が増え過ぎたために、殺されるわ、ゆすられるわ、悲惨なことになっている。