以前もご紹介したことのある西鋭夫氏。私にとってはYouTubeで最近知ったばかりの全然馴染みのない人だけれども、考え方は私に近いところも多い(国防に対する考え方は私とはかなり違っているが)。伊藤貫氏も好きだけれども、西鋭夫氏の方が伊東貫氏よりは率直に、あけすけに話をしているように感じられる。こんなことをいうと失礼だけれども、B級グルメの美味しさとでもいえばいいかな。でも、実際のところ美味しいのはB級グルメであって、より血や肉になりそうな気もする。

 そんな西鋭夫氏のショート動画がピッタリ私の考えに重なるものだから、今回はそれをネタに書こうと思う。実は、当ブログの今月5日の記事『「天皇は神聖にして侵すべからず」のインチキ』で"薩長土肥のイモ侍"なんて書きながら、次は補足的意味合いからも「明治維新は英米とフランスが背後にいての戦いだった」と書かなくちゃなんて考えていた。

 すると、今月14日に西鋭夫氏のショート動画が公開された。「明治維新はイギリスのアジア戦略」というもので、わずか59秒なのですぐ見ることができる。ただし、ほんの序の口だけになる。動画の中で西鋭夫氏は「明治維新は全部イギリスのアジア戦略」「明治維新を皆さん神格化して、何か美しいものだと思って」「明治維新を起こすためのお金誰が出した」「維新の会なんかが作られまして、あれがどういう意味持ってるか絶対分かってない。分かってたら恥ずかしくてつけられない。」などと述べている。

 司馬遼太郎が悪さをした可能性が高いかな。司馬遼太郎は私の大好きな作家で、昭和期のことは比較的きちんと書いたようだけれども、明治期に関しては本当に小説(フィクション)で架空の話が多かったように思う。自民党やNHK好みとでもいえばいいだろうか。

 司馬遼太郎の明治期を舞台にした小説等を読むと、大変に気持ちがいい。何だか日本人が優秀であるかのような気持ちになれる。そしてそれは、学校教育や自民党の方針とも合致しているように思う。なぜなら、明治期を肯定的に描くことは、現政権を正当化することにつながるからだ。

 司馬遼太郎は小説家だから、フィクションが許される立場にあったと思うけれども、一般的に信じられている明治時代の話は嘘だらけであるように思う。その嘘だらけの話というのはどんなものかというと、幕末に黒船でやってきたアメリカを始めとする諸外国からの侵略を防ごうとして、天才的な志士たちが突如雨後の筍のように現れ、その目覚ましい活躍によって日本は植民地にされることなく、アジアで一番の先進国になったというものになる。今考えると、これは何かの悪い冗談かと思ってしまう。

 開国、大政奉還・王政復古、戊辰戦争、五箇条の御誓文、廃藩置県、西南戦争、文明開化、大日本帝国憲法制定、日清戦争、日露戦争などなど、こんなことを日本人(薩長土肥のイモ侍たち)ができたと思いますか? そんなわけないよね。例えば、五箇条の御誓文の最初の文章「廣ク會議ヲ興シ萬機公論ニ決スベシ」(広く会議を興し、万機公論に決すべし)を見ても一目瞭然。

 いまだに日本人は、この文章を理解することができていない。岸田総理を見てご覧なさい。できるだけ目立たないように、バレないように、陰に隠れてコソコソと自分のやりたいように決めているでしょ? 国会で政府と野党が堂々と論戦を行わないでしょ? もちろんマスコミも同様で真実を隠し、偏向報道しか流そうとしない。日本には「広く会議を興し、万機公論に決すべし」という文化が五箇条の御誓文後150年たった今でも根づいていないんだよね。

 五箇条のうち4条目は「舊來ノ陋習ヲ破リ天地ノ公道ニ基クべシ」(旧来の陋習を破り、天地の公道に基づくべし)となっている。つまり、「これまでの悪い風習を捨てて道理にあった方法で何事もやっていこう」ということになる。

 今これを読んで、思わず笑ってしまった。今の日本どうですか。政治家も、財界も、官僚も、学者も、専門家も、医者も、マスメディアも、それぞれが「今だけ、金だけ、自分だけ」。利権にしがみついて他人を蹴落とし、仲間内だけで甘い汁を吸おうと競い合っている。もちろん国民がどうなろうが知ったことではない。国民のことを考えるとすれば、どうやって騙して人気取りをするかくらい。

 

 それでは、明治維新のときにどうして五箇条の御誓文が発出されたのだろうか。決まっているよね、五箇条の御誓文はイギリス人が考えたのだと思うよ。日本人の発想ではない。おそらく当時のイギリス人には真面目なところもあって、日本をある程度本気でイギリス化しようとしていたのかもしれない。日本を植民地にするかどうかということよりも、まずは日本をイギリス化することに重点を置いていたような気がする。つまり、アジア版大英帝国を日本に作ろうとしたのかもしれない。

 考えてみれば、日韓併合後に日本が朝鮮に対して行った政策は、朝鮮を日本化するものだった。朝鮮人の国籍を日本にしてしまったくらいに。これは、明治維新当時のイギリスの政策を受け継いだように思える。イギリスが日本にしたことを、日本は朝鮮に対して同じようにしたと考えると分かりやすい。
 
 日清戦争、日露戦争も、全部イギリスの画策したこと。薩長土肥のイモ侍に、清やロシア相手に戦争を始めるだけの大胆さや、計画性などあるはずもない。あなたも日本人ならそのくらい分かるでしょう。

 日清戦争はともかく、日露戦争は大博打だったね。多分、イギリスも勝てるとは思っていなかったのではないだろうか。それなのに戦争をさせたのはアングロサクソン特有の冷酷さと考えていいのかな。彼らはお人好しではないからね。あくまで利益を追求する。明治維新を成立させてやった見返りを得る頃合い、収穫の時期と考えたのかもしれない。

 結果は形の上では勝利となったけれど、実質は勝っていない。勝ったのは日本海海戦だけ。そこをイギリスの外交力で勝ったことにしてもらった。どちらにしたところで、イギリスは大儲けだったのだけれども。

 そんな柳の下のドジョウ(二匹目)を狙ったのが今回のアメリカ。ウクライナを育ててロシアと戦わせ、日露戦争同様の莫大な利益を得ようとした。しかし、残念ながらアメリカにはイギリスのような賢さ(狡猾さ)はない。アメリカは野蛮人(Yankee)の国。腕っぷしは強いが脳内筋肉。それでは戦争に勝てない。

 そういう目で見ると、大東亜戦争後のGHQもイギリスの行った明治維新を真似したのだろうなあ。大日本帝国憲法を制定したのと同様に日本国憲法を制定した。権力を集中させすぎた天皇の存在をイギリス並みに落とした。その他、アメリカ流民主主義を持ち込み、日本をアメリカ化しようとした。

 しかし、やはりYankeeのすることは底が浅い。イギリスのように、日本人で大日本帝国憲法を作ったと思わせるような巧妙な策は取らなかった。それゆえに、アメリカのお仕着せ憲法だから改正しようという意見を生むことになった。いたずらに日本の反米感情を煽ることにもなった。

 イギリスという国はあまり無理はしない。しかしアメリカは無理を通すことに生きがいを感じるような、本当に野蛮人の国。それがここまで成功したのは、おそらく見えないところでイギリスの支配下にあったせいだろうと思う。ソ連が崩壊するくらいまでは、アメリカの国家戦略はイギリス人が考えていたに違いない。それがアメリカの大成功に繋がった。

 しかし、やはり単なる憶測になるけれども、ソ連崩壊後にアメリカはイギリス人を追い払ったのだろうなあ。そのため、アメリカの国家戦略は幼稚になる一方。単なる思いつきを、見通しもなく実行に移してしまう。つい最近の新型コロナ騒動も、ロシア・ウクライナ紛争も、緻密な計画や失敗したときの対応策がないまま始められてしまった。今や思考停止状態、無脳状態。

 私は以前から、ロシア・ウクライナ紛争は新型コロナ作戦の失敗を隠蔽するためではないかと疑っていたが、今回のイスラエル・ハマス武力衝突も、ロシア・ウクライナ紛争の失敗を隠蔽するためではないかと疑っている。いよいよ失敗をごまかせなくなってきたときに、新たな危機を作ることによって、人々の関心をそらせようとしていると考えられる。

 大東亜戦争時の大本営発表が似たようなもので、どこかの戦いで敗れると、そのことを正直に発表せずに「転進」という言葉を使った。当事者にとって見れば、国民に向かって"負けた"とは言いたくないものらしい。それまでさんざん見えを張って、格好をつけるための嘘をついているから、それがバレることが怖すぎる。アメリカも同じ心理なのだろうなあ。あ、今の日本政府もかな。

 明治維新や大東亜戦争に関しては、細かいことを知っている人が山のようにいる。私など誰かから「何を馬鹿なことを言っているのか。こういう事実があるのを知らないのか。」といわれれば、「すみません、知りません」と答えるしかない。

 しかし、往々にして細かいことを知っている人は大局的なものの見方ができない。「結局それはどういうこと?」という問いに対する答えを持っていないことが多い。「明治維新はイギリスの行ったこと」「日清戦争も日露戦争もイギリスの代理戦争を日本が行った(させられた)もの」「大東亜戦争の敗戦処理は、アメリカがイギリスの明治維新を真似したもの」「ロシア・ウクライナ紛争のモデルは日露戦争」「ロシア・ウクライナ紛争は新型コロナの失敗を隠蔽するため」「イスラエル・ハマス武力衝突は、ロシア・ウクライナ紛争の敗戦をごまかすため」などと、広い視野からの視点を持ち込むとまた違った景色が見えてくる。これらが正しい説であると固執したいのではない。仮説の一つとして検討してみるだけでも、得られるものがあると思う。