○今日はいつもと違ってアメリカのテレビドラマの話である。以前はよくアマゾンプライムビデオでアメリカのミステリードラマなどを見ていた。一番面白かったのは「CSI」で、私にとって新しかったと思う。今だってというか、今ならなおさらというか、陳腐化した日本のドラマなど足元にも及ばない。

○しかし、いくらアメリカとはいえ、「CSI」のような優れたドラマがそうそう現れるようなことはなく、最近はすっかり視聴をご無沙汰していた。それが、正月で世間が静かになったせいか、ドラマでも見たくなって何か面白いものはないかと探したところ、たまたま「メンタリスト(The Mentalist)」というミステリードラマに行き当たった。

○まだ3話しか見ていないので、その範囲での話になるがこれがなかなか面白い。放送されたのは2008年から2015年までで、アメリカ人にとってもかなり面白かったようだ。2008年の新番組視聴者数ランキングトップであり、新作としては唯一TOP10に入ったという。

○日本のテレビドラマは、というかテレビ番組全てにおいて視聴率を減らしているのではないかと思うが、こうやってアメリカの人気ドラマを見るとその理由ははっきりしている。面白くないからだ。視聴率競争ばかりやって1番の基本である面白い番組作りをやめてしまっては、おまけに捏造やプロパガンダばかりしていては、NHKをはじめ衰退していくのも当然である。

○ところで、メンタリスト(mentalist)とは何かというと、ユリ・ゲラー、宜保愛子、織田無道などを指す言葉らしい。つまり、読心能力・念動力・テレパシー・催眠術・透視・予知・霊能力・マインドコントロール・驚異的な記憶力や暗算能力などの使い手ということである。何だかあやしい世界である。ただし、このドラマ上の設定では、以前メンタリストを語ってテレビでインチキなどをしていた主人公が、カリフォルニア州捜査局の犯罪コンサルタントとして、推理力を駆使して難事件を解決していくというものである。

○超能力は使わないが、催眠術を用いるシーンは出てきた。また、何かと人の心理を読んだり操作したりして、事件の謎解きを図るようなところも多い。ただ、この辺りはシャーロックホームズやポアロなどの名探偵風であり、現実離れはしているがありがちなシナリオである。超能力的なものは否定され、そのようなシーンはない。

○主人公「パトリック・ジェーン」を演じるのは、「サイモン・ベイカー」というオーストラリア人である。現在52歳だから、ドラマ撮影時は40歳前後。身長178cmでやや小柄。これがまた悔しいことに実にいい男で、ドラマ内で圧倒的存在感を示す。といっても、優男(やさおとこ)で、ちょっと弱々しく、ちょっと変わり者、ちょっと小癪。しかし、推理能力抜群という羨ましい存在を演じている。女性にも実によくモテる。次に私が生まれ変わるとしたら、この男だな。予約を入れておこう。

○オーストラリア人といえば、同じくアメリカテレビドラマ「CHUCK(チャック)」でヒロインを演じた「イヴォンヌ・ストラホフスキー」を思い出す。男の私から見ても、あれだけの女子力を身につけていれば人生薔薇色だろうと思わせるような女優だった。

○現在は新型コロナ騒動や中国との関係で不穏な情勢も伝えられるオーストラリアだが、そのような問題が生じる前は相当に豊かな社会だったのかもしれない。それがサイモン・ベイカーやイヴォンヌ・ストラホフスキーなどの魅力的な俳優を生み出す背景にあったのではないかと想像される。

○さて、そんな色男の相手役は「ロビン・タニー」というアイルランド系アメリカ人の女優である。現在49歳だからサイモン・ベーカーの3歳年下。どこかで見たような気がするが、活動歴が長く色々な作品に出演しているので分からない。

○ロビン・タニーの役どころは、捜査チームのリーダーでパトリック・ジェーンの上司に当たる。パトリック・ジェーンをコントロールしようとして枠内に収まらないことにイライラして腹を立てるが、それでも憎からず思っているという関係である。日本の芸能人のことは無知に近いのでしかとしたことは言えないが、この二人を日本人の俳優で置き換えるとすれば、真田広之と深津絵里だろうか。あくまで寡聞な私のイメージである。

○配役が素晴らしいが、脚本もいい。ドラマを見始めてしばらくたつと、「ワー、これぞアメリカドラマだ」と思わせられる。何といっても単刀直入なのである。日本人は肝腎なことの周囲に10も20も枝葉をつけて表現したがるが、アメリカ人はその枝葉をできるだけ払おうとする。セリフを追っていくだけで頭がクリアになるような気がする。これが、私の好きなアメリカであると改めて感じさせられる。

○メンタリストというだけあって、心理描写にも力を入れているようだ。登場人物が表面で愛想よく愉快に笑っていても、恵まれた金持ちであっても、実はその裏に何かが隠されているような、しかし、隠されていないような、そんな思わせぶりな映され方をする。その謎感が一層視聴者を惹きつけてくれる。楽しい。

○最近の新型コロナ騒動では、アメリカもずいぶん右往左往しているような話を聞く。まあ、そうかもしれない。いくら素晴らしいものを作り出そうが、善が素晴らしければ、悪もそれに応じてあくどさを増すからだ。安倍元総理や河野太郎などがすっかりアメリカの三下に成り下がってしまうくらいである。

○話が逸れた。今第4話を見終わった。面白かった。第4話は上流階級の美人未亡人が犯人。この辺りは刑事コロンボの乗りかな。ただし、コロンボと違って捜査するのが色男だから、また別の楽しみがある。

○ところでふと気がついたのだけれど、4話までのところ、レギュラー出演者に黒人がいない。韓国系アメリカ人はいる。黒人がいないことによって、ずいぶん雰囲気が変わるものだ。これでアジア人もいなければ、もっと感じが変わるのだろう。ドラマでさえそうなのだから人種が混合した実社会というのは複雑になるはずだと感じる。