映画のことはよく知らない。滅多に見ることがない。そんな私の書くことなので、眉唾というか話半分というか、そんな程度であることをお断りしておく。

B級映画というのは、大抵金がないせいでA級映画を作れずにB級に落ちてしまうというイメージを私は持っている。そもそも映画というもの、物好きというか、好き者というか、オタクというか、そんな連中が集まって、夢を語りながら自分たちの理想を目指して作ることが多いのではないかと思う。だから、金がありさえすればもっと迫真に迫った完璧な映画が作れるのに、金がなせいであちこち手抜きせざるを得ず、B級作品が出来上がってしまうような気がする。

聞くところによれば、日活ロマンポルノも、映画がすっかり斜陽産業になって客を呼べなくなったときに、ポルノ映画にはかろうじて客が入っていたことから、好き者(エロではなくて映画の)が映画と触れ合っていたいがために一所懸命作ったという側面があったらしい。内容はB級ポルノでも、志には高いものがあったようなのだ。

ところが、そのような、志はあっても金はないというのとは全く逆の、金はあっても志が低いという映画を見つけた。「ジュピター」(Jupiter Ascending)というアメリカ映画である。

Amazonプライムビデオでアメリカのテレビドラマを見ようとしたら最初に映画の予告編が入り、派手な特撮(VFX)が目を引いたので見ることにした。ウォシャウスキー姉弟による2015年のSFアクション大作だという。 ウォシャウスキー姉弟といえばあの「マトリックス」(The Matrix)という名作の監督である。

しかし、見ているうちに笑ってしまった。あまりにB級すぎるというか、こんなのはC級だなと思ってしまった。どこかの高級割烹に入って、懐石料理でもでてくるのかと思っていたら、屋台の焼きそばが出てきたような感じである。肩の力を抜いて見れるというか、見ていて全然ドキドキしないというか、そういう意味では気楽な映画であったが、そのような映画を見たかったのではない。

どうしてそんなことになってしまったのか想像してみる。おそらく、中国人あたりが金をどっさり出したのだろう。併せて、こういう映画を作れ、と口も出したのだろう。それが極めて幼稚で、見た目だけがケバケバしく、ストーリーも単純な勧善懲悪、味も素っ気もないというものだったのではないだろうか。結果として、監督も役者も脚本家もその他も、「ほな気楽に作らせてもらいます」ということになり、ああいう結果になったに違いない。

統制が取れていないというか、どこかで見たようなシーンの寄せ集めというか、何でもかんでもというか、贅肉が落ちていないというか、厚化粧というか、浅く薄っぺらいというか、大安売りというか、ストーリー軽視というか。文化レベルの低い国相手に、予告編の寄せ集めのような映画を作ればそれでいいということだったのかもしれない。

誰かが、「人生金が全てだ」などというのを聞くと、何となく腹が立つ。なぜかというと、ロマンチックなところがある私はそれを否定したいのだが、簡単には否定しきれないものを感じるためだ。しかし、この映画は「人生金ばかりではない」と言える好例ではないかと思う。いくら金があっても、ダメなものはダメなのである。こう言えると何となく胸のつかえが下りたような気がする。

話は変わるが、映画があまり好きではない私が映画館に行ったとなると、この30年間で2回である。一つは子供を連れて行ったゴジラ対ビオランテ、もう一つは女房に連れられて行った中島みゆきの夜会である。そのくらい映画への関心は薄い。

そんな私でも、良いと思う映画はある。記憶に残っているのは二本あり、一つは「ゴーン・ガール」(GONE GIRL)である。見終わって「ああいい映画だった」と素直に思えた。ロザムンド・パイクはもちろん良かったが、見落とせないのはベン・アフレックがアホな男を上手に演じたことである。素晴らしい(ひょっとして地?)。このレベルの映画が毎年1本出てくれるなら、私もあっという間に映画ファンになるのだけれど。

もう一つは「007 スペクター」(Spectre)である。007役が現在のダニエル・クレイグになってから、007を見ていて違和感を感じることがなくなった。男の娯楽である。男のエンターテインメントである。男のロマンと夢に浸ることができる。純粋に楽しめる。スリルとサスペンス、渋くてスマート、殺しと暴力と爆発と冒険とスピードと策略と美女と遊び、もうおいしくておいしくてたまらない。

次回作「007 ノー・タイム・トゥ・ダイ」(No Time to Die:「絶体絶命」「死んでなんかいられない」「お前はすでに死んでいる」どれがいいのかな?)はこの4月に公開である。暇でもあることだし、久しぶりに映画館に行って観ようと思っている。コーヒーとポップコーンを買って中に入るというのはそれでいいのかな。楽しみ、楽しみ。
照れ