「エレメンタリー ホームズ&ワトソン in NY」(原題「Elementary」)という米国のテレビドラマがある。2012年から放送されるようになり、昨年シーズン6が放送され、今後シーズン7で終了の予定だそうである。日本では2013年からWOWOWで放送されており、2015年からテレビ東京でシーズン1と2が放送されたという。

1か月くらい前に、このドラマが衛星放送のディズニー・チャンネルでやっているのに気がつき、3話くらい録画して見た。その後ハッと思いついてアマゾンプライム・ビデオを探したところ、ありました、シーズン1から5までがちゃんと字幕版も含めて。

その結果、今このドラマを夢中で見ているところである。テレビドラマなんかを喜んで見るのは「CSI」以来のことである。日本のドラマはストーリーが単純でスピード感に欠けているので面白いと思えない(分かりやすくいうと間延びしていて退屈)。知的レベルの低い層向けではないかと疑ってしまう。あるいは、知的レベルの低い脚本家しかいないのか。視聴率を稼がなければならないから仕方のないところもあるのだろうが、やはりトータルとして日本人とアメリカ人を比べると、創る側か見る側か分からないが、知的レベルは日本が低いと思わせられる。

私はもともと推理小説が好きで、シャーロック・ホームズを読んだのは中学生の頃。大人になってからはアガサ・クリスティなども楽しませてもらった。テレビも、古畑任三郎は喜んで見ていた。なぜか刑事コロンボよりも面白いと思った。「名探偵ポワロ」も私の嫌いなNHKの放送だがずいぶん見た。そして、10年くらい前だろうか、CSIは素晴らしいと思った。

「エレメンタリー」は「CSI」ほど独創的でもなければ、込み入ってもいない。しかし、私が大いに気に入っているところがある。それは、ワトソン役をしているルーシー・リューという女優である。チャーリーズ・エンジェルに出演したことがあると聞くと、知っている方も多いかもしれない。台湾移民の娘だといい、台湾人なのか、中国人なのか、朝鮮人なのか、日本人なのか見分けがつかない顔立ちである。

しかも、美人ではない。というかブス。スタイルもよろしくない。身長も160cmくらいで目立つほど高くない。つまり、そこら辺にいる日本人のおばさんと何ら変わるところがない。余り目立たない服装で日本の街角を歩かせたら、誰も注目しないような程度である。しかし、この女優さんがドラマでは実にいい。

これまで、白人中心のドラマで、東アジア人が出てくる場合は何かおかしかった。どこか違和感があり滑稽だった。その中でましだなと思う人は、男にしろ女にしろ、白人に近いバタ臭さ、くどさ、存在感の強さなどのある、要するにアジア人離れした人だった。

ところがこのルーシー・リューという女優さんは、どう見ても単なる日本的なおばさんであるのに、アメリカのTVドラマに出演していながら、違和感もなければ滑稽でもない。むしろ、内面的な魅力が滲み出てきて、東洋人女性しか持っていない品位があることを感じさせる。あんなにそこら辺のおばさんみたいな表情でテレビに写っているのに、それで十分以上に白人と渡り合っているのだ。

一方、ルーシー・リューの相手役であるシャーロック・ホームズは、アスペルガーというか自閉症スペクトラム上にある人格として描かれている。そのシャーロック・ホームズをあやすのに、アジア人のルーシー・リューは、役柄とはいえぴったりフィットしている。

ひょっとすると、アジアにはアスペルガー的な男が多く、それにともなってアジアの女性はアスペルガー的な男を扱うことに手慣れているのかもしれない。もっというと、アジア女性はアスペルガー的な男が好きであるため、それを助長しているのかもしれない。

優れている男、才能のある男というのは、必ずアスペルガー的傾向が強いものであるが、東洋の女性はアスペルガーという毒をうまく取り除きながら男の才能を楽しむことができると考えると辻褄が合う。そのようにして相手役の男性を上手にいなしていくドラマ上のやり取りは、見る者を引きつける。

また、ルーシー・リューは役柄なのか個人的な好みなのか、色々なファッションで現れてくれる。目を引くような美人ではないが、東洋人らしい体型、体の動かし方などとあわせて眺めていると、金髪白人女性のシリアスな美しさとは違う、幼く可愛らしい魅力が感じられて好ましい。

ルーシー・リューの演技は私一人が喜んでいるのではなく、シリーズ全部で154話にもなるというから、アメリカ人にも支持されたのだろう。
それは、アメリカ人がアジア女性の魅力に気がついたということを意味する。ルーシー・リューという女優はたしかに素晴らしいが、それを撮影して見せたのも、それを受け入れたのもアメリカ人である。アジア女性の魅力がアメリカで広く市民権を得たといっていいように思う。

 

ただし、ちょっと問題を感じるところもある。ルーシー・リューのおかげで、日本のそこら辺にいるおばさんでも十分魅力的であるということが理解できたが、男性の方はどうだろうか。日本のそこら辺のおじさんに魅力はあるだろうか。何かと女性優位な日本であるが、日本の普通のおじさんも早くアメリカの市民権を得られるくらいになってほしいものである。