備忘録読み物『そして告白を』 | 学ぶ、敬う、そして。

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元・片想い日記。遥か昔、大学生の頃、同性の先生に恋をしていました。2010年の初期は、先生への恋路ブログでした。先生への恋は叶わなかったけど、それ以降同性パートナーオンリーの日常です。永らく休眠してましたが、2019年ブログ再開→頓挫→2023ぼちぼち再開。備忘録

 

 備忘録読み物『そして告白を』

 

――――――――――――――――――――――

 

会話が一区切りし、

静かになったそのタイミング。

 

私は”美味しくない紅茶”が入った紙コップを、

握りしめた。

 

 そして私は

口を開いた。

 

 

 

「あの!

 

 もう、時効なんですけど!

 …っていうか、

 時効にしてほしいんですけど!

 

 

 ・・・私、

 

 昔、先生のこと、

 めちゃくちゃ好きでしたよね。」

 

 

 

 

振り絞った、告白だった。

 

 

手元の紅茶に目をやって。

先生のほうなんて見られなくて。

 

 

私は一気に言い終えて

そこで顔を上げた。

 

 

 

 先生は口を開く。

 

 

 

 

「そうだねー。

 懐いてたよね。」

 

 

 

 

と。

 

 

いただいた返事は、

これであった。

 

そう、間髪入れず、

実にさらっと。

 

 

 

 

 

 

・・・。

 

まぁ、私も悪かった。

伝え方が悪かった。

 

「好きです」ではなく

「好きでしたよね。」

という、過去形なうえに、

先生に確認するような言い方を

してしまったのだから。

 

なぜ、そんな言い方をしてしまったのだろう。

多分、

最後の最後、

自分のプライドが邪魔をしたのだと思う。

あとは、

関係が壊れるのが…怖かった。

 

 

 

先生は、少しだけ「うんうん」と頷いていた。

表情の変化は特になかった。

淡々とした感じだった。

 

でも、(勿論喜んだりはしないけど)

驚いていたり困ってたり

するわけでもなかった。

普通に知っていることを確認されただけ、

という反応に見えた。

 

良いのか悪いのか、わからなかったけど

私はただ素直に

(「そんな反応するんだな」)と思った。

 

 

先生の反応を見て、

私はまた、手元の紅茶に視線を戻した。

 

 

先生に問いかけた私のほうが黙り込むわけにもいかず、

 

 

「ですよねぇ。

 笑える。

 ・・・ほんと笑える。」

 

 

 

とだけ、そうつぶやいた。

 

先生には、

当時の私の”幼さ”を可笑しく思う、

というニュアンスでつぶやいたつもりだったけど

 

実際はどう受け取っただろう?


 

私にとっては、

当時の私の好意の見え見えさが滑稽だったし、

今でも先生を好きなこと、

素直ではない告白の仕方をしてしまったことも、

先生への告白後のこの雰囲気も…

全部が、”笑える”状況だった。

 

たぶん、

「笑える」と言い放った私は、

少しニヒルな笑いを浮かべていた。

 

 

 

 

・・・。

 

ややズレた”告白”ではあったが

一応、”好意を伝える”という決意は

 

 

無事に遂行された。

 

 

この”告白”を交えた会話は

こんな短いやりとりで終わってしまったが

いい意味で、

それ以上、私の好意の、

種類や程度、重さを確認されることはなかった。

 

ここで、変に確認されて

拒否されたり、”お断わり”されたら

私は絶望してしまっていたから。

 

 

「懐いてた」とだけ言って、

淡々としていてくれた先生の優しさが

本当にありがたかった。

 

 

ところで

今更だけれど、

当時の私の好意を・・・

 

先生は、ちゃんと知っていたんだな、

という事が、分かった。

 

「懐いてた」といえば「懐いてた」と

形容されると思うけど、

 

たぶん…、

ただ”懐いてた”とは思っていないだろう。

正直なところ

”恋愛的な好き”は、伝わっていたと思う。

・・・だって”あの先生”だもの。

(世の中のあらゆることは、

 先生の”疑いフィルター”に掛けられる。)

・・・そして、あの頃の私のアプローチだもの。

(※2010年1月の記事にあり)

 

先生は、

私の好意を知ったうえで、

あの日々の私に接してくれていたのだ、と。

 

好意を知ったうえで、

私が日々勉学に励めるよう、適度に活力を提供し、

背中を押しつつ、

はたまた私が変な方向に暴走しないよう、

適切にいなしてくれていた。

 

改めて、

その日々に思いを馳せて

温かい気持ちになる。

 

 

 

 

・・・。

 

とはいえ、先生は

私の好意を

 

本当に

”過去形”と思ってるだろうか。

 

”過去”好きだったとして、

”今”は特にそういう感情がなかったとして、

13年も経って、

会いたい、と何度も試みてくる人の心は…?

会って”感謝や気持ち”を切々と述べてくるような人の心は…?

 

 先生の目に、

私はどんな存在として映っているのだろう。

 

 

 

 

さて、

 

ちなみに、

この”告白まがい”な会話をしたのは、

研究室の中で、である。

 

この後に、

しばらくまた会話をして、

 

その後、電車にながく揺られ

 

先生の最寄り駅まで行き、

食事をした。

 

そして、楽しい女子トークと、

例の、友達認定(師弟?関係からの脱却)

である。

 

さらには…

 

最後に、

素敵な思い出もくれた。

(これはまた別の話になるが…。)

 

 

 

現在形での「好き」とか

「付き合ってください」とかの

告白はできなかったけど、

 

やはり私は、先生に

返事を要求するような、

押しつけてしまうような、

告白などそぐわないと、

どこかで思っている。

 

 

ーそれに先生は、

きっと返事をしないだろうから。

 

 

この、答えがない、

私と先生のやりとりと時間が

わずかな期待を育み、

私の背中を押してくれている。

 

これまでも、

そして、

これからも。

 

 

だけれど、一つ言えること。

それは、

過去形だったとしても

好意の気持ちを伝えられたことで

一気に私の中のわだかまりが解消された、

ということ。

 

13年前の私との、決別。

そして、16年間からの、解放。

 

もう、

昨日までの私とは、

言う前の、私とは、違うのだ。

 

そして、

想いを告げた後も

先生は変わらず接してくれている、

という現実が

私に更なる勇気をくれている。

 

幸福感に満たされて、

 

私は…

私の想いは…

 

新しい次元に、

歩みを進めていける気がしている。

 

 

――――――――――――――――――――――

 

つづく

 

 

 

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