備忘録読み物『13年の時を経て,その②』
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この出来事は、とある花の金曜日の、
夜8時頃と思しき時間帯でのことだった。
遡る事、約5時間とちょっと前。
その日は東京旅行の最終日。
普段は断然飛行機派である私だが、
術後間もない身体を労り、
今回は新幹線を予約していた。
東京から1000キロ離れた、
私の家への最終便は早い。
帰りの新幹線の時間を気にしながらも、
私は久しぶりの再会を噛みしめていた。
13年(16年)越しの片想い。
コロナ明け、夢にまで見た、
憧れの先生との再会。
研究室にて。
何時解散とは言われていないものの、
2019年の再会の時には、
授業一コマ分でのお開きが続いたため、
はなからそれくらいのつもりでいた。
そして、
久しぶりの再会はなかなかにぎこちなく、
最初の一時間くらいは、
目の前のあの人、腕を組み足を組み
距離を置くような敬語と
やや突き放すような態度に見えた。
話題の内容は、私の体調の話、
先生の研究、大学の話だった。
「(前回会ってから3年も経っているし、
私たちの距離はこんなものだろう)」と
ある意味"期待通り"の展開であった。
だが今回は、
授業の区切りを知らせるチャイムが鳴るくらいの時間になっても
先生が帰宅を促す様子がなかったので
私もそれに甘んじた。
途中、
私が差し入れのクッキーを渡したところを皮切りに、
少しずつ会話の内容と、場の雰囲気が変化。
…
とはいえ、すぐに砕けた話をするわけでもないのだが。
変わらず、先生は調査の話を、
私は病気や保険、仕事の話をし続けていた。
だけれど、
会話から派生するちょっとした話題をスパイスに、
先生は時間を追うごとに饒舌になった。
主には研究対象の話だが
こちらから何かを切り出さずとも、
自らアレやこれや、話題を転換させ発展させ、
広げてくれる。
私も、聞いていて心地よく、
また、興味をそそられ、
楽しく聞き入っていた。
自然と、時が流れるのを忘れてしまいそうだった。
(いや、
時が流れるのも、忘れてしまえ、と思う程だった。)
そして、
「あっ、ていうか時間大丈夫?」と、
先生にそう言われたのが17時半のこと。
気づけば私たちは、3時間も話をしていたのだった。
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続きます。