(『5時間の対話~授業後編』の続きです。)
本編
―――――――――――――――
―ガラガラガラガラ
!?
教務課から出てきた先生はさわやかな顔をしている。
教務課は学生立ち入り禁止である。
だから、「先生遅いなぁ」なんて思いながら
外で待っていたのだけど・・・
(いやぁ、荷物って、コレ?)
書類って言うから、てっきり紙袋2~3袋分だろう、
なんて思っていたので驚く。
(台車かよ!!)
と。
しかも、台車は1台。
まさかとは思ったけど
「(あぁやっぱり私一人で運ぶのね。)」って。
本がいっぱい乗っててさり気に重そう。
「某国(先生の調査地)からのお届け物ですー、
って感じですか?」
「そうそう!」
―ガラガラガラガラ
実際そこまで重くはないけど
「(なんかちょっと、これパシリなのでは?)」
という気分に苛まれる。
先生は、自分の荷物だけ持って先をスタスタ行ってるし。
(うぁぁ・・・。さっきのあの、
”少女”みたいな可愛さに…騙されてしまった!)
そう、”少女”みたいな可愛さというのは
先ほど廊下で初めての大きな頼みごとをされた
直後のことである。
教務課がある建物に入る数メートル前で
「今日は寒いよねぇ。」
なんていきなり言われた。
(先生が、頼み事か。
それに、天気の話・・・??
そして、ご自身から話しかけて下さるなんて…。)
と、色々考えつつも
一緒に歩けているこの状況に少しドキドキしていた。
ドキドキしていても、先生には冷静に
「寒いですねぇ」
と答える私。
(正直寒いかどうかはあまり気にしてなかった)
答えてから、確かに「寒いな」と寒さを実感、
した、次の瞬間・・・
「さむぅ~い!」
と言いながら、唐突に先生が建物にダッシュした。
!?
私もびっくりして追いかけるけど・・・
どうしよう。
たまらなく、たまらなく可愛かった。
(「さむぅ~い!」って何だよ、
「寒いねぇ」とか「さむい~」とかではなく、
「さむぅ~い!」って。)
・・・と、そんな姿に騙されてしまったのだった。
(純粋な”少女”のような素振りを見せつけて、
私の心がズキュンの撃ち抜かれたと思ったら
・・・
さわやかな顔して、こんな仕事を押し付ける。
・・・あぁ、何?この貧乏くじっぷり。)
・・・。
・・・。
・・・。
それでも、私は
先生のために働けて嬉しいなと思ってしまった。
ちょっと前を歩く先生の後姿、
少し憎いけど、とてつもなく可愛いんだ。
それに、段差があるところでは、
ふと立ち止まって振り向いてくれる。
さり気無い優しさを見せてくれてる。
先生の優しさに、キュンとなる。
あ、でも、段差がある所で
先生が居る位置の方が低いときは
「先生、危ない。」です。
本がたくさん載った台車に、ひかれちゃいます^^;
結局最後は、階を移動しなくてはいけない場所に到着。
エレベーターがなかなか来ず
台車曳いてるの私だけだったから
「先生アレだったら、階段で先に行って下さいよ。」
と言った。
実際は先生の荷物なんだけど、
台車曳いてる私が、
徒歩の先生のお荷物なのではないかと思ってしまって。
そしたら先生はくるっと振り向いて
「え、そう?場所、わかる?」と言う。
「あの、いつもの、先生の研究室でしょ?分かりますよ!」
「(呼び出した)生徒待ってるかも知れないし・・・、
じゃあ後でね!」
そう言って、去ってしまった。
自分から薦めておいたくせに、少し寂しくなった。
(やっぱり先に行っちゃうよね、と。)
けれども、よくよく考えると
そんな時でも先生は、しっかり可愛かった!
かわいいアピールすることを忘れていなかった先生の
追撃。笑
一旦、先生と別行動する事になった建物には、
エレベーターが3台並んで設置されているのだが、
実はボタンが連動していない。
(だからボタンを一つ押したとしても、待ち長い。)
それゆえ、先生は1台目のボタン押してのち、
しばらくしてからそれに(3台のエレベータが非連動な事)気付いたようで
=シュッ、シュッ、と、とてもすばやく=
残りの2台のボタンを押しに行った。
すばやいところが、妙に可愛かった。
そして
「また後で!」と言って、消えたと思ったのに、
また姿を現した。
お得意の「えへへ」笑いを浮かべていた。
何事かと思ったら
行き先を間違ってしまったようで、
「道間違えちゃったのよ」アピールをして去っていった。
なんで、こんなにお茶目に振舞えるんだろう・・・。
そして、その可愛さに負けたのか、
台車に乗った本たちを研究室に届けた私は、
頼まれてもいないのに
台車を総務課に戻すところまで
やって差し上げたのだった。
(この記事は、『5時間の概要。』の具体的内容、2章です。)