ウミネコのなく中、

汽車の出発を待っていた。

窓から流れ込む潮騒を感じていたが、

この時はまだ生れた町のにおいに気がついていなかった。

 

数十年して、町に帰ってきた。

新幹線のドアが開くと、

植物の胞子のにおいが流れ込んできた。

 

到着駅が在来線から新幹線駅のある山に移動したためだ。

においが変わっていた。

 

においの記憶は強力、

特に生まれた町のにおいは特別。