本牧徒然雑記。「横浜・旧根岸競馬場」。

以前は本を選ぶに当たって「連鎖本」と称して前の本と関連する次の本を選びました。

しかし次第に雜読風になってきて、特に図書館利用が再開してからは予約時と配本時期との間に相当の期間が生じるため、その都度テーマが異なるバラバラ読みとなっています。

でもやや長い期間でみてみるとやはり連鎖する場合があります。

この2ヶ月程では東ドイツ物2冊がありましたし、「大塩平八郎」の江戸幕府末期を迎える時期から「フルベッキ伝」で幕末・明治初期、そして「ペリーとともに」で開国時期と一応連鎖しています。

本年最後は幕末の「横浜・旧根岸競馬場」(根岸森林公園)で締めくくりたいと思います。

朝日新聞夕刊記事(画像)を転載します。見出しは「追い風向かい風駆け抜けて」。

「横浜・根岸森林公園の高台に、欧州の古城のような遺構がそびえ立つ。黒ずんだコンクリート壁に枯れたツタがからまり、ガラスのない窓がベニヤ板でふさがれている。高さ約30mの三つの塔が、公園の芝生で弁当を広げる親子連れや犬の散歩をする近隣住民らを見守っている。ここに、幕末の1866(慶応2)年から競馬場があった。横浜の外国人居留地で暮らす英国人らの要望で、江戸幕府が「根岸競馬場」を建設した。「騎手と馬泣かせの難しいコースだったようです」と、公園に隣接する「馬の博物館」の伊丹学芸員。右回りの約1600mで、スタートしてすぐに曲がりながら坂を下る。幅も狭く、接触事故が相次いだという。ほどなく日本人にも解放され、伊藤博文や井上馨らが馬主として参加。競馬は春と秋の年2回、多い時には8日間ずつ開催された。明治天皇も計13回行幸し、いまに続く天皇賞も始まった。「政府の要人と外国人との社交場としてにぎわいました」と伊丹さん。日英同盟の締結や、欧米との間の不平等条約の改正にも貢献しただろう」。

「今も残る遺構は、東京の丸ビルを手がけた米国人建築家J・H・モーガンが設計した地上7階、地下１階の一等馬見所だ。1923年の関東大震災で半壊したスタンドに代わり、6年後に再建された。鉄骨と鉄筋の両方を使った当時としては珍しい工法で、貴賓室もあった。だが、第2次世界大戦中の42年に競馬は突然打ち切りに。軍港が見渡せることを問題視した海軍が接収し、印刷工場とした。「敵国人」とされた横浜在住の外国人らも場内の施設に一時抑留された。戦後は米軍が一帯を接収し、住宅地やゴルフ場として利用した。69年に競馬場部分の多くが日本側に返還されて公園になった。管理する横浜市は老朽化した馬見所の補強を検討。約43ヘクタールの米軍住宅地区の返還に向けた現状回復作業も進む。跡地利用を巡り、約180人の地権者が協議会を設立。横浜市立医学部と附属2病院などを移転させる再整備構想もある」。

根岸競馬場開設は生麦事件からまだ4年。居留地から競馬場へ向かう安全な道筋が必要でした。

半農半漁の本牧地区を経由するルートはそのひとつ。次第に外国人通行も盛んになって休憩茶屋が出現、異国風情も加わって現在の「本牧イメージ」の原型が形成されたようです。

だいたいがペリー来航時、測量で現れる米国水兵は一の谷、二の谷、三ノ谷の本牧岬に上陸して崖に測量用の目印をつけたり落書きしたりと外国人と全く縁のない土地ではありませんでした。幕府は防御を固め本牧には砲術に長けた鳥取藩などを駐在させたので住民と同じ2000名近くが長期間滞在。飲料水確保のために井戸を3ヵ所掘ったり中には病死する藩士がいて本牧元町の寺にはその墓があります。

遡って1万五千年位前の寒冷期には地球全体の水位が下がって江戸湾の西側・現在の川崎・横浜側には川(古多摩川？)が流れていたので、その後水位が上がっても海底は水深があり大きい水路があるとのことです。従って遠浅の千葉県側に比べて神奈川県側は航行に都合が良く、外国船も専らこちらを利用したとのことです。これらの歴史は市民講座で聞いた話の受け売りでブログに以前書いた覚えがあります。

本牧・根岸に共通しているのは戦後広大な面積が米軍住宅地として占領されたことです。ここでも再び外国人との関係が形成されました。不幸な歴史ですが占領が解除されてみれば再開発で計画的な街の形成が可能となります。本牧が先行し根岸では記事にある通りまだ最後の地区が残っています。引退して横浜に戻った僕達夫婦が住んでいるのは本牧のそうした街。更に54年前に結婚して最初に住んだのは根岸で、両地区とは縁が深いので幕末・明治のこの頃の歴史となると一層の興味を覚えるのです。

息子が生まれた頃米軍ゴルフ場だった根岸競馬場が返還されました。現在の根岸森林公園です。まだ訪れる人もまばらな芝生の上で彼が初めてひとり立ちで一歩を踏み出したのがここでした。2歳下の娘の時は夏休み旅行中の山梨県清里・清泉寮。子供の第一歩の場所を親はいつまでも忘れないものです。

根岸森林公園は「森林」と呼ぶより競馬場・ゴルフ場の自然な起伏に富んだ広い芝生の空間、奥に「モーガン広場」と称する画像の建物(立ち入り禁止)と、隣接する「馬の博物館」(小さな厩舎と馬場が附属)があります。梅と桜の咲く季節がベスト。本牧山頂公園へは住宅街ですが7000歩位の適当な散歩ルートです。根岸駅からバスが便利です。機会があれば訪れてみて下さい。

本年も当ブログをお読みいただきありがとうございます。

皆様よいお歳をお迎え下さい。