(前稿訂正)・「22年3月ブログ記載「横浜出身女優」」は21年3月の誤りでした。

さて、本牧徒然雑記。今回は「5月連休雑感・2つの新聞記事から」です。

薫風5月の横浜、マスクなしの市民の姿も多く、活気の戻った街の様子は嬉しい限りです。

4～6月はクラス会・OB会が復活、元気な友人達と会える機会も増えました。

我々夫婦、最早遠出はしませんが、いつもの近隣散歩に加えて海岸通りの華やかなパレード見物、山下・山手公園のバラ園(バラは市花)、元町での買い物と、連休・好日を楽しみました。

今週末はトライアスロン横浜大会、世界中から参加の選手達の迫力ある競技を見て、その後神奈川近代文学館「小津安次郎展」の予定です。暑くならない内に外出を心掛けたいと思っております。

そんなこんなで読書への集中力が低下、予想した通り読書ブログは間に合いません。

今回は最近印象に残った朝日新聞2つの記事を題材に「埋め草雑記」と致します。

①「画像情報」の分かりやすさ。

今年は「DNAの二重らせん発表から70年」だそうです。その記事では「DNAの二重らせん構造モデルから70年、ヒトの全遺伝情報解析から20年。その影響はあらゆる生命科学に及ぶ。人類学に新たな視点をもたらし、将来の産業も変えそうだ」。そして「2010年に発表されたネアンデルタール人のゲノム解析結果は、新たな人類の歴史を示していた。現生人類と明らかに別種であることが確認された一方で、絶滅したネアンデルタール人のゲノムを、欧州やアジアの人が1～4%受け継いでいるとわかった。現生人類が7万年前以降にアフリカから欧州に進出した後、ネアンデルタール人と交雑したことを示していた」。更に「(ペーボ教授らは)ロシアの洞窟で発見された小さな指の骨から、現生人ともネアンデルタール人とも異なる人類を発見し「デニソワ人」と名付けた」と続きます。そして記事に添付された略図が画像です。

我々はこの略図で文章の内容を一目で概略理解できます。更にチンパンジーが700万年位前に現生人類と同一の種から分岐したこと、現生人類の遺伝子にはチンパンジーと同一の遺伝子がある割合で組み込まれていることを知るのです。「一目でわかる、そしてある場合には文章よりも長く記憶に留めることが出来る」ことこそ「画像情報」の利点と思われます。

更に文章情報では決して得られない世界を画像は僕らに提供してくれています。

それは例えばTVの「ヒューマニエンス」「コズミック・フロント」「映像の世紀」ほか各種のプレミアム、スペシャル、特別企画、アーカイブ番組の数々です。

現在僕は読書と同じくらいの時間をTVに費やしています。映像があっての「情報・知識・理解」を得る場が自分の中で急速に比重を増していることを自覚しています。

「ああ、そうだったのか」と「感動」すら覚えることもしばしば経験します。

こうした貴重な機会を最大限大事にしていきたいと思っております。

②「生成AI・ChatGPT」。

僕はメタバースや漫画みたいな「アバターキャラクター」には全く興味はありませんが、生成AI・ChatGPTについては「人間文化」の根幹に関わる問題なので強い関心を持っています。

少々長いですが神里達博・千葉大大学院教授によるコラム記事を転載致します。

「深層学習は脳神経回路の機能をモデル化した「ニューラルネットワーク」という仕組みを高度化させたものだ。脳は「ニューロン」と呼ばれる神経細胞が「シナプス」という接合部を介して複雑につながった構造を持つ。これをコンピューターの中で模倣すれば、脳の機能を実現できるのではないか、この考え方は電子計算機の歴史と同じくらいに古い。だがいくつかの壁があって、長い間、実用化できなかった。一つには、コンピューターの処理速度や記憶容量が足りなかったことがある。だがこれはハードウェアの進歩により解決していった。もう一つ、自然な言葉を操るAIを実現する上で重要な契機となったのが、ネット社会の到来である。近年のパソコンやスマートフォンの普及により、ネットには人間の書いた膨大な文章が蓄積されるようになった。自然言語を扱うAIの性能は、どれだけ多くの文章を学習したかが鍵になるので、低コストで大量のテキストを得られるようになったことの効果は大きかったといえる。これらの変化に加え、アルゴリズム(算法)のブレークスルーが重なり高度なAIが実現したのである」「もっとも、AIがやっていることは基本的には、ある言葉の次にどんな言葉が来るかを予測しているだけである。例えば「今日は天気が」の次に来るのは「良い」とか「悪い」が確率的に高く「強い」が来る可能性は低い。そのような言葉の出現確率の分布を学習し定式化したものを「言語モデル」という。今特に顕著なのは言語モデルの大規模化だ。その目安となる「パラメーターの数」は、かつては1億個程度だったが現在は3500億個で、更に拡大している。このパラメーター数は神経細胞のシナプスの数に相当するとも考えられるが、単純比較でまだ脳より3桁ぐらい少ない。とはいえ、いずれ人間の脳の規模に匹敵するものになるだろう。もちろん、それをもって「人間を超えるAIの誕生」等と早合点してはいけない。だがこの量的な拡大もあって、自然な会話がAIに可能になったのは確かである」。本文はこの後「AI規制」の問題に言及するのでそれは割愛します。

僕がここで考えたことは、人間の主たる思考方法が理論の合理的な積み重ねによる「演繹法」に並んで、事実(事例数・パラメーター数)の積み重ねによる「帰納法」が主流化してきたということです。

論理学や数学に代表される大陸哲学的な「演繹法」が従来の学問や思考メソッドの主流であり、英米哲学的イメージの「帰納法」は完璧性の観点から弱点が多く、どちらかといえば二次的な扱いではなかったかと(少なくとも僕は)考えてきました。「帰納法」を揶揄する小話に「1万匹のフグに毒があるといって、どうして1万1匹目にも毒があると立証出来るのか？」がある通りです。

しかし今やフグの数は3500億匹となってきたのです。。

パラメーターの数を10のｎ乗とすると、AIのｎがどんどんと上がってくれば、すなわち人間がどうしても到達できない「無限大」に限りなく近づいていけばいく程「真実」が近くなってくるのです。

その具体例が生成AIでありChatGPTだと思うのです。

人間の理性は「無限小」への追究、例えば「限りなく0に近づく」という極限の考え方、微分的思考で一大体系を築いてきました。「ないもの」を「ある」と考える能力で「限りなく「真理」に近づく」文化・例えば数学を築いてきました。それは「神」の概念(ないものを「ある」と考える点で)にも共通するのではないか、と以前のブログに書いた覚えがあります。

でも「無限大」からの連想は僕には宇宙物理学の世界位しか思い浮かびませんでした。

それが今やAIはｎの数を最大化させることにより、即ち「帰納法」の従来の枠を最大限に拡大することによって新しい「人間文化」を切り拓いたといえるでしょう。

「帰納法」を「演繹法」と並立する位置まで引き上げたことは、僕の頭の中では二次的だった「帰納法」の概念を一新する「目からウロコ」の革命的現象なのです。

考えてみれば「人生」とは、無数のパラメーターの組み合わせから発生する「一次偶然」(誕生)から開始された、これまた無数のパラメーターの組み合わせの「ｎ次偶然」の進行形ではないでしょうか？

そして遂には「無限大数的パラメーター」による必然、つまり「完全必然」(死)に至る、その過程ではないでしょうか？

誕生と死、その間の「経験」の積み重なりは「帰納法」に他なりません。

「演繹法」による「熟慮・結論・行動」もあるにはあるでしょうが、学界ではなく一般社会に暮らす我々には恐らく想像以上にその例は少ないと思われます。

世の中や人間というものは「理性」や「合理」ばかりで動いている訳ではないのです。「帰納法」のアウトプットたる「経験則・直感(観)・バイアス」による判断の方が圧倒的に多いように思うのです。

だから「帰納法」を「演繹法」より低次にとらえるなんてとんでもない大間違いでした。

そんなことをこの記事を読みながら考えている自分でした。

以上、僕の概念を二系列で並記すれば、

①「演繹法」・無限小、収束、(従来の)数学、……(「シニフィエ(内容)」、科学哲学)。

②「帰納法」・無限大、拡散、生成AI、……(「シニフィアン(表象)」、言語哲学)。です。

なお……(カッコ内)についてはイメージ内の連想なので自分でもうまく説明できません。

それこそ「直感」から出ただけの連想だから説明できないのです。

特にウィトゲンシュタイン等に通じる「言語哲学」は苦手中の苦手です。

かつて「はじめての」の書名につられて読んだ八木沢敬「はじめての科学哲学」(21年11月ブログ記載)では、難しくて難しくて、やけどを負うがごとくに手こずりました。

購入してしまった姉妹本「はじめての言語哲学」には気持ちが萎えて未だに手を出せません。

加齢と共に安易に安易にと流れていく自分は、恐らくもうこの本を開くことはないでしょう。

と、なんとも情けない話で今週の「埋め草雑記」を終わります。

次回は「読書日記」に戻ります。

「5月連休雑感」