ニュース速報で流れていたのだが、パキスタンに潜伏していたウサマビンラディン容疑者がアメリカの特殊部隊に殺害されたそうである。

えっ、と驚いてしまう。約10年前、世界中から注目される人物になり、それからずっと逃亡を続けていたが、最後は案外あっけなかった。作戦にあたった特殊部隊にとっては違うだろうが。

しかし、私は今回のビンラディン容疑者殺害を素直に喜ぶことはできない。別にビンラディン容疑者を擁護しているわけではない。しかし、主に以下3点が残念なのだ。

第一に、ビンラディン容疑者拘束ではなく殺害だったことがある。死んでしまっては、法のもとで真実を明らかにさせ、そして裁く、ということができなくなってしまった。悪は即刻抹殺、ではテロに訴えたビンラディンと変わらなくなってしまう。ビンラディンは一般人を狙ったテロを行ったとされるが、その前には一応言論活動をしていたのである。

第二に現代の歴史の真実を証言できる人物がいなくなってしまった。9.11は世界を大きく変えてしまったが、その中心にいた人々は何を考えていたのか?また、9.11とその後のアメリカ政府の行動にはいくつも疑問点がある。真実を知りたい人々は多い。しかし、ビンラディンは殺され、サダム・フセインも既に処刑されている。残る真実を知る者はブッシュ元大統領とその取り巻き達だけになってしまった。

第三に世界はもはやイスラム原理主義過激派を止める声を失ってしまった。対テロ戦争の間、ビンラディンの主張に共鳴する過激派が多く生まれ、かなりの勢力になったものもある。それらの組織が米国との交渉に応じて解散する可能性は低いし、少人数かつ行動力のある組織は各国の公安が把握することすら難しい。そんな中で、限りなく可能性はゼロだけれど、ビンラディンが停戦に応じるなら、その他の組織にも波及するのではないかと思ったのだが、その可能性はゼロになったようだ。ゲバラに共鳴した極左のようにビンラディン容疑者に共鳴した過激派がこれからも生まれ続けるおそれがある。

ところで、ビンラディン容疑者の遺体だが、海に投棄されたそうな。



…まずくないか?イスラム教は基本的に土葬だ。ただですら高いビンラディンシンパの報復の危険をさらに高めはしないか?さらに、DNAの再鑑定や、他の手法(歯型や指紋)での鑑定に支障はないか?

とはいえ、今回の議論は(残念な点第三を除いて)9.11テロの首謀者がビンラディン容疑者で、今回殺害されたのもビンラディン容疑者だという米国の発表が真実であったならの議論だけれど。