10月の終わりに来るという季節外れな気まぐれ台風とその後続いた雨もすっかり止んで、今日の夜はよく澄んでいる。

虫が鳴いている。冷たい台風の雨にも負けず生き残って、弱々しくも鳴いている。

そういえば、最後の虫の音、蝉の声は気がつかないものだ、というようなことをいつだったか書いた。

今年最後の蝉の声は、9月のこれまた台風が通り過ぎた日に聞いた。

あの日も雨のあと、急に夏の暑さが去って涼しくなった。

友人と予備校の近くのビル街の中を歩いていると、ビルの敷地の隅に植えられた木から蝉の声が聞こえてきた。

かなり大きな声だったから、なかなか頑張るな、と友人と話した。

あれからひと月半以上が経って、またひとつ台風が過ぎ、10月もともに過ぎ去った。

台風が通り過ぎ、また一段と寒くなった。

それなのに、あの蝉の声を聞いたのが遥か昔のことのようにも思えるし、ついこの前のことのようにも思える。

11月がやってきた。これからは本番まで、過去、現在、未来の感覚が入り混じるような密度の高い日々が待っているだろう。

改めて、本番までに残された時間を大切にしたい。