風の四十九日の次の日



仕事を終えた後、美容室へ行った


まず、髪を整えようと思った


前に来たのは3月の終わり頃

ここの美容室は格安で、

カットだけなら1980円、

カラーも一緒にすると4000円 

風から目が離せなかったから、だいたい3ヶ月に一度、家族の休みの日に行けた時だけカラーもできた

そんなでも、市販の白髪染は使いたくなかったから、毎回、伸び放題、白髪放題だった


前回行った時に、浮気宣言していた

長女の行きつけの別の美容室、

白髪染が専門でカラーがとても素敵になると紹介してもらっていた

白髪を生かした明るいカラーで目立ちにくくオシャレになるらしい


それで、

還暦記念に一度行ってみるわー

なら見せてねー、楽しみに待っとるわー

って、




美容室に入って、

受付表に名前を書いていたら、

いつもの担当者がやってきた(男性)

こちらへどうぞ、と鏡の前の椅子に案内されて


今日はどうしますか?


んー、どうしょうかなぁ、いっそ短くしてしまおうか、それとも暑くなるから結べる方がいいか‥


カラーは、行かなかったんですか?


うん、4月の初めに、わんこ亡くなっちゃってね


え‥‥それどころじゃなかったですね


うん、そんなどころじゃなかった

やっとね、美容室行こうかな、って気になったから


じゃ、とりあえず結べるくらいで揃えましょう



いつも機関銃のようによく喋る彼が、

今日は無口で、黙々とカットしてくれた

風のことはいつも話していたから、私の気持ちを理解してくれて嬉しかった


そんなことを思うだけで涙が出てしまいそうになるから、必死に堪えていた




お釣りをもらいながら、

次に来る時は、もう少し元気になってると思うから‥と、言いながら泣きそうになる


私が話すのを遮って、

はい、お待ちしています





風がここにもいる

私の生活の全部に風はいるんだなぁ

写真を見せて、

この子なの、可愛いでしょう、

おばあちゃんなんだけどね、

目が離せなくて


そんな話をいつもしていたから、

必ず、わんちゃん元気にしてますか?って聞いてくれてた



風は離れていても、いつも一緒にいたんだな