新型コロナウィルスが

中国で広まってきた頃は

まさか生殖医療の現場に影響が出るなんて

思ってもいなかった

 

生殖医療に関わる様々な学会が

生殖医療の自粛を要請し始め

医師にとっても患者にとっても

難しい選択を迫られているような気がする

 

かつて妊活中お話した30代前半の方が

「私たち妊活している人って

今授かりたくて頑張ってますよね

そこに年齢は関係ない・・・

20代でも40代でも今、授かりたくて

頑張ってますよね・・・

いつかじゃなくて未来のことじゃなくて

今授かりたいと思ってる

だから頑張れるじゃないですか・・・」

これは妊活中に最も傷ついた

看護師さんにかけられた言葉の話題から

広がったお話だったけれど

 

まさしく今もその気持ちの中で

コロナウィルス感染症によって

その「今」を中断せざるを得ない状況に見舞われ

確かに妊娠することができた後

感染してしまったときのことを考えれば

今はちょっとお休みしておこうかと

思える人ならばいいけれど

年齢的にもタイムリミットと向き合い

うまくいかない状況を受け止めつつも

頑張っている人にとっては

1分も無駄にしたくない気持ちの中にあって

コロナウィルスがいつ収束するか分からない中

無期限の中断のような感情にも襲われ

コロナウィルスで中断のまま

終結を迎えてしまうのではという怖さも

きっと持っている方がおられるだろうと思ったりしている

 

わたしが生殖医療を今も継続していたら

きっと・・・この状況下でも

続けたいと思っただろうと考える

コロナウィルスにかかる可能性やリスク

そして治療ができない時間を

もし天秤にかけなければいけないとしたら

コロナウィルスではなく

間違いなく過ぎていく時間を無駄に使わないことを

選択するだろうと思う

 

もしコロナウィルスに感染しないまま

収束したとき

治療できなかった時間が取り戻せないことに

後悔するだろうと思う

 

この場合

自分が生殖医療のどの位置に居るのかも

重要なのだけど・・・

 

貯胚してあって凍結卵を返していく移植のみを

淡々と続けていれば

待つことも前向きに捉えられるかもしれないけれど

凍結卵がなく採卵を続けている状態だとしたら

待つ時間は単なる苦痛とマイナス感情しか

生まないだろうと思う

そこには年齢だけではなく

自分の置かれている社会的背景だったり

様々な要因が絡んでくるから

単に年齢が高い人だけに当てはまることではなく

若い人でもリミットと戦っている人はいるから

とても難しい問題を課せられているように感じた

 

ただ・・・もし通っているクリニックでの治療が

しばらくできなかったとしても

今そういう時だからこそ

少しだけ考えてみると良いかもしれないと思うことがある

「なぜ私は子どもが欲しいのか」

「なぜ子どもを授かるために

こんなに頑張っているのか・・・」

 

今思うと

わたしはこの問いから

目を背けて必死に治療と向き合ってきたかもしれないと思う

そして終結した今でも

いや終結した今だからこそ

どうしてあんなに子どもが欲しかったのか

その答えが見つけられないでいる

もしかしたら日本で子どもが居ないまま

生きていくことが大変だから

社会の中での生き辛さからかもしれないとも思うし

日本の「イエ」制度のもとで

そして結婚したら子どもは居て当たり前という

社会の風潮の中で

ともすれば子どもが居ないことは

普通ではないことだから・・・

そんな思いもなかったとは言えないかもしれないと思う

 

当たり前に授かれた人は

なぜ子どもが欲しいのかという質問を

授かる前に考えることも

授かった後に考えることもない

 

でも当たり前に授かれない人は

授かる前からそのことを考える必要性が出てくる

でも私はその問いを見なかったこと

聞かなかったことにしてきた

答えは簡単には導き出せない問題だから

 

でも答えが出せないことを出せないこととして

受け入れることが大切なんだと思う

そういうことを考えてみる時間でもあるのかもしれないと思う

 

個人的には今は移植は避けたほうが賢明だと考える

わたしなら採卵のみ

受精卵は全胚凍結で貯胚を続ける

新鮮胚移植は行わないという選択をするだろうと思う

生殖医療を続けつつ

コロナウイルスで出来ないという

マイナスな精神的負担を減らし

万が一妊娠した後に

コロナウィルスに感染するかもしれないという

精神的身体的負担を減らすためには

それがベストな選択ではないかと思っている