私は高校生の頃、運動がとても苦手でした。中学まではそれほどでもなかったのに、高校ではどの運動でも最下位争いをするばかりで、体育の時間が憂鬱になりました。

そんなある日、ネットでアナボリックステロイドという筋肉増強剤の存在を知りました。世界的な競技大会ではドーピングになりますが、体育の授業なら検査もないし、問題ないと思いました。副作用の存在も知っていましたが、少量なら大丈夫と思い、個人輸入で購入してみました。

それからはビタミンのサプリのように毎日気軽に飲んでいました。最初は効果が感じられませんでしたが、徐々に体力や筋力が増えて、最下位争いをすることがなくなりました。急に上位になってもおかしいので、中位を保てる程度に手を抜くことも出てきました。

一方で、多少の体の変化も感じられました。ニキビが増えたり、若干声が低くなったような気がしたり、少し体毛が濃くなったような気がしたり。いずれも思春期には普通にありえることなので、筋肉増強剤の副作用とは思っていませんでした。しかし、次第に気のせいではないとわかるくらいに声が低くなり、体毛が増加してきたことに気が付きました。私は急に怖くなって、筋肉増強剤の使用を中止しました。

すると体毛は徐々に薄くなってきましたが、声は少し戻っただけで、完全には元に戻りませんでした。それから人前で話すことが恥ずかしくなり、あまり人と話をしなくなりました。私が落ち込んでいることに気付いた友人が励ましてくれたお陰で、少し前向きになれました。それから話し方や声のトーンを工夫して女性らしく話すことができるようになり、私は自信を取り戻しました。

私はこの経験から、短期的に目的を達成するために安易に薬に頼ってはいけない、薬の副作用を甘く見てはいけないと学びました。現在はウォーキングや筋トレなど、健康的な方法で体力を維持するようにしています。

 

※この物語はフィクションです。アナボリックステロイドの副作用には個人差があり、正しく使用しないと健康を害する恐れがあります。使用は専門家の指示に従うことをおすすめします。