A子は女性として生まれたが、二次性徴の頃から女性であることに違和感を持ち、男になりたいと思うようになった。恋愛対象が男性で男性アイドルが好きという自分に矛盾を感じながらも、ボーイッシュな髪型や服装をして男性的な表現をするようになった。

 

高校卒業後、ジェンダークリニックで性別違和と診断され、ホルモン治療を開始することにした。男性ホルモンを投与すると、声が低くなったり体毛や髭が生えてくるなど、徐々に男性的な特徴が現れた。

 

だが、男性ホルモンの影響は肉体的なものだけではなかった。男性的な性欲が強くなったのだ。ほとんどしたことがなかった自慰行為を毎日のようにするようになってしまった。最初は男性ホルモンの影響により大きくなったクリトリスを弄るだけだったが、興味本位で膣も使うようになった。指だけでは物足りなくなり、ディルドを購入して挿れるようになると、次第に本物の男性器でイキたいと思うようになった。

 

A子は出会い系やSNSなどでFTMに興味のある男性を探し、肉体関係を持つようになった。一見男性のように見えても手術はしておらず、胸も下半身も女性であり、行為は男女そのものであった。

 

そうしているうちに、徐々に男になりたいという気持ちは薄れ、男性と結婚したいという思いが芽生えてきた。肉体関係を持った男性の中から理解してくれるパートナーを見つけ、普通の男女として結婚することになった。

 

結婚後、愛する人との子供が欲しいと感じた。男性ホルモン投与をやめると生理が再開し、妊娠することができた。無事に出産し、子育てに奔走する毎日。外見は女性的なものに戻り、男になりたかったことなどすっかりどこかへ消えてしまった。

 

結局、性別への違和感は思春期にありがちな一時的なものだったのだろう。焦って手術まで進まなくてよかった…彼女は過去を振り返る度に、そう思うのであった。

 

 

※この物語はフィクションです。ホルモンの効果には個人差があり、全員がこの主人公のような変化をするわけではありません。また、不可逆な変化を伴いますので投与は慎重に。何があっても自己責任となります。