お決まりの食って飲んだら他は特にやることもない親族集合の正月。
成人まではお年玉をあげなければならない謎な風習に萎える。
そんなリスクを冒してまでわざわざ帰って来たのも、以前から気になっていたコースを試したいってのがあるからで、お前が最近購入したランドクルーザーの自慢話を聞きに来たわけではない。
こそっとランニングに出かけるはずがゴミ運搬に付き合わされる。
新車のランドクルーザーにゴミを積まれた妹の旦那、積まれたゴミの配置に抗う様はあきらかにご不満。
郊外山の上のごみ処理場は、年の瀬に粗大ごみを運搬する市民の車両でごった返していた。
警備会社やシルバー人材センターの臨時職員が多数いたが、「え?行っていいの?どっち?」的なおざなりの誘導で、ただでさえ慣れない分別とはじめて行く各々の置き場への移動でかなりの時間を使った。
ここでちょっと困ったことが起きる。
俺が試したかったランニングコースは、家からこの処理場を経由して8km先で折り返しす合計30km。
(そもそもコース上にあるゴミ処理場にこの日に行くことになったのは全くの偶然)
ここは家から7km地点、忠実に予定コースをなぞれば単純に7kmの不足で23kmのランニングになってしまう。
この季節だし夕方になる前には帰りたい。なにより今日は俺が買い出し兼鍋当番をしなくてはならない日。
これから残価設定クレジット購入のランドクルーザー(知らんけど)で家まで帰っていたら俺の走力では時間までに帰り着けない可能性が高い。
ゴミ運搬を終え帰途につく渋滞の車列に意を決してスタートすることにした。
予定ペースは7分/km、山の上から下りのスタートで折り返しまでは平坦な道が続く。
バブル期に建設された主要道路だけに歩道幅も広く思った通り走りやすい、気持ちよく折り返しまで到着した。
あとは15km走り家に着く合計23kmということになるが、ゴール近くになるとあるあるの謎なヤル気でゴール近辺を徘徊、トータル30kmを達成できた。
多少余力はあるが、これ以上出力を上げるとフルマラソン完走は難しい印象。
残念ながら目標の4時間30分完走は夢で終わりそうだ。
シャワーを浴び一息入れ、今晩の鍋材料の買い出しに行こうとするとスーパーまで兄妹がウォーキングをしたいと言う。
もちろん俺は疲れているが、ふだん運動らしい運動もしない彼女がみせたヤル気を折るのは忍びない、ひょっとすると俺のランニングに触発されてのことか、そうなら悪い気もしない。快く受け入れた。
目的のスーパーまで往復5㎞、彼女には少しハードルが高いと思ったが意に介さない様子。
小さい頃は田んぼばかりだった地元はこじゃれた店も多くなり、有名どころの量販店が立ち並ぶ街になっていた。久しぶりに兄妹で歩くのはなんだかくすぐったい気持ちになる。
ところで、年末の営業時間は店により不定な場合が多い。
新鮮な野菜肉魚の安売りを目玉にしたスーパーだしその懸念は大いにあった。
その懸念は当たってしまう。
鍋の材料を買える他の店は歩いていける距離にはない。多少の材料は家にあるとしても親族を食わす量には足らない。
旦那にスーパーまでランドクルーザー(ちょっとうらやましい)で走ってもらうかと電話してもらうがつながらない、というか全員電話に出ない。10人近く居てそんなことある?なんかあったのか?不安な気持ちがよぎる。
しょうがない、散財することになるがスシローでいこう。案外サプライズ的に受け入れてもらえるはず。
待つこと1時間、やっとお持ち帰りできた。
時刻は午後8時前、すでに彼女も俺も疲弊していた。
そのうち彼女が不貞腐れあそばれる。
おまえが!って言いたいのをグッと堪え心の中で毒づく道中、日はとっぷり暮れめちゃくちゃ寒い。歩くたび股関節の痛みと腿の張りがおそう。
両手に下げたスシローセット(4人前3皿+サーモン)で腕がちぎれそうだ。
お互い無言のままただ歩いた。
家近くのコンビニの明かりが見える。
砂漠の中でオアシスを発見できた安堵とはこういうものなんだろうか。
玄関を開けると子供たちのにぎやかな声がする。
リビングでゲームをしていた。
だが大人がいない。
「お父さんたちは?」
「みんなおばあちゃんちへ行ったよ」
「飯は?」
「食べた」
ソファーに突っ伏した彼女がつぶやくように言う。
「さっき連絡あった。こっちで飲んでる、鍋やるなんて言ってたっけとのこと」
俺は怒る気力も無くその場にへたり込んだ。
2025年12月30日
ランニング:30km
ウォーク:6km
スシロー(120貫+サーモン20貫):2.5kg
