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グライダーをたたんでから数時間。
俺は宿泊先のホテルのベットに座り携帯電話を見つめている。
10数件かかってきていた中で留守電が残っているのは3件。
が…で、…わかったな。ピー
3件中3件ともこんな感じで何が言いたいのかサッパリだ。
帰りの車の中でも気になって、何回も掛け直そうと思ったが躊躇してた。
普段滅多に電話をかけてこない親父からの10数件にも及ぶ着信。
すぐにかけ直すのが普通だ。だが、何かドス黒い不安が電話を掛けることを拒む。
何か問題か…まさか。
以前飲んだのは一年くらい前か。まだくたばる年じゃない。
ガタイは相変わらずデカく、歯槽膿漏で口が臭いくらいで健康そのものだった。
他か?!母親とは疎遠だが、たまに話す妹からは不安な話題は上がらない。
そういえば、とぎれとぎれの留守電の声には悲壮感は感じられない。
だが、なにか例えようもないこの不安感はいったいなんだよ…。
しかもあれから一回も着信は無い。
ブブブッ!
ドキーッ!!
思いを巡らせている最中突然のバイブ。
ハ…。
…ピッ
おいっ!シグマァ?シグマか?
…ハッはい。
おまえコラッ!100回くらいかけてんだぞっ!親の電話に出ないなんてどういう了見だ!あっ?
(…超元気じゃねーか。クソがっ。俺は何にビビってたんだ?)
明日休みだろ。ここに迎えに来てくれ。ゴニョゴニョゴニョ…じゃあなガチャッ。
言いたいこと言うだけ言って切りやがった。
しかし、迎えに来てくれって…。
「ムーンフォレスト」ってあの…グライダーサイトの近くにあるラブホじゃねーか?
その17につづく。