会計の基本と儲け方はラーメン屋が教えてくれる
以前、地元福井県でチェーン店の展開をするラーメン屋を紹介しました。
私自身大のラーメン好きなので、「ラーメンに関連したビジネス書について書きたい」ということもあり書いたのですが、社内で実施している勉強会で、以前のブログで書いた『ラーメン屋の経営』についてふと思い出すきっかけがありました。
そこで改めて思ったのは、ラーメン屋にはビジネスにまつわるものがわかりやすく凝縮されているのではないか?ということです。
ラーメン店のなかでも全国で有名なお店であるのが、『ラーメン二郎』ではないでしょうか。
自分の好きなカスタムによって野菜などが麺を覆い隠す様は唯一無二の存在であり、熱狂的信者を生み出していると思います。
私の住んでいる福井県ではラーメン二郎はなく、以前関東に出向いた際に本場ラーメン二郎を食べてみました。
味は本当に独特でしたね。
好きな人は本当に好きな味なのでしょう、開店待ちの行列ができていました。
過去のラーメン二郎体験話もほどほどに本題に戻ります。
海外でも評価されているラーメン二郎なのですが、ここまで成功している背景にはしっかりと利益が取れているからです。
成功の背景にあるものを数字として見たくなりました。
この本は、公認会計士、税理士、司法書士、行政書士として活動している傍らで、自身も2020年にラーメン屋を開業したという異色の経歴を持つ石動 龍氏が書いた本です。
ラーメン店を経営する会計士から見たラーメン二郎というのは非常に興味深いものでした。
二郎系ラーメン店の利益のからくり
ラーメン二郎に影響されて出店した、いわゆる「二郎系」のメガ盛りラーメン店の場合、一般的にスープは大量の豚骨、背脂、焼豚用の豚肉を煮込んでつくられます。
濃い豚の旨味を出すため、長時間煮込んでスープをつくる店が多いそうです。
使う材料の量が旨味に直結するため、豚骨も背脂も大量に使用します。
店によって煮込み時間は異なるものの、8時間以上煮ることも珍しくないといいます。
かなりこだわっていますね。
そして二郎といえばなんといってもすごいのがボリュームです。
小サイズでも一般的なラーメンの特盛以上に相当し、大サイズは2杯分以上の量でトッピングも盛り盛り。
それでいて1杯1,000円程度と、学生さんが好むガッツリと食べられる量です。
このような体系で、どのように利益を生み出すのでしょうか。
筆者の分析によると、
製麺しているか、仕入れているかで、麺のコストは変わります。
仕入の場合、300グラムだと安くても100円前後になるでしょう。
また、チャーシューも高コストで、二郎系のチャーシューは厚切りが標準のため、1杯あたりに使用する肉は100グラム近くになることもあるようです。
というように、二郎系のラーメンは原価率が高くなりがちで、40%前後になることも多いそうです。
ではどのように利益を生み出すのか?
それは高回転率にあるといいます。
店内ルールによる高回転の維持が利益をつくる
二郎系を象徴する大きな特徴は、店内ルールに基づく高回転の維持です。
オーダーの際には「ヤサイマシニンニクアブラカラメ」など、まるで呪文を唱えるかのようにトッピングを伝えることが求められるため、情報を持たない新規のお客さんは混乱しがちなのです。
(実際に私も戸惑いました)
この本で知ったのですが、
行列が前提のため、一定のペースで次々ラーメンを作る店もあります。
その場合、座っている客が次のラーメンを出すまでに食べ終わることが前提のため、ゆっくり食べる人がいた場合は、席が空かずに次のラーメンを出せません。
これを「ロット乱し」と呼ぶそうで、一部の行列が途切れない店では、好ましくないこととされているそうです。
このように二郎系は新規客のハードルが高く、リピーターが来客の大半を占めているという特徴があります。
筆者によれば、これはたいへんよくできたビジネスモデルで、回転率を高く保てるために、原価率が高くても利益が残る仕組みになっているのだそうです。
「『数字』と聞くと苦手意識を持ってしまう人もいるかもしれませんが、少し勉強するだけで、仕事で十分役に立つ知識を得られます」と著者がいうように、難しく考えることなく、ラーメンを通じて会計やお金に興味を持てるようになれるはずです。
ラーメンのことであれ会計のことであれ、なんらかの形で関心を持つことができたのであれば、興味深く読める一冊です。