JASRACと著作権、これでいいのか
仕事柄、商標権や著作権、意匠権など権利関連の話はよく話題に上がります。
1990年代など法律はあるものの、まだまだ権利関係が日本でも緩い時代もありましたが、
今の時代、キャラクターものやデザインなどを盗用とみなされると大きな問題として取り上げられるようになっていると感じられます。
お隣の国、韓国では過去に日本の『マジンガーZ』とそっくりだと指摘された『テコンV』というロボット作品があります。
(余談にはなりますが、5年前には裁判でテコンVが勝訴しているみたいです。)
著作権など、なかなかセンシティブな問題でもありますが、
製作物に関してしっかりと法で守っていくことは必要だと思います。
別の分野では、日本の音楽も権利上をどうするべきかも以前話題にあがっていました。
数年前の話になりますが、JASRAC(日本音楽著作権協会)の方針です。
この本は、権利問題としてJASRACを取り上げて問題提起を行っています。
海外に比べ、日本は権利に厳しい?
JASRAC(日本音楽著作権協会)は、2018年1月より音楽教室から著作権使用料を徴収しています。
これまで音楽教室は、ピアノのレッスンなどで作曲者がいる有名な曲を弾く場合などでも特に著作権の徴収などはありませんでした。
しかし今回の件で、JASRACに著作権使用料を支払わなければならないことになりました。
音楽教室側は著作権料支払い事務量の増加や著作権料の支払いのため、生徒に授業料の値上げする対策なども取ったと思います。
値上げにより生徒が減り、営業停止となる教室が出てきてもおかしくありません。
値上げラッシュの今、親御さんも子どもにピアノや楽器を習わせたいと考えているものの検討する場合も多いかもしれません。
海外に比べて、日本は権利に対し厳格であると海外メディアが報じたこともあるそうです。
特にJASRACは日本の著作権法を厳格に解釈する裁判所のおかげで、これまで著作権法関連の裁判では負けたことがないといいます。
ところが今回、将来の音楽文化を担う音楽教室からの使用料徴収に踏み込んだことで予想以上の反発を買い、音楽教育を守る会から訴えられることになりました。
この件をきっかけに、日本の著作権法の現状を多くの人に知ってもらうために書かれたのが本書だといいます。
そもそも著作権とは?
著作権とは書いて字のごとく、「著作者に与えられる権利」を指します。
そして著作者とは、小説家、漫画家、作詞家、作曲家、脚本家、番組制作者、画家、彫刻家など「創造的な作品を制作した人」を指すとのことです。
言い方を変えると、著者者が自分の考えや感情を表現するために制作した作品を「著作物」と呼ぶわけです。
昔はプロの書き手が書いた作品を出版し、みんなで楽しむ時代でした。
そのため著作権は、作家や出版社など一部の専門家の問題として捉えられていました。
ところが現代では、インターネットの普及によって誰でも創作ができ、簡単に作品を公表できるようになっています。
そのぶん、誰もが著作物を創作する際に、他人の著作物を侵害するおそれが出てきたわけです。
また、自分の著作権を他人に侵害されるおそれも増してきているのです。
例えば、YouTubeのなかで自分のチャンネルの動画で紹介するレシピにも著作権が存在するとのことです。
そのため、著作権は今まで以上に注目され、取り扱うに注意を払う必要があります。
話を戻しますが、
JASRACがなぜ日本に存在するかというと、著作権者と音楽ユーザーの架け橋となる立ち位置ということです。
・音楽を使用する際は、著作権者に使用料を支払わなくてはならない。
・著作権者が音楽活動に専念できるよう著作権の管理・手続きを代行している。
これらを行っているのがJASRACです。
現在、音楽はコンサート、お店のBGM、カラオケ、映画、テレビ、ラジオ、CD、DVD、楽譜、音楽配信、動画共有サイト、ゲームアプリなどさまざまなシーンで利用されています。
こういった用途で音楽を利用する場合、基本的に、無断で使うと著作権法に違反することになってしまいます。
そして違反とみなされることを逃れるためにも、さまざまな手続きを行う必要があります。
そういった手間を省略し、ユーザーが著作権法に違反することなく簡単に利用するための手続きを行える窓口が『JASRAC』なのですが、今回この本でJASRACの著作権の取り扱いが自分の理解と大きく異なることがわかりました。
これには驚いたのですが、
2014年、プレジデント誌の一部コラムで、当時流行していた『アナと雪の女王』の劇中で歌われている「ありの~ままの~♪とつぶやくと違法か?」という記事があり、その中でJASRACの見解は
『違法』
だったのです。
理由は、
「映画のヒット前なら『ありのままの』というフレーズは著作物ではないが、今なら前後関係から主題歌を連想させるようだと、著作物になる」
とのことです。
この回答をあくまでJASRACの見方にすぎないとしたのち、
著者の「JASRACの見解は行き過ぎ。表現の自由との兼ね合いもあり、おそらく実務家の多くは、侵害にあたらないと考えるのではないか」とする意見を紹介しています。
この本から見えたJASRACの体制は、果たして本来の目的である『著作権者が音楽活動に専念できる環境つくり』に則したものなのでしょうか?疑問が残ります。
今回は音楽という著作権に焦点を当てた本となりましたが、
ぬいぐるみや印刷物など、著作権が発生する物は多岐にわたります。
インターネットビジネスが発達した今、
権利関係はしっかり認識することがいずれ自分の身を守ると理解して今後に活かしていきたいと思います。