1回目の入院生活―この時は2回目があるとは考えていなかった-が、そろそろ終了を迎えそうである。明日、内視鏡による回復状況の確認をし、必要に応じて静脈瘤の追加処置を行う予定である。その結果が良好であれば1週間後ぐらいに退院できる。

入院直後の内視鏡施術の時とは異なり、翌日の検査と処置は「幻覚」を見ることもなく無事に終了した。胃と食道の状況も良好であり、一部静脈瘤の追加処置も無事終了したらしい。いよいよ、私は退院できることになった!

そして入院生活の興味は、「退院の準備」と「退院後の生活」に移っていった。

退院の準備は金銭面のことが主であった。「入院費の概算見積」、「入院費支払原資と支払方法」、「生命保険の支給条件と支給額」等についての確認を妻とともに実施した。唯一不安だったのが、内視鏡による施術が生命保険支払条件の「手術」にあたるかという点であったが、主治医の先生のお話と病院事務への確認により、保険料が支払対象になることを確信した。

次に、退院後の生活であるが「通院の間隔と治療内容」、「自宅における食生活、投薬内容、可能な仕事と運動」等がテーマであった。

「通院の間隔と治療内容」については、内視鏡検査の結果を聞く際に主治医の先生からおおまかな内容を聞いていた。通院は1ヶ月に1回、その際に「血液検査」は毎回実施、その他「内視鏡検査」や「CT」については3か月に一度程度実施するとのことだった。

仕事、運動についても無理をしなければ今までどおり継続してもよいとのことで安堵した。

 退院後の食生活については、管理栄養士の方が懇切丁寧に説明してくれた。私の場合、他の人に比べて食事制限は少ない方であったが「カロリー制限」、「糖尿注意」、「アンモニアの発生注意」等のためのアドバイスをもらった。肝硬変で厄介なのはタンパク質の外部接収の必要性とタンパク質から生成されるアンモニアの排出のバランスだそうである。

 薬の服用についても薬剤師の方が丁寧に説明をしてくれた。但し、こちらの方は入院時から服用しているものを退院後にも服用するので、特に難しいことはなかった。

 とうとう、退院の日がやってきた。午前中に外来の診察室で主治医の先生からいろいろ説明を受けた。よくよく聞くと入院に至った時点においては結構危険だったらしいことが分かった。入院を余儀なくされた原因は「胃静脈瘤の破裂」だったが、出血が止まらない場合の失血死、逆に血液が止まり凝固することによる呼吸不全と、どちらに振れても危険は伴ったようである。

 先生の説明の後、持ち物の整理を行った。病院に返却するもの、家に持ち帰るもの、捨てるもの等の仕分をした。また、入院病棟の事務の方から入院費の支払についての説明を受けた。

 そして、いよいよ退院の時が来た。入院着から私服に着替えて妻とともにナースステーションに挨拶に行った。午後4時頃だったせいか日勤と夜勤の両方の看護師さん達が居た。

 「これから退院します。」

 「いろいろとお世話になり、ありがとうございます。」

ナースステーションのカウンター越しに多くの人が挨拶を返してくれた。その中で一番後ろの列にS木さんの顔を見つけた。気のせいかさびしげな瞳で私の方を見ていた。

 「また来ますので、よろしくお願いします。」と、ちょっとボケてみたが、どうやらすべったようであった。

 入院費の支払を済ませて20日間入院した病院を後にした私は、一抹の寂しさを感じていた。ただ、2度と入院はご免だった。

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 退院後、1か月半経過した。私は、同じ病院の内科の診察室に居た。

 「高石さん、あなたの血中酸素濃度は通常の生活ができる濃度ではありません。即時入院してください。」

 呼吸器担当の女医が冷たく私に宣告した。

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 20121230日 「入院日記」 完