入院生活において一番お世話になったのはやはり看護師さんである。
食事の配膳は看護師さんとは別の専門の方がしてくれるが、薬のデリバリーは看護師さんが行う。私は約5種類の薬を服用していたが多分少ない方ではないかと思う。薬の仕分は薬剤師が行い、仕分された薬を患者さんに正確に投与するのは看護師さんの仕事になる。
ひと口に薬というが種々の飲み方がある。包装された錠剤や散剤(粉)をただ飲むのであれば簡単だが、一定量の水に溶かして飲む散剤、呼吸の仕方と合わせて吸い込む吸引剤、吸いこんだ後にうがいが必要な吸引剤、●門に挿入する座薬等、それぞれ正確に対応しなくてはならない。患者自らが服用等できない場合は、看護師さんが手伝う必要がある。
残念ながら私の場合は、ほとんど自分でできたため、看護婦さんに抱き起こされて薬を飲ませてもらう夢はかなわなかったが・・・。
(注)病室のベッドは自動ベッドのためボタン一押しで起き上りが可能です。よって、看護婦さんに抱き起されることは滅多にないようです。
さて、ここでまたS木さんが登場する。入院後5日目の昼食後のことだった。S木さんが先輩看護婦さんと一緒に病室に来た。今回はS木さんの検診をチェックする目的で先輩看護婦のAさんが同道したようだった。S木さんはぎこちないが決して作り笑顔ではない顔で、検診をこなしていった。
「大分慣れたようですね。」
「ええ」とS木さんはほほ笑んだ。
「ところで高石さん、点滴の針の位置は入院以来替えていませんね?」
先輩看護婦Aさんが私に尋ねた。
「ええ、確か替えていないと思います。」
入院するまで知らなかったが、点滴の針を刺すのはかなり難しいらしい。特に、針は刺さるが輸液が流れないケースがあるのが厄介である。液が流れなければ意味がないので。一度刺した針は抜く必要がある。その抜いた後が痣のようになる。
私の場合、両腕に3か所痣のようなものができていた。確か入院時に看護婦さんが悪戦苦闘した跡である。
「そろそろ針の位置を変えましょう。ずっと同じ場所だと良くありません。」
「S木さん、お願いします。」
「はい。高石さん失礼します。」
S木さんが不安そうな表情で私を見た。
「緊張しなくて良いですよ。入院時も2人がかりでようやく出来たぐらいだから・・・。」
S木さんの表情は緊張したままだった。
S木さんは真剣な顔をして、針を刺す位置を探した。そして、彼女が決めた場所をAさんに示して目で了解を求めた。Aさんの了解を得たS木さんは、慎重に点滴の針を刺していった。
by MTK