高岡は窓の外を眺めながら、ある人物からの返事を待っていた。その人は彼の元勤務先の商社で営業企画、情報管理を担当していた。高岡は彼を池田の片腕としてスカウトしようとしていた。
今回のベンダー選定結果としてハードウェア、ネットワークの管理を全面的にSIベンダーに任せることは可能だが、T工業では時期尚早だと考えていた。
自社でネットワークやサーバの基礎的な技術・ノウハウはおさえておき、今後の製品開発にも活かすべきだと彼は思う。
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池田が作成した評価表の概要は以下のとおりである。金額については安い順に、その他については評価が高い順に並べている。もちろん定性的な評価について各メンバーの意見を総合して評価している。
導入金額:E社、D社、C社、B社、A社
*E社とA社の金額には約5,000万円の差がある。
運用金額:E社、D社、A社、C社、B社
*B社、C社はデータセンターへの運用委託を前提の金額
業務適合度+パッケージ適合度:E社、D社、C社、B社
*A社に関しては、運用の難易度の説明が不十分だった
ため評価不能
操作性:E社、D社、C社、B社、A社
拡張性:D社、C社、B社、A社、E社
プロジェクトマネージャの評価:D社、E社、C社、B社、A社
評価表に基づき評価会議が実施された。そこでも渡辺部長と池田達の意見が分かれた。
渡辺部長はC社を押していた。理由はC社が大手でありソフトウェアに加えネットワーク、ハードウェアを一元管理できるためである。
一方、池田達はD社を押していた。使い勝手の良さでE社も検討したが、E社はSEの人数も少なく、プロジェクトマネージャがフルにアサインできるかが不安なため対象からはずした。
森山からは契約条項の中にプロジェクトマネージャはシステム稼働までは変更しないという条項を入れるようにアドバイスされていたが、現実にはそれだけでは不安である。
D社はB社、C社とは異なりハードウェアやネットワーク機器は製造していないが、社員数は約2000人おり、ソフトウェアハウスとしては大手である。また、プロジェクトマネージャの経験も豊かでプレゼンテーション内容もT工業のニーズをしっかり理解した上でのものだった。
池田達は渡辺部長の主張も理解したが、やはりプロジェクトマネージャの能力を重視したかった。
しかしT工業にはネットワークやハードウェアを管理できる社員はいないのは事実だった。
渡辺と池田達の議論はどうどう巡りをしていた。30分ほどの議論の末、高岡が発言した。
「渡辺部長がおっしゃるようにソフト・ハード・ネットワークを一元管理してもらうことは有用だと思います。これからの時代、クラウドも発展してくるでしょう。しかし、今全面的にSIベンダーにシステムを委託するのは早すぎると考えます。まずは社内にネットワーク技術等を理解した情報管理者を置くべきだと考えます。」
「また池田さん達が言われるようにプロジェクトマネージャがシステム導入のキーになると私も考えます。」
「でも社長、現実には当社にはネットワークやハードウェアの管理ができる人材がいませんでしょう。」
渡辺が反論した。
「実は、不確定だったためお話をしませんでしたが、私が前にいた会社に優秀な情報管理者がおり、つい先ほど彼からT工業への入社の承諾をもらいました。」
結局、高岡の判断でシステム導入ベンダーはD社に決定した。
渡辺部長からすると「後出しジャンケン」の感は否めないが、高岡が決めたことなので彼はそれ以上の反論はしなかった。
この物語はフィクションであり登場する企業・人物は架空のものです。
第17章 完 高石 貢(著)
第18章 -要件定義- 7月20日頃 アップの予定です。