約一週間のインタビューを終え、いよいよ高岡のインタビューの日になった。
森山はさすがに緊張していた。いつもながら社長へのインタビューは緊張する。
「高岡さん、ここ一週間でマネジメントの方達のヒアリングを実施ました。その結果を踏まえて経営者としての高岡社長にインタビューをさせていただきます。」
「よろしくお願いします。」
「こちらこそよろしく。」
高岡もマネジメント達の意見を聞くのが楽しみであり、怖くもあった。
高岡は創業者でもなく、2代目経営者としてもまだまだひよっこだと認識していた。社長批判が出るのではないかと思う自分自身の小さを感じていた。
「高岡さんが考えてられる貴社の課題をお教えください。もちろん、システムに関わる関わらないは関係がありません。」
「分かりました。」
「私はT工業にとっての課題はマーケティングと利益管理だと考えています。我社は高品質な機械を適切な価格でエンドユーザに提供してきました。しかしそれは、あくまでも我社内の評価であり、品質・価格およびサービスについて本当にクライアントの要求に応えているかは疑問です。」
「エンドユーザのニーズに応えているか?その上で、適正な利益を獲得しているか?を明らかにして、不備なところを改革しT工業を成長させていくことが私の課題だと考えています。」
その後しばらく高岡は熱く語った。
「高岡さん、ありがとうございます。高岡さんが考えられている貴社の課題についてよくわかりました。」
「貴社の収益を見る限り、安定的に成長されているようですが、今が次のステップへの踊り場でありシステムのリニューアルが重要な契機であると私も考えます。」
高岡の熱気に感染したのか、普段冷静な森山も熱く語った。
小一時間経ったところで、インタビューは10分間の休憩に入った。
高岡は自らコーヒーを入れ直し、森山は喫煙室に向った。煙草を吸わない池田も森山に同行した。
「あんなに熱く語る社長を見たのは今日が初めてです。」
「事業計画策定の時は、まだ社長自身が外様の感覚であり遠慮があったように思います。」
社長に一番近い池田がそう語った。
二人は社長室に戻り、他のマネジメントが考えている課題を高岡に説明した。
「マネジメントインタビューは、トップダウンアプローチでありマネジメントが考えている会社の課題を明らかにし、マネジメントの間でコンセンサスを得ることを目的にしています。」
「これはシステム化計画策定の最も重要なところであり、システム化計画の『システム化の目的』、『システム化の目標』の策定に該当します。」
「後程、池田さんに整理していただきますが、マネジメントから出された課題は以下のようなものです。」
森山は、高岡に簡潔に説明をした。マネジメントによっては経営管理レベルの課題を持つ人から、オペレーションレベルの課題を持つ人まで幅が広かったが、彼は適切に分類し説明をした。
その一部を以下に提示する。
生産:生産効率の向上とコストダウン(特に生産計画修正回数の低減)、プレ作業・アフタ
作業の効率化、部品の共通化
開発:ユーザニーズの把握と新製品企画への反映、
汎用機制御ソフトの本格導入
営業:見積精度の向上(受注時利益の確保)、エンドユーザ新規開拓の強化
経理・財務:決算の早期化、キャッシュフローの改善(在庫の削減、資金回収
の早期化)特注機の原価管理制度の導入
総務:固定資産の現物管理の徹底
システムのリニューアルは一朝一夕にできるものではないが、のんびり取り組んでいられるほど経営環境は甘くない。
森山の報告を聞いて商社時代とは異なり、様々な課題を解決する必要があると高岡は思った。
「システム化計画フェーズでは、目的・目標を前提として『システム化の範囲(システムで解決できる課題の選定)』、『導入時期』、『導入予算』、『導入体制』を決める必要があります。」
「そのためには、次はボトムアップにより課題解決のための具体策、いわゆる「システム基本要件」を決め、会社としての予算(導入予算、運用予算)・スケジュール・体制を仮に計画する必要があります。」
「何故【仮】かというと開発業者との折衝をしないと仮の予算・スケジュール・体制で実現可能かどうかが分からないためです。」
高岡は、森山から事前に聞いていた「システム化計画策定」の手順について腑に落ちた気がする。
「更にインタビューの結果、『汎用機制御用ソフトウェアの本格販売』は半年後に迫っており、これに円滑に対応できるかは他社との競争優位を勝ち取るうえで必須であるとお聞きしています。」
「また、特注機の原価計算も手作業では限界にきており翌期には、安定的に導入できていないといけないと考えます。」
「これらの制約条件に加えて、予算、社内体制等の制約条件があります。」
森山は高岡の決意を確認したかった。
「分かりました。次は、ボトムアップですか?現場の意見を確認願います。」
「予算やスケジュール・社内体制については私と池田さん・高橋さんで検討します。」
「池田さん、髙橋部長を呼んでいただきますか?」
第7章 完 高石 貢(著)
第8章 -社長の悩み-4月3日頃 アップの予定です