新社長の決断-システム導入編 2章-総務部長の弁解(1)-

 鈴木部長は、システム導入当時を回想し、口の中に苦いものを感じながら説明を始めた。

「8年程前、私は前社長からシステムリニューアルの検討を命じられました。その時の当社のシステムは市販のパッケージソフトでした。」

「我社は機械装置の製造会社ですが、当時は創業時から続けていた汎用機の製造に加え、特注機の製造を開始した時期でした。」

高岡はそのあたりの経緯は把握していたので、無言でうなずいた。

「そこで、今まで使用していたパッケージソフトでは機能不足で、特注機に対応できないと前社長は判断されました。また会社も急速に成長してきておりシステムの処理効率も上げる必要がありました。」

「そして社長は何故か私にシステムのリニューアルを検討するよう指示しました。」

「当時総務部課長だった私はシステムに関しても製造に関しても詳しくありませんでした。」

「前社長はただ私が調整型の人間であることと、私の部下に田上というソフトウェアハウスからの転職者がいたため、指名されたのだと思います。」

「今もその人は居るのですか?

高岡の質問に鈴木は大きくかぶりを振った。

「田上は、現システム導入後半年ほどで退職しました。」

システム導入の経緯と彼の退職には深い関係がありそうだと高岡は確信した。

鈴木は、少しの沈黙の後に説明を続けた。

「前社長からは『特注機に対応できること、処理効率を上げて業務に支障が出ないようにすること、各部門のニーズを確認すること』の3点の指示を受けただけでした。」



「私は田上と一緒に各部署のヒアリングをしました。しかし各部署の要望はバラバラで部署によっては『勝手にやってよ』というところもありました。それでも何とか表面上ニーズをまとめました。」

鈴木は何かを考えているのか、またしばらく口を閉じていた。

「それで開発業者の選定はどうされたのですか?」

終始無言だった池田社長室長が初めて発言し、鈴木に説明を続けるよう促した。しかし池田はこの発言以降はまた無言に戻った。

「ええ、会計システムだけは現状のパッケージのバージョンアップを前提とし、数社から開発の提案・見積もりを受けました。」

「そして最終的には安田専務の知り合いの開発業者に委託することを決定しました。」

「その会社がベストだったのですか?」

「いえ、正直言ってベストかどうかは分かりませんでした。何というか感じが良いというか、調子が良いというか・・・。ただ、ニーズはすべて実現するという前提で見積額は一番安かったのですが・・・。」

「鈴木さん、何か歯切れが悪いですね。」

「すみません社長、実は要件定義終了後、当初概算見積額の2500万円にさらに上乗せが必要だと開発業者の営業が言ってきました。」

「そうですか。いくらの上乗せですか?」

「・・・3000万円です。」

鈴木は俯いて小さな声で答えた。

                      2章完  高石貢(著)

3 -総務部長の弁解(2)- 218日頃 アップの予定です。