監督の撮影スタートの声がかかる。たちまち周りは映画の

情景にはまってゆく。

由紀との絡みは意外な方向へと向かってゆく・・・・。

そんな事になるなんて思ってもいなかった。台本に無い行

動。それは由紀の今のありたっけの感情の表れだったのか

もしれない。

「 和也、遥のところに戻ったのね。・・・・良かったね。

 これで私の役目は終わりかな。」

涙を隠して振り返る。

「 ・・・・・ごめん。俺の事心配してくれててたのに。」

「 謝らないで!・・・・私、私負けたなんて思ってない

 から。和也がいつまでも幸せになれるように考えたらさ、

 これがいいのかな?なんて思ってたんだ。だから、だか

 らさ笑って別れましょ。私だって新しい恋見つけるんだ

 から。」

「 ・・・・・分かった。ありがとう。」

「 ただ・・・・・ただ最後に私の気持ち・・・・・。」

背を向けてた体を勢いよく振り返り、和也の顔に近づく。

そして涙を流しながらの長いキスを別れの言葉に代えてい

た。和也もその気持ちを汲み取ってギュッと抱き寄せて、

長いキスを交わしていた。

それは台本に無い演出。無意識に抱き続ける様子が、周り

の感情を引き込んでいた。




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