神童の放つ振り下ろされた剣圧。それはほんの一時だった。あたかも時間は過ぎたのかと思わせる位のほんの一時。ベヒモットさえも何が起こったのか気づかない位の時だった。
( 何をしたんです?私はなんともないですよ。ただの素振りですか?)
魔神はその場を立ち動き出す。時が動き出すかのように静かに音を発ててその場を後にする。
( おやおや?相方さんは、諦めたのですかね?私が倒せないと気づいて。)
「 お前まだ気づかないのか?痛みも感じないか?そうだろうなお前、ちゃんと体見てみろ。不死身の体もそこまでになったら再生できないだろうから。」
( なに言ってんでしょうかね。私の体がどうしたって?おかしな事を・・・・。うん?な!なんですか!この、こんな事が・・・・・。)
ベヒモットの顔を残して体は消えていた。今までなら粉々となった体も、今度ばかりは塵さえも残っていなかった。体の破片も残さない程の強烈な剣であった。
「 お前も、もうどうする事もできないだろう?さあどうする?俺に攻撃できるのか?」
( ・・・・初めてですよ。ここまで私が虚仮にされたのは。私に止めをささないのですか?)
「 もう、決着着いたろ。お前は文字通り手も足もでないっていう事だよ。」
神童は既に決着が着いたと高を括っていた。だがそこは悪魔である。顔だけでも動き続けていた。だが流石にこれ以上の反撃はできないと判断していた。
( 今日のところは貴重な体験をしましたよ。まさかの事ですよ。数千年生きてきてここまでの事は。・・・・今日のところはこれで失礼しますよ。また会いましょう。その時は油断しませんよ。初めから全力で貴方方を相手して差し上げましょう。ではまたの機会を・・・・。)
ベヒモットは一瞬にして消えていた。神童もこれ以上は追うまいと決め、魔神の後を追った。しばらくしてその場に現れる悪魔の影があった。誰も気づかない穏やかな気をまとった影が。
《 ほう、まさかここまでやられるとはね・・・・。ふ、面白いモノを見つけましたよ!これからも楽しめそうですね。今までのモノとは桁違いですよ。ホントに楽しみだ・・・・・。》
静かに影は消えていった。何もその後を残さずに。
神童は魔神に追いついた。気づいている魔神だが、足を止める事はなかった。横に並ぶ神童であった。
「 神童、ちゃんと止めを刺しましたか?」
「 あんな格好だ何もできやしないから、刺してね~よ。」
「 貴方は悪魔を逃したんですか?・・・・は~、私が最後まで居ないと止めもまともに刺せないのですか。悪魔の本質は貴方もよく知ってるでしょう。」
「 そう言えば、また来るって言ってたなアイツ。いいんじゃね?今度来た時で。」
「 ・・・・・貴方には困ったものですね。次に来た時、貴方一人でどうにかできると思ってるんですか?ホントにそう思ってるんですか!」
「 やべ、本気で怒り出した。すまん。・・・・でも次も俺一人で何とかするから。」
お気楽な神童、生真面目な魔神。相対する2人ではあったが、何処か憎めない神童の事が魔神は許せなかった。まだ2人の力は未知数である。本性はお互い隠したままで、任務は続いてゆく。